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2019年07月15日19:34

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読書日記Nо.1193(箱の中の天皇)

■赤坂真理「箱の中の天皇」2019年2月河出書房新社刊

私は未読だが、著者は、2012年に、アメリカで天皇の戦争責任を
問われる日本人少女の目を通して、戦争と戦後を描いた「東京プリズン」
を上梓し、毎日出版文化賞、司馬遼太郎賞、紫式部文学賞を受賞、大きな
話題となった。

本書はその続編とも位置付けられ、改元を目前に控えた時期に刊行、
改めて、日本の象徴天皇制の秘密について、思想史的ではなく、文学として
迫った小説。

惹句の出来が悪かったものですから、東大の武田将明さんのレビューから
引用して紹介。

“もうすぐ平成が終わる。明治以降はじめて、日本人は天皇の存命中の退位を
経験することになる。しかしその事実と自分がどう向き合うべきか、考えた
ことはあるだろうか。”

“本書の主人公のマリは、謎の老女の導きで敗戦直後にタイムスリップし、
占領軍総司令官ダグラス・マッカーサーを訪ねる。隙を見て部屋にある小箱を
すり替え、そこに収められた天皇の魂の一部を奪還する。”

“一年後、マリは今上天皇が退位の意向を表明した演説を聴く。その周りには
マッカーサーなどGHQの面々も座している。実際の演説が引用されながら、
マリとGHQのあいだで天皇制に関する議論が巻き起こる。そこに先述の老女が
召喚され、マリは今上天皇に直接問いかける。”

“これがあらすじだが、本書の「魂」はむしろ天皇制をめぐる議論の中身にある。
マリは、「日本国民統合の象徴」という、日本国憲法に記された天皇のあり方
について問う。象徴は実体を表象するはずだが、果たして実体としての「日本国民」
とは何か。戦後の日本人は家や会社などの箱を次々に作ったが、そこに入る中身
について考えてきたのか。”

“つまり、箱に閉じ込められた天皇の魂とは、本来は日本国民の魂でもあるはず
なのだ。しかし本書によれば、象徴を満たす実体について真剣に考えているのは、
「全身全霊をもって象徴の務めを果たして」きた今上天皇だけである。ならば、
この天皇の退位を契機に、「日本国民」とは何かという問いに一人一人が向き
合うべきではないか。”

“こうまとめると小説というより論文のように思えるかもしれないが、本書の凄みは、
時空を超え、虚実のあいだを縫う想像力と、現実への批評精神が結びついた点にある。シャーマン的な社会小説という点で、石牟礼道子を彷彿とさせる。”

なんだか、武田先生の引用だけになってしまいましたが、著者の赤坂真理さんには
私も石牟礼さんを彷彿とされるシャーマンを感じました。

天皇制自体、論理で割り切れない、シャーマン的な要素があります。

でも著者が、この小説で、一番表現したかったのは、2019年4月末に退位された
上皇の思いではなかったかと思います。

上皇は当然、その真意を語られませんから、フィクションにすることによって、
その思いが、凄みをもって、読者に迫ってきます。
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コメント

  • mixiユーザー

    mixiユーザー2019年07月16日 09:52
    11月まで、日本に天皇は不在ですか?ぴかぴか(新しい)
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2019年07月16日 12:25
    「東京プリズン」は、いつか我が家の読書会のテーマに、となんとなく思い続けている本なのですが、もしそれが実現したら、この「箱の中の天皇」は、サブテキストとして必読になりそうですね。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2019年07月16日 12:55
    MINEさん、こんにちは。

    いえいえ、5/1に今上天皇は、もう即位されています。
    11月は確か、「即位の礼」という儀式を執り行うことに
    なっていると思います。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2019年07月16日 12:57
    44ヨシモトさん、こんにちは。

    「東京プリズン」が、ヨシモトさん家の読書会のテーマ候補に
    なっているのですね。

    この本、出た当時、非常に話題になって、賞もたくさん取って
    いて気になっているのですが、未読です。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2019年07月16日 15:56
    先ず箱としての天皇は先ず御真影として飾られ、開戦の詔や玉音放送をラジオから出し、TVの普及でお姿を見せた陛下であり、象徴天皇としてその務めを全うされた先帝ですが、昭和帝の戦争責任をアメリカの高校生に語らせ、更に議論になります 凡そ敗戦国の君主は須らく廃位を迫られましたが、何故にそれを免れ得たのか、決して空虚では在り得なかった核心、この国が中身を無くした多くの空き箱を抱えている中、今ここで如何にあるかですね
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2019年07月16日 21:11
    かみかわさん、こんばんは。

    昭和天皇は、一身にして二世を経験されましたですね。
    平成天皇、上皇は、即位された当初から、象徴天皇でして、
    言わば、生まれながらの象徴天皇如何にあるべきかを真摯に
    追究されたのではと、拝察しています。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2019年07月16日 21:14
    勇魚さん、こんばんは。

    「東京プリズン」を読了されていらっしゃったのですね!

    そういえば、「東京プリズン」の主人公マリと、本作品のマリは
    通底していますね。さらにいえば、それは著者の真理でもあります。

    シャーマンは、憑依する者ですが、著者の憑依のレベルは只者ではない
    と思った次第です(^^♪
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2019年07月16日 23:05
    東京プリズン、読むべきだろうと思いつつ、読んでいません。同じ著者の『愛と幻想の戦後とその後』も本棚に鎮座したままです(苦笑)。読むべきだろう、と興味を惹かれつつ、なんとなく重く感じてしまって(苦笑)。いつか、読むべき、が読みたいになったら読むと思います。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2019年07月17日 08:02
    shu1さん、おはようございます。

    shu1さんは、「読むべき本」をきちんと所持されているのが、凄いと
    かねがね思っております。

    最近は、電子書籍などもご購入されていらっしゃいますが、紙の本
    の積読書だけでも、かなりの量になられるのでは。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2019年07月17日 22:13
    上皇が天皇の時に《退位のご意向をにじませた》発言をされた際、一部の識者(?)から
    「生前退位など認められぬ」
    という発言があったそうですね。
    私はそれを聞いて、
    「天皇には自由な発言も許されないのか」
    と気の毒な気持ちになりました。
    そんな私が本書を読んだら、どう思うのか我ながら興味があります。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2019年07月17日 22:22
    TORATONTONさん、こんばんは。

    日本の象徴天皇制は、GHQの「作品」だと思いますが、凄いと
    思いましたのは、生まれながらの象徴天皇制の中で即位された、
    現上皇・平成天皇が、懸命に象徴天皇とはどうあるべきか、模索
    されたことだと思います。だから、生前譲位も可能になりました。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2019年07月17日 22:24
    じろさんさん、こんばんは。

    戦後、日本は民主主義になり、憲法で国民は基本的人権が認められ
    職業選択の自由も憲法で保証されました。

    でも唯一、基本的人権が認められていないのが、天皇なんです。
    十重二十重と規制された中での天皇の在り方、普通の人間には
    勤まらないと思います。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2019年07月18日 03:56
    > ヤマヤマ様
     ブックレビューも近く書き込む予定である『とちおとめのババロア』(小谷野 敦 著 青土社)も、小説仕立てで、天皇象徴性、退位、人権のない宮家等をとりあげており、貴兄ご紹介の本にもある一面通じるものがあるようにも思えました。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2019年07月18日 08:19
    AKKIYさん、おはようございます。

    小谷野敦さんの「とちおとめのババロア」のご紹介、ありがとうございます。
    私のアンテナに全くキャッチできない本でした。

    青土社の本は、若年のころときどき手に取りましたが、最近はご無沙汰
    しております。小谷野敦さんの本も何か読んだ記憶がありますが、失念して
    おりました。

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