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2021年03月09日08:11

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読書日記Nо.1339(プレディみかこが、地べたから見た、英国社会)

■プレディみかこ「ブロークン・ブリテンに聞け」2020年10月講談社刊

プレディみかこというライターが、日本でよく読まれるようになったのは、
まだここ数年のことで、20年以上英国在住で、“地べたからみた英国社会”に
ついて書くライターは、日本にはいなかったので、彗星のように現れた印象が強い。

日本に広く知れ渡ったのは、2019年刊行された「ぼくはイエローでホワイトで、
ちょっとブルー」あたりからか。

昨年読んで日記を書いた「ワイルドサイドをほっつき歩け」も面白かった。↓

https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1976395470&owner_id=5540901

略歴を改めて示すと下記。

ライター・コラムニスト。1965年福岡市生まれ。福岡県立修猷館高校卒。音楽好き
が高じてアルバイトと渡英を繰り返し、1996年から英国ブライトン在住。ロンドン
の日系企業で数年間勤務したのち英国で保育士資格を取得、「最底辺保育所」で働き
ながらライター活動を開始。2017年、『子どもたちの階級闘争ーーブロークン・
ブリテンの無料託児所から』(みすず書房)で第16回新潮ドキュメント賞受賞。

イギリスについては、政治、思想、音楽、文学などについては、日本人もある程度
は知っているが、社会がどうなっているのかについては、今まで、一般人が読む
ものとしては、ほとんどなかったといっていい。

今朝のニュースで、ヘンリー王子の妻・メーガン妃が、イギリス王室でイジメを
受けていたと暴露していたが、そもそも、イギリス王室は、日本の皇室とどう違う
のか。

数年前から、世界を騒がせたブレグジッドは、結局、どうなったのか。はたまた、
コロナ禍の死者が相変わらず多いが、どうしてなのか、などなど、断片的な興味も
尽きない。

遅ればせながら、本書の惹句を紹介。

“EU離脱、広がる格差と分断、そしてコロナ禍……。政治、経済、思想、アート、
映画、テレビ番組、王室、英語、パブ…など英国社会のさまざまな断片から、激動と
混沌の現在を描く、時事エッセイ集。”

本書に所収された文章は、講談社の純文学誌「群像」の2018年3月〜2020年9月
の期間連載された、時事コラムで、パンクな文章で、イギリス社会のありのままを
書いているが、読ませるのは、やはり文章力があるからか。

目次を全部引用すると、下記のようになる。

君は「生理貧困、ミー・トゥー!」と言えるか
#芸術がウザくなるとき
ブレグジットとUKコメディ
英国英語はしちめんどくさい
エモジがエモくなさすぎて
シェイクスピア・イン・エモジ
パブvs.フードホール抗争に見る地べたの社会学
緊縮の時代のフェミニズム
モナキー・イン・ザ・UK―ーMonarchy in the UK
『Brexit: The Uncivil War』 に見るエビデンスと言葉の仁義なき戦い
Who Dunnit ? マルクスの墓を壊したやつは誰だ
『負債論』と反緊縮――グレーバーが「経済サドマドキズム」と呼んだもの
グレーバーの考察――労働者階級の「思いやり」が緊縮マインドを育てる
「UKミュージック」なるものの終焉
英国ワーキングクラス映画の巨匠が復活――ケン・ローチとシェーン・メドウズ
多様性はリアルでトリッキーでちょっとハードーーLGBT教育のもう一つの側面
「数字音痴」の弊害――英メディアが常に予想を外す理由
『さらば青春の光』とEU離脱
ブレグジットと英国王室の危険な関係(ちょっとしょぼいけど)
後戻りができないほどの後退
闇落ちしなかったジョーカーーー『ポバティー・サファリ』のロキについて
「言(ことば)」とレゲインーー『プリズン・サークル』が照らす闇
閉じて開いて――ブレグジット・ブリテンの次の10年
ザ・コロナパニックーーわたしを英国嫌いにさせないでくれ
コロナの沙汰も金しだい
ロックダウンのポリティクスーー右やら左やら階級やら
そしてまた振り出しへ
あなたがニュー・ディールですって? 隔世の感にファックも出ない

著者はあとがきに言う。

“そうなのである。問題は、何一つそう簡単にキャンセルできないことなのだ。
現実も、社会も、歴史の、自分自身も、他者も、人生も、世の中というものは
コンピュータ上で何かをキャンセルするわけにはいかないもので出来ているのだ。”

“つまり、わたしたちの生はキャンセルできない。したくともできない。だから、
ぶつぶつつほやきながらでも続けていくしかない。”

“Keep thinking. Keep writhing.Keep talking to each other.
この時事エッセイを書いていた数年の間、わたしはずっとそんなことを考えて
いたように思う。”

“そうした日々の思索の断片が、ひとつも削除されることなく一冊の本になった
ことは不思議な気がするし、書くということは、残すということかもしれない
なんてことを昨今は考えるようになった。”

“時事ネタを書くことは、どんどん日付が古くなるスナップ写真を残すことに
似ていると思う。”

“後になってそれを見返す時代がどんなものになっているかは、いくらスナップ
写真を見てもわからない。散らばっているスナップ写真はただ、明らかにキャンセル
不可能な時代の記録なのだ。”
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