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2021年02月07日17:19

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読書日記Nо.1332(JR上野駅公園口)

■柳美里「JR上野駅公園口」2021年1月第19刷河出文庫

芥川賞作家・柳美里さんのことは、もちろん存じ上げていたが、作品は未読で
今まで縁がなかったが、全米図書賞・翻訳部門第一位受賞した作品である本書が、
書店店頭で、華々しく並んでいたので、手に取った。

帯には、“全世界が感動した「一人の男」の物語。23万部突破。NHK、朝日新聞他、
メディアで話題沸騰!”という言葉が躍っていた。

柳美里さんは、1968年生まれで、高校中退後、劇団・東京キッドブラザーズに入団
した後、「像の祭」で岸田国士戯曲賞を最年少で受賞し、1997年に「家族シネマ」
で、芥川賞を受賞という華々しい経歴がある。

小説は、大きく分けて、純文学、大衆文学があり、私の読書日記では、もちろん
どちらも読書対象にしているが、どちらかといえば、エンタテインメントの後者に
比べると、前者は、人間存在の深淵に迫る感じがして、ちと重たい気がする。

本書も、全米図書賞受賞という華々しい触れ込みで手に取ったが、結構重たく、
ずっしりと、魂が揺さぶれる心地がした。

惹句を、ちと長いが、紹介しますね。

“2014年に刊行された小説を、今、多くの人が手にとっている。柳美里による
『JR上野駅公園口』(河出書房新社)である。”

“2020年、『Tokyo Ueno Station』(翻訳:モーガン・ジャイルズ)が、アメリカ
で最も権威のある文学賞の一つである、全米図書賞(翻訳文学部門)を受賞した。
受賞をきっかけに火が付いたことは間違いないが、それだけではないことは一読
すればわかる。”

“この本は、「人生には過去と現在未来の分け隔てはない。誰もが、たった一人で抱え
きれないほど膨大な時間を抱えて、生きて、死ぬ―(p.161)」という本文中の記述
通り、過去現在未来が渾然一体となった一人の男の人生と、日本の姿を描く。”

“上野恩賜公園のホームレスは、東北出身者が多いそうだ。「高度経済成長期に常磐線
や東北本線の夜行列車に乗って、出稼ぎや集団就職でやってきた東北の若者たちが、
最初に降り立った地が上野駅で」、50年の歳月が流れて、様々な理由で帰る場所を
失ってしまった人々が、そこで日々を過ごしている。他のホームレスたちと緩や
かな連帯を築いていても、決してそれ以上の深い関係を築こうとしない、
「いつも居ない人のことばかりを思」っている、「人生に不慣れ」な主人公もまた
同様だった。”

“不運な彼の人生には、いつも雨という形で「死」がつき纏った。一方、人生の
ハイライトは、常に「天皇」という光によって照らされていた。照らされるからこそ、
その影は一層目立つ。”

文庫本なので、解説があり、団地・皇室・鉄道の政治思想史家・原武史さんの文章も
堪能できた。

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