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2021年09月30日19:34

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読書日記Nо.1385(コロナ禍の今年の新書大賞は、「人新生の『資本論』」という異色の本だった)

■斎藤幸平「人新生の『資本論』」2021年6月第13刷、集英社新書

栄えある2021年新書大賞第1位が本書でした。

初版は、2020年9月でしたが、それから売れ続け、私が今年の8月に購入した際、
帯には、「2021年新書大賞第1位」の文言と、30万部突破の表示も。

「資本論」といえばマルクスですし、「共産党宣言」を書いたマルクスを信望する
社会主義国家は、ソ連の崩壊で、資本主義国家に敗れたはずでした。

さらに、こういう人文系の新書が、30万部売れるというのは、コロナ禍を契機に
世の中の潮目が変わってきているのかなと思われます。

ビジネスの世界にいると、ここ4〜5年で、急に中心に躍り出てきた概念がありまして、
それが、SDG’s(エスディージーズと発音)と、DX(デジタルトランスフォー
メーションと発音)です。

どちらも、毎日の日経新聞を読んでいて、見ない日はなく、これをしないと、企業の
未来はないというプレッシャーを感じさせます。

でも、本書のキャッチは、「SDG’sは、大衆のアヘンである」という、鋭いもので
エッって、思った方たちが、多く本書を手に取ったのではと思いました。

“【「新書大賞2021」受賞作!】”

“人類の経済活動が地球を破壊する「人新世」=環境危機の時代。
気候変動を放置すれば、この社会は野蛮状態に陥るだろう。
それを阻止するには資本主義の際限なき利潤追求を止めなければならないが、
資本主義を捨てた文明に繁栄などありうるのか。”

“いや、危機の解決策はある。
ヒントは、著者が発掘した晩期マルクスの思想の中に眠っていた。
世界的に注目を浴びる俊英が、豊かな未来社会への道筋を具体的に描きだす!”

著名人たちも、以下のように絶賛しているとのことです。

■佐藤優氏(作家)
斎藤は、ピケティを超えた。これぞ、真の「21世紀の資本論」である。
■ヤマザキマリ氏(漫画家・文筆家)
経済力が振るう無慈悲な暴力に泣き寝入りをせず、未来を逞しく生きる知恵と力を
養いたいのであれば、本書は間違いなく力強い支えとなる。
■白井聡氏(政治学者)
理論と実践の、この見事な結合に刮目せよ。
■坂本龍一氏(音楽家)
気候危機をとめ、生活を豊かにし、余暇を増やし、格差もなくなる、そんな社会が
可能だとしたら?
■水野和夫氏(経済学者)
資本主義を終わらせれば、豊かな社会がやってくる。だが、資本主義を止めなければ、
歴史が終わる。常識を破る、衝撃の名著だ。

目次も全部紹介しちゃいますね。

■はじめに――SDGsは「大衆のアヘン」である!
■第1章:気候変動と帝国的生活様式
気候変動が文明を危機に/フロンティアの消滅―市場と環境の二重の限界にぶつかる
資本主義
■第2章:気候ケインズ主義の限界
二酸化炭素排出と経済成長は切り離せない
■第3章:資本主義システムでの脱成長を撃つ
なぜ資本主義では脱成長は不可能なのか
■第4章:「人新世」のマルクス
地球を〈コモン〉として管理する/〈コモン〉を再建するためのコミュニズム
/新解釈! 進歩史観を捨てた晩年のマルクス
■第5章:加速主義という現実逃避
生産力至上主義が生んだ幻想/資本の「包摂」によって無力になる私たち
■第6章:欠乏の資本主義、潤沢なコミュニズム
貧しさの原因は資本主義
■第7章:脱成長コミュニズムが世界を救う
コロナ禍も「人新世」の産物/脱成長コミュニズムとは何か
■第8章 気候正義という「梃子」
グローバル・サウスから世界へ
おわりに――歴史を終わらせないために

私は、約半世紀前の学生時代に、マルクスの「資本論」は読書会を開いて、
読んだことがあります。ちょっと進歩的な学生は、そんなことをする風潮がありました。

でも、令和の世に、「資本論」を敷衍した本が、これほど読まれるとは、驚きです。

それだけ、未来のある若者たちに、危機感が深まっている証かと感じた次第ですが、
即効性がある処方箋かと言われれば、そうだと断言できないのが、正直なところです。
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