■梶谷懐・高口康太「幸福な監視国家中国」2019年8月NHK出版新書
中国は今、新型コロナウィルスでパンデミック状態になっていて、大変な
ことになっていますね。
経済活動がほとんど停止状態になっていて、世界経済に及ぼす影響は、
これからじわじわと、顕在化してくるものと思われます。
さて、本書なんですが、共産党の独裁国家の中国は、他方、ITの先進
国家でもあり、ネットだけではなく、監視カメラの設置率でも、世界で
有数だということです。
それを、中国国民は、唯々諾々と受け入れているのかというのか、という
素朴な疑問があって、手に取った次第です。
早速、惹句を紹介。
“一体何が起きているか!? ”
“習近平体制下で、人々が政府・大企業へと個人情報・行動記録を自ら
提供するなど、AI・アルゴリズムを用いた統治が進む「幸福な監視国家」
への道をひた走っているかに見える中国。”
“セサミ・クレジットから新疆ウイグル問題まで、果たしていま何が起きて
いるのか!?気鋭の経済学者とジャーナリストが多角的に掘り下げる!”
章立てと小見出しの抜粋も紹介。
■第1章 中国はユートピアか、ディストピアか
・「分散処理」と「集中処理」/テクノロジーへの信頼と「多幸感」
・幸福を求め、監視を受け入れる人々
■第2章 中国IT企業はいかにデータを支配したか
・「新・四大発明」とは何か/アリババはなぜアマゾンに勝てたのか
・中国のギグエコノミー/「働き方」までも支配する巨大IT企業
・プライバシーと利便性/なぜ喜んでデータを差し出すのか
■第3章 中国に出現した「お行儀のいい社会」
・急進する行政の電子化/質・量ともに進化する監視カメラ
・統治テクノロジーの輝かしい成果/監視カメラと香港デモ
・幸福と自由のトレードオフ/中国の現状とその背景
■第4章 民主化の熱はなぜ消えたのか
・中国の「検閲」とはどのようなものか/「ネット掲示板」から「微博」へ
・習近平が放った「3本の矢」/検閲の存在を気づかせない「不可視化」
■第5章 現代中国における「公」と「私」
・「監視社会化」する中国と市民社会/第三領域としての「市民社会」
・「監視社会」における「公」と「私」
■第6章 幸福な監視国家のゆくえ
・功利主義と監視社会/心の二重過程理論と道徳的ジレンマ
・可視化される「人民の意思」/テクノロジーの進歩と近代的価値観の揺らぎ
■第7章 道具的合理性が暴走するとき
・新疆ウイグル自治区と再教育キャンプ/問題の背景
・日本でも起きうる可能性/意味を与えるのは人間であり社会
西側の情報だけだと、現代中国の「監視社会」は、ジョージ・オーウェルの
「1984年」で描いたイメージに近いと思えますが、果たしてそうなのかと
一石を投じる意味で、本書を著したと、著者は言います。
一読した印象では、なんとも言えませんが、政治体制とITと爆発的な進化
が合いまった異形の国家の姿は、人類の壮大な実験の場かもしれないと
思ったりします。
少なくともユートピアとは言えませんが、果たしてディストピアかどうか。
まぁとにかく、新型コロナウィルスの蔓延は抑えていただきたいと思いますが、
こればかりは、ITや政治体制では、抑えられません。
ログインしてコメントを確認・投稿する