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2020年03月05日21:11

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読書日記Nо.1251(見えない危機の時代を生き抜く最強の読解力)

■佐藤優・富岡幸一郎「〈危機〉の正体」2019年10月講談社刊

日記のタイトルも、本書の書名も、今の世界の新型ウイルス禍の状況に
ぴったりと思われるかもしれませんが、本書は昨年の10月刊なので、
そうではありません。

でも、3月5日現在に生きる人びとの気持ちに、こんなにフィットするのは
なぜなんだろうかと思うと、21世紀の人類にとって、本質的な指摘がなされて
いるような気がします。

1970年大阪万博のスローガン「人類の進歩と調和」の楽観的ユートピアは
どこに行ってしまったのでしょうか。今、世界の人が感じているのは、
人類は、ユートピアとディストピアの塀の線上に立たされているのはという
思いかもしれません。

新型ウィルス禍は、はたして、パンデミックになるのかどうか。
もう、パンデミックだと言っている人も多いかもです。

さてさて、本書でしたですね。惹句を紹介しましょう。

“暴発するテロ、迫るファシズム、広がるインターネットの闇、底なしの格差
と貧困。世界を覆う「見えない危機」の正体を見抜き、現代を生き抜くための
最強の読解力を指南する。”

“危機とは、もともとギリシア語で峠とか分かれ道を意味する「クリシス」
に由来する概念だ。分かれ道に関しては、選択を間違えると、とんでもない方向
に進むことになり、目的地に到達することはできない。従って、われわれが危機
について語るときは、単に危機という現象について、分析し、認識するだけでは
不十分だ。危機から抜け出す処方箋についても考えなくてはならない。”

“同時多発テロ/オウム真理教/官僚の不正/トランプ現象/北朝鮮の脅威/ヘイト
言説/日米同盟/沖縄基地問題/外国人労働者受け入れ/相模原事件/子どもの貧困……
現代の危機を神学の知恵で読み解き、希望への処方箋を提示する。”

佐藤優さんについては、この読書日記でも10冊くらい対談も含めて取り上げて
いるので、マイミクさんはご存知だと思うが、もう一方の富岡幸一郎さんは
しらない方も多いのではないか。かくゆう私も知りませんでした。

富岡幸一郎さんは、1957年生まれの文芸評論家で、佐藤さんがこのテーマの
対談相手に富岡さんを選んだのは、富岡さんは、佐藤さんと同じくプロテスタント
神学者として、その方面での造詣が深くて、対談によって、倍音が出せると
踏んだのではないかと思われます。

その企ては、見事に成功して、本書は、実り深いものになったと思います。
ただ、神学の知識に疎い、私には、対談内容は難解の部分も多かったですが、
底なしの格差と貧困に悩む人々に届けたという熱い思いは、感受できました。

目次と見出しの抜粋も紹介します。

1見えない危機の到来
・終末論の視点で世界を見る
・村上春樹「ねじまき鳥クロニクル」の予兆性
・アンチエイジングからオウム真理教まで
2資本主義の暴
・アメリカの正体とは何か
・村田沙耶香「地球聖人」の悪魔的ユートピア
・マルクスの限界と宇野経済学
3国家の本質
・天皇が琉歌を詠む意味
・古川日出男「ミライミライ」が描く「もうひとつの戦後史」
・貨幣の暴力性とファシズム
4格差社会を超えて
・新自由主義的な価値観が生む絶望
・ロシアにおける「友人のネットワーク」
・崔実「ジニのパズル」が持つ「驚き」

今回、二人は、小説を読み解くことで、現下の危機に迫るというアプローチ
を取ったので、興味深く、読み終えることができました。
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