■赤坂憲雄「ナウシカ考 風の谷の黙示録」2019年11月岩波書店刊
私の長女は1986年、二女が1995年生まれなので、子どもたちが
幼いときから、宮崎アニメには、親しんできた。
「風の谷のナウシカ」のアニメは、映画館やTVの再放送などで
もう数回観てきた。
宮崎駿さんの「風の谷のナウシカ」は、マンガ版とアニメ版があって
両者は、タイトルは同じながら、作品としては全く違うとは、以前から
耳にしてきたが、本書は、マンガ版「ナウシカ」を巡る論考。
因みに、アニメ版がエンターテインメントなら、マンガ版は純文学の
ような違いがあるという。
著者は1953年生まれ(私の1歳年上)で、民俗学・日本論が専門の
大学の先生。著書に「岡本太郎の見た日本」「東北学/忘れられた東北」
「性食考」などがある。
私とほぼ同い年の大学の先生が、なぜ「風の谷のナウシカ」に拘って
いるのか。惹句を紹介しますね。
“1982年から雑誌『アニメージュ』に連載され,映画版の制作を挟み94年に
完結した,宮崎駿の長編マンガ『風の谷のナウシカ』。この作品の可能性の
種子は,時代の喘ぎのなか,いま,芽生えと育ちの季節を迎えようとしている
のかもしれない――。多くの人に愛読されてきたこのマンガを,二十余年の
考察のもと,一篇の思想の書として徹底的に読み解く. ”
目次と小見出しの抜粋も紹介。
第一章 西域幻想
1 秘められた原点
・アニメとマンガのあいだ
・宮崎駿の種子をもとめて
2 神人の土地へ
・小さな谷の王国
・旅立ちのときに
第二章 風の谷
1 風の一族
・腐海のほとりに暮らす
・風車とメーヴェのある風景
2 蟲愛ずる姫
・背負う者の哀しみとともに
・ギリシャ神話のなかの原像
3 子守り歌
・あらかじめ壊れた母と子の物語
・擬態としての母を演じる
4 不思議な力
・境界にたたずむ人
・王蟲の心を覗くな、という
第三章 腐海
1 森の人
・火を捨てて、腐海へ
・世界を滅ぼした火とともに
2 蟲使い
・たがいに影として森に生きる
・森が生まれるはじまりの朝に
3 青き衣の者
・邪教と予言が顕れるとき
・犠牲、または自己犠牲について
4 黒い森
・腐海の謎を読みほどくために
・第三の自然としての腐海
第四章 黙示録
1 年代記
・年代記と語りと声と
・文字による専制が産み落とした偽王たち
2 生命をあやつる技術
・悪魔の技の封印が解かれる
・帝国を支える宗教的呪力の源泉として
3 虚無と無垢
・内なる森を、腐海の尽きるところへ
・名づけること、巨神兵からオーマへ
4 千年王国
・千年とう時間を抱いて
・物語の終わりに
終章 宮崎駿の詩学へ
こうして、目次と小見出しを引用するだけで、なんだか内容が溢れ出して
くるような気がします。
宮崎駿が紡ぐ神話が、マンガ版「風の谷のナウシカ」で、著者はその核心
に深く沈潜して思考し、その紡ぐ揺らぎに、心身を委ねた読書でした(^^♪
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