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2021年03月03日08:23

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読書日記Nо.1338(新潮社の伝説の編集人・風雲録)

■森功「鬼才 伝説の編集人齋藤十一」2021年1月幻冬舎刊

私は良質な評伝が大好きだが、最近は、そんな新刊も少なくなってしまった。
そんななか、本書を書店店頭で見かけたので、思わず手に取った。

著者の森功さんは、昨年、「ならずもの 井上雅博伝−ヤフーを作った男」を
読んで、その力量に舌を巻いたから。面白かった。↓

https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1976056658&owner_id=5540901

森功さんが書く評伝なら間違いないし、今回は、出版界の話なので、よけいに
読みたくなったのかもしれない。

評伝作家は、最近、お歳のせいかあまり書かれなくなったが、佐野眞一さんの
評伝をひいきにしていた。

ソフトバンク・孫正義さんの評伝「あんぽん 孫正義伝」は、佐野さんの傑作の
ひとつではないか。↓

https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1822655220&owner_id=5540901

さてさて、遅ればせながら、本書の惹句を紹介。

“「人間は生まれながらにして死刑囚だろ」”

“『週刊新潮』『芸術新潮』『フォーカス』『新潮45』を創刊。雑誌ジャーナリズム
の礎を作り、太宰治、新田次郎、山崎豊子、松本清張ら大作家に畏怖された新潮社の
天皇。稀代の天才編集者は、なぜ自らを「俗物」と称したのか。”

目次も紹介。

第一章 天才編集者の誕生
第二章 新潮社の終戦
第三章 快進撃
第四章 週刊誌ブームの萌芽
第五章 週刊誌ジャーナリズムの隆盛
第六章 作家と交わらない大編集者
第七章 タイトル作法
第八章 天皇の引き際
第九章 天才の素顔
終章 天皇の死

評伝は、取材力がイノチのところがあるが、著者の森功さんは、「週刊新潮」の
編集部に在籍したこともあり、ツテを頼って、新潮社内の要人にも直接会って
取材していて、より説得力が増している。

新潮社も、今は無き写真週刊誌「フォーカス」を刊行した頃が絶頂で、それは
新潮社のみならず、日本の出版界の絶頂期であったのかもしれない。

「週刊新潮」は、絶頂期の部数にははるかに届かないが、今でも「週刊新潮」は
数十万部の発行部数があり、新潮文庫も健在だが、出版業界が構造不況業種に
なってしまっていることは否めない。

先日も講談社の決算発表が、業界紙に載っていたが、紙の書籍・雑誌の売上を
電子書籍・版権の売上が上回ったという。最も、コミックを持っている、大手
出版社は、スマホ配信等というプラットフォームを手に入れたので、別格だが。

著者はあとがきの最後に言う。

“活字離れをどう食い止めるか。新聞・出版・テレビ・インターネットを問わず、
本書がマスメディアのあり様を考えるうえで何らかの役に立てば、これ以上の
喜びはない。”

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