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2021年09月15日18:47

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読書日記Nо.1382(同世代だから共感できる、ショローの女)

■伊藤比呂美「ショローの女」2021年6月中央公論新社刊

書店の店頭で、11年ぶりに伊藤比呂美さんの著書が目にとまり、手に取った。

11年前に読んだのは、「読み解き『般若心経』」で、“いつか死ぬ。それまで生きる”、
というタイトルで読書日記を書いた。↓

https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1580477336&owner_id=5540901

パワフルで、男前の女性の著作は、好きで手に取ることも多いが、最近はそんな
著者も多くて、伊藤比呂美さんの本が疎遠になっていた。

久しぶりに読んだ感想は、いやぁ、面白い。
伊藤さんは、1955年生まれだから、私より一歳年下だが、もうこの年になると
1〜2歳は関係なく、ひょっとしたら、男女差も関係ないかもしれない。

お互い、よく生きてきましたな、そうそう、老いは、そんな風に忍び寄るんですねと、
そんな風に共感してしまう。

本書の惹句を紹介しますね。

“米国人の夫の看取り、20余年住んだカリフォルニアから熊本に拠点を移した
あたしの新たな生活が始まった。”

週1回上京し大学で教える日々は多忙を極め、愛用するのはコンビニとサイゼリヤ。
自宅には愛犬と植物の鉢植え多数。そこへ猫二匹までもが加わって……。
襲い来るのは台風にコロナ。老いゆく体は悲鳴をあげる。“

“熊本―東京を行き来するあたしを待つのは、
愛犬(三歳)、植物(八十鉢)、学生たち(数百人)。”

“ハマる事象、加齢の実状、一人の寂しさ、そして、自由。
60代もいよいよ半ばの体感を、小気味よく直截に書き記す、これぞ女たちのための
〈言葉の道しるべ〉。老いの体感をリアルに刻む最新エッセイ。”

“熱く共感を集めて大好評の『閉経記』『たそがれてゆく子さん』に続く
〈伊藤比呂美の今〉”

本書は、「婦人公論」に2018年8月〜2021年5月まで連載された、エッセイを
編んだもので、伊藤比呂美さんのファン垂涎の本とのこと。

芥川賞作家の金原ひとみさんが、先月、朝日新聞に見事な書評を掲載されていたので、
抜粋で紹介しちゃいます。(金原さんは、30代なので、著者の娘さんの世代です。)

“「初老」を調べると、かつては四十歳の異称、女性では月経停止期、男性では作業
能力が衰え始めた時から老化現象が顕著になるまでの期間。とある。現代では六十
前後を指すようだが、閉経期を指す言葉、とはなんと憂鬱(ゆううつ)な言葉だろう。”

“しかしエッセイ集である本書は「ショローの女」。年配でも高齢でも、初老でもなく、ショローである。確かに、著者はただの初老ではない。植物と動物に目がなく、育て方
もダイナミック、好き嫌いが激しく同じものばかり食べ続け、ピアノを習いたいが
どうしても練習はしたくないという子供のような好奇心と我儘(わがまま)さを持ち
合わせ、人と一緒は嫌と思っていたが年の功でもういいやとなって皆と踊るズンバや
LINEの「おしゅし」スタンプに夢中になり、一人が寂しいと吐露し愛犬との別れ
を想像して泣き、常に家族や友人や生徒への想(おも)いが漲(みなぎ)っている。”

“しかし、生活も趣味も感情も驚くほどわちゃわちゃと忙しいのだが暑苦しさは皆無、
むしろドライで、どこまでも飄々(ひょうひょう)としている。”
 
“本書には確かにリアルな老いが描かれている。体力の衰え、姿勢の変化、歩くのが遅くなり、人の目を気にしなくなり、ちょっと昔話をするだけで四十年前に遡(さかのぼ)る。しかし同時に、書き続けること表現し続けることで、孤立しながらにして巨大な
ピラミッドのような安心感を得、また与える境地に到達したその生き様こそが詰まって
いるように感じられる。無骨なのにスマート、愛の中で孤独、柔軟な一本槍(やり)
、奇妙なバランスで成り立った奇跡のショローがここにある。”

さすが、芥川賞作家、見事に言語化されています(^^♪

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