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2020年01月25日15:32

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読書日記Nо.1240(この物語には、人が生まれて生きて、そしていなくなることの、 すべてがある)

■川上未映子「夏物語」2019年7月文藝春秋刊

読書日記が中6日空いてしまった。

川上未映子さんの、500頁余の大作の小説を読んだからだが、
内容が結構重く、読み進めるのに、時間がかかった。

でも、本を置きたいとは思えなくて、ずんずんと、少しずつながら
読み進むことが出来たのは、作品の持つパワーだと思う。

日記のタイトルに使ったフレーズ「この物語には、人が生まれて生きて、
そしていなくなることの、すべてがある」は、帯の文言で、大げさに
思わるかもしれないが、看板に偽りなしだと思った。

川上未映子さんの小説を読むのは、実は初めてで、2008年の芥川賞
作家だとはもちろん知っていたが、ご縁があったのは、最近文庫本にも
なった、村上春樹との対談集「みみずくは黄昏に飛びたつ」を読んだとき
だった。

川上さんは、村上春樹の作品を深く読まれていて、村上春樹という作家
の根源に、これでもかというほど迫って、その迫力に驚いた。

文学の本質に迫る迫力、それは、この作品にもいかんなく発揮されていた。

惹句を紹介しますね。

“パートナーなしの妊娠、出産を目指す夏子のまえに現れた、
精子提供で生まれ「父の顔」を知らない逢沢潤――
生命の意味をめぐる真摯な問いを、切ない詩情と
泣き笑いに満ちた極上の筆致で描く、21世紀の世界文学!
世界十数ヵ国で翻訳決定!”

“この物語には、人が生まれて生きて、そしていなくなることの、
すべてがある。”

書評の文言も、いくつか抜粋。

“生まれることに自己決定はない。だが産むことには自己決定がある。
この目も眩むような非対称を、どうやって埋めればよいのか?
母になる女たちは、この暗渠をどうやって越したのか?
どうすれば、そんな無謀で勝手な選択ができるのか?
作者は、「産むこと」の自己決定とは何か? という、怖ろしい問い、だが、
これまでほとんどの産んだ者たちがスルーしてきた問いに、正面から立ち向かう。”
――上野千鶴子(「文藝」秋季号)

“笑橋で今日も生きる巻子の、物語終盤での言葉に、誰もが泣くだろう。(中略)
この作品は間違いなく傑作である。”
――岸政彦(「文學界」8月号)

“この作品は、全方向からの意見に耳を傾けているような、
極めてフェアな作りになっている。
それも生殖医療を論じる難しさの中で、
子どもを持つ、というシンプルな願いをどう叶えるかと、模索した結果であろう。
川上未映子は、難しいテーマを、異様な密度で書き切った。”
――桐野夏生(「文學界」8月号)

“これ以上ないほどシリアスな倫理問題を扱っているが、
大阪弁を交えた語りやセリフの爆発的な笑いの威力よ。
破壊と創造を同時になしとげる川上語も堪能されたし。”
――鴻巣友季子(「毎日新聞」7月28日書評)


最近、小説を読んでいなかったが、“超弩級”の作品を読んでしまったかも
しれない。

2〜3日前、この作品が、2020年本屋大賞の候補にノミネートされて
いることを知って、受賞するかもしれないと、期待している。
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