■金成隆一「記者、ラストベルトに住む」2018年10月朝日新聞出版刊
副題は、“トランプ王国、冷めぬ熱狂”。
2016年11月のアメリカ大統領選で、世界の大方の予想を裏切って、
トランプが勝利した。
その原動力になったのは、ラスト(rustとは金属のさびの意)ベルトと呼ばれる
米国中西部から北東部に位置する、鉄鋼や石炭、自動車などの主要産業が
衰退した工業地帯の住民たち。
著者は、1976年生まれの朝日新聞ニューヨーク特派員で、岩波新書から
「ルポ トランプ王国ーもうひとつのアメリカを行く」という著書も出しているが、
その後のラストベルトの住民たちの本音を、実際にラストベルトに住んで、
取材したのが、本書となった。
米国というと、ワシントン・ニューヨークの東海岸や、ロサンゼルスなどの西海岸
がすぐ思い浮かび、世界の最先端という印象が強いが、それは表層であって、
その間に挟まれた中部こそが、真のアメリカだという声もある。
いったいその地域は、どんなで、住民たちは何を考えているかを知りたくて
本書を手に取った。
いやぁ、目からうろこで、非常に面白かった。
惹句を紹介しますね。
“祝! 2018年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞! ”
“「この街でアパートを借りる?気は確かか?」
記者が住み込み取材のためにアパートを借りたのは、オハイオ州トランブル郡ウォーレン。
かつては製鉄業で栄えたが現在は廃れた地ーーラストベルトだ。
一帯は貧困率35パーセント、薬物依存で犠牲者が相次ぐエリア。”
“トランプ大統領誕生を支持し、後押しした人々は
いま、何を思うのか?
記者が労働者の街に暮らして浮かび上がってきた、
もうひとつのアメリカーー。”
章立てと小見出しの抜粋も紹介。
■第1章 日常に戻ったラストベルト
・草の根選挙運動に貢献した支持者
・「誰もトランプに模範は求めない」
・大卒でも、25年前の母より低い給料
■第2章 この街でアパートを借りる?
・2016年の大統領選をなぜ見誤ったのか?
・住み込み取材で見た薬物汚染の実態
・ニューヨークとトランプの光
■第3章 貧困につけこむ白人民族主義
・白人至上主義団体の支持を拒まないトランプ
・「見捨てられた白人」が勧誘ターゲット
■第4章 抵抗のうねり
・性的少数派の権利
・銃規制を求める動きと反発
■第5章 揺れる人々
・「トランプで本当によかったのか」
・「組合が労働者を見捨てた」
■第6章 軋むアメリカ
・支持者の7割は「トランプいいね」
・「トランプっぽさ」競争と化した共和党予備選
なぜ、トランプが大統領になったのか、その支持者たちの背景がとてもよく
分かった。
中間選挙では、下院で民主党が勝利したが、2年後は分からない。
日本における安倍政権は、米国の「変数」状態になっているので、大変気になる。
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