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2021年02月23日19:13

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読書日記Nо.1336(中国SFブームの火付け役、ケン・リュウが贈る珠玉の物語群)

■ケン・リュウ、古沢嘉通他訳「生まれ変わり」2021年1月ハヤカワ文庫
(ケン・リュウ短篇傑作集5)

本書をなぜ手に取ったかといえば、ケン・リュウ短篇傑作集の1〜4巻までを
以前に読んで堪能していたから。

ケン・リュウは、1976年生まれの中国人だが、アメリカに帰化して、弁護士や
プログラマーとしての顔をもっているが、2011年に発表した「紙の動物園」で、
ヒューゴー賞、ネピュラ賞、世界文学大賞という史上初の三冠に輝き、その後も
精力的にSF短篇を発表している。

日本で話題になったのが、2017年に翻訳された「紙の動物園」で、TVバラエティ
でも取り上げられて、一躍読まれるようになった。

もともと、私は、1970年代の星新一、小松左京、筒井康隆が活躍した 日本SFの
黎明期にSFファンになっていたので、ケン・リュウって、どんなものかと、
興味本位で手に取った。

いやぁ、凄かったです。21世紀のSFの息吹に、圧倒された。
SFというジャンルは、こんなに多様な世界を文学として描けるのかという思い。

2017年の「紙の動物園」「もののあはれ」の読書日記が下記↓。
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1960592257&owner_id=5540901

2019年の「母の記憶に」「草を結びて環を銜えん」の読書日記が下記↓。
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1973436182&owner_id=5540901

本書の惹句を紹介します。

“異星からの訪問者トウニン人と共生することになった人類は、悪い記憶を切除し
新しい自分に「生まれ変わる」ことが可能になった。トウニン人の恋人をもつ
地球人の特別捜査官が謎の殺害テロ事件を追う表題作、アジアの田舎の靴工場で
女工として働く少女の不思議な体験を描く「ランニング・シューズ」など、現代
アメリカSFの最重要作家のひとり、ケン・リュウの単行本第三短篇集『生まれ変わり』
から12篇を収録した傑作集。”

【収録作品】
生まれ変わり
介護士
ランニング・シューズ
化学調味料ゴーレム
ホモ・フローレシエンシス
訪問者
悪疫
生きている本の起源に関する、短くて不確かだが本当の話
ペレの住民
揺り籠からの特報:隠遁者──マサチューセッツ海での四十八時間
七度の誕生日
数えられるもの

IT技術を始め、科学技術、経済、などにおける中国の台頭は著しく、日本を
抜いて、アメリカに次ぐ世界第2位の大国になっているが、SFの世界においても
その地位になっているのではと思わせる。

ケン・リュウは、中国系アメリカ人なので、日本も含む、中国・台湾・韓国の
アジアンテイストもあり、日本人にとっても、リーダブルではないかと思う。

そしてさらに、中国系アメリカ人も、アメリカにおいては、マイノリティなので、
マイノリティの視点からの、南北問題も、SFの形で描き出して、物語に深みを
与えている。

21世紀のSFの極北は、ここまで来ているのかと、ちょっと陶然としてしまった。
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