mixiユーザー(id:5540901)

2021年09月20日05:52

289 view

読書日記Nо.1383(精神科医と歌人が語る、死を語ることは、生を語ること))

■春日武彦・穂村弘、ニコ・ニコルソン(イラスト・漫画)「ネコは言っている、ここで死ぬ定めではないと」2021年7月イースト・プレス刊

書店の店頭で、春日武彦、穂村弘の名前に目が留まって、手に取ったのが本書ですが、
タイトルが、なんだ、これは?、というものでした。

精神科医・作家の春日武彦さんのエッセイは、愛読していますし、歌人の穂村弘さん
についても、本業の短歌だでなく、軽めの対談集などもよく読んでいます。

このお二人の対談集は、2014年に読んだ「秘密と友情」で、なんとなく妖しい
二人が、友情、怒り、救い、秘密、努力、孤独、仕事、家族、不安、記憶、言葉、
お金、読書をテーマに、天駆ける天馬のごとく言葉の宝石のやりとりがあって、
痺れた経験がありますので↓、迷わず本書も手に取りました。

https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1934249316&owner_id=5540901

そんなお二人の対談のテーマですが、今回は、なんと、毎回、死についてでした。

遅ればせながら、本書の惹句を紹介します。

“俺たちはどう死ぬのか? ”

“数えきれぬ患者を診察した元・産婦人科医の精神科医と、数えきれぬ短歌を日々
読み続ける歌人。万巻の書物を読んだ二人が、大きなモニターとソファのある
精神科医の自宅で、猫を相手に語り尽くす、今考えられるもっとも考えなければ
ならない死と生についてのすべてのこと。”

目次の抜粋と小見出しの抜粋も紹介します。

序章 俺たちはどう死ぬのか?
 ・「理想的な死」に導いてくれるのは誰?
 ・「どう生きるか」と「どう死ぬか」は非対称
第1章 俺たちは死をどのように経験するのか?
 ・「生」と「死」の専門家
 ・魂を掴まえ損ねた経験
第2章 俺たちは「死に方」に何を見るか果ては
 ・「まあいっか」と思える死に方
 ・「理想の死に方」は選べない
第5章 俺たちは死にどう備えるのか?
 ・世界の偉人たちが残した最後の名セリフ
 ・死を悟ることで「整う」可能性
第8章 俺たちは死を前に「わだかまり」から逃げられるのか?
 ・実は鬱屈の人、星新一
 ・自己嫌悪と折り合いをつける作家、藤枝静雄に憧れる
第10章 俺たちにとって死は「救い」になるのか?
 ・「負の呪縛」は主観的
 ・生まれ変わったら何になりたい?
第11章 俺たちは「他人の死」に何を見るのか?
 ・際どい追悼文は敬愛の裏返し
 ・追悼文は月並みがいい?
第12章 俺たちは「動物の死」に何を見るのか?
 ・動物は「死」を恐怖するか?
 ・「活きのいいロブスター」と「生きているロブスター」
第13章 俺たちは一生の大半を過ごすことになる「仕事」に何を見るか?
 ・「俺、精神科医の方が向いているな」と思った瞬間
 ・会社を辞めて感動「いつまで寝ていてもいい!」
終章 俺たちは、死にどんな「幸福」の形を見るか?
 ・「不死」は幸せか?
 ・「現状に満足」じゃダメ?

最後に「本文中で紹介した書籍」、「本文中で紹介した短歌」の索引もあって、
本書は、死そのものを語るというより、死をテーマにした、文芸談義という趣向でした。

それで、不思議な本書のタイトルの謎解きですが、街角のキリスト教系の看板に、
「神は言っている、ここで死ぬ定めでないと」の、冒頭文字「ネ申」の右部分の
一部がかすれて「ネコ」となっていたというものでした。

本書の対談は、春日先生の自宅マンションで行われて、その間ずっと、飼い猫が
対談を聞いていて、そんなつぶやきを漏らしたのでというオチです。

毎回の対談に挿入される、ニコ・ニコルソンさんの漫画も味わい深いものでした。
25 10

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2021年09月>
   1234
567891011
12131415161718
19202122232425
2627282930