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2021年09月04日07:00

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読書日記Nо.1380(妻が語る、ツボちゃんの話)

■佐久間文子「ツボちゃんの話 夫・坪内祐三」2021年5月新潮社刊

昨日、菅総理が、自民党の総裁選不出馬を表明し、実質的に辞意を表明しました。

ちょうど一年前の2020年8月29日に、2020年1月に急逝した、坪内祐三さんの
本の読書日記を書いていましたが↓、なんと、冒頭、「昨日、安倍首相が辞意を
表明した」とあって、偶然ですが、偶々、現職首相の辞意表明の翌日に、坪内さん
関連の本を読んでいるわけです。

2020.8.29日記 坪内祐三「みんなみんな逝ってしまった けれど文学は死なない」
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1976759551&owner_id=5540901

なんだか、不思議な偶然に、ちょっと驚きました。

さてさて、本書でしたですね。惹句を紹介します。

“類まれな同時代史の書き手が急逝して一年半――。妻が語る二十五年間の記憶。”

“「ぼくが死んだらさびしいよ?」が口癖だったあの頃……。けんかばかりしていた
けれど憎めない。博覧強記の東京人。生涯一「雑誌小僧」。毎日が締め切りでも、
いつもふらふら飲み歩く生粋の遊歩者(フラヌール)。”

“「怒りっぽくて優しく、強情で気弱で、面倒だけど面白い」夫との多事多難な
日々が鮮やかに蘇る。そう、みんなツボちゃんを忘れない。”

なんだか、夫というより、戦友のことを偲んで書いているようですが、そう、
著者と、坪内祐三さんは、戦友でもあったのです。

それは、佐久間文子さんは、朝日新聞の文化部記者だったとき、担当した坪内祐三
さんと、お互いが配偶者と恋人がいたのに別れて結婚した関係だということだからです。

目次も紹介します。
・第一章 亡くなった日のこと
・第二章 出会ったころ
・第三章 三軒茶屋で
・第四章 雜誌小僧
・第五章 人間おたく
・第六章 死にかけた日
・第七章 偶然を引き寄せる
・第八章 雑誌小僧 その二
・第九章 怒るひと
・第十章 友だち
・第十一章 「ロマンティックなエゴイスト」のこと
・第十二章 神さまのこと
・あとがき 「ぼくが死んだらさびしいよ?」

著者は、あとがきで言います。

“「大恋愛だったんですって?」と聞かれたことがある。おたがい配偶者や恋人が
いたのに相手を別れて一緒になったから、そう思うひとがいておかしくはないけれど、
甘い雰囲気でいられた時期はとても短かった。”

“次から次へと何かが起こり、恋人というより、家族であり同志みたいな関係になって
しまった。彼のどこがよかったのか、当時いろんな人から聞かれた。”

“はかない感じがする人なんです。一度そういったことがある。このひとは、いつか
いなくなってしまうだろう。そんな予感が出会ったときからあった。”

“激しく言い合っても、いっときの激情がおさまると、なにごともなかったように、
もとの生活に戻ることができた。この人とこのままずっと暮らしていけるかもしれ
ないと思ったこともあった。だけどやっぱり、彼はふいに私の前からいなくなった。”

25年間一緒に暮らしたので、文字通り「二人称の死」で、喪失感は大変なもの
だったようですが、知り合いの新潮社の編集者が、坪内さんのことを書いてみませんか、
とメールで連絡して、本書を書くことができたとのことです。

本書を読み終えて、みんなに愛された、ツボちゃんという夫をもって、幸せだったと
いう余韻に包まれ、しみじみとしました。

本日は、これから、名古屋郊外に帰郷し、7/20に94歳でなくなった実母の49日の
法要に出席します。
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