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2018年01月26日08:45

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読書日記No.1062(明治維新で変わらなかった日本の核心)

■猪瀬直樹・磯田道史「明治維新で変わらなかった日本の核心」2017年11月PHP新書

私は、某大学の文学部の出身だが、その文学部には学科が3つあって、
哲学科、史学科、文学科であった。

私は、哲学科の出身で、哲学本体ではなく、専攻は社会学なのだが、
科内には、哲学、印度哲学、中国哲学、美学などがあった。

なんでこんな話をしているかというと、私の道楽読書で手に取るジャンル
に関係していて、文学というか、小説・評論・短詩型文学などの文芸分野
は手に取ることが多いが、歴史と哲学なら、圧倒的に哲学(思想含む)の
ジャンルに手が伸びることが多い。

歴史は、高校時代は、世界史も日本史も大好きだったし、その昔は、
司馬遼太郎さんの本は、たくさん読んだし、西洋史では、塩野七生さんの
本もよく読むが、なぜ、歴史の本を読む機会が少ないかというと、よい書き手
にあまりめぐり合っていないのかもしれないと思い当たった。

前置きが長くなりましたが、何がいいたいかというと、今、売出し中の歴史の
啓蒙書をたくさん書いている、磯田道史さんという、珠玉の書き手に近年
で会って、この人の書いた本を読む喜びを最近感じるようになったため。

本書は、その磯田道史さんと、あの猪瀬直樹さんとの日本史をめぐる対談。

猪瀬直樹さんは、政治の世界に行って、傷を負ったが、元々、はライターで
彼の著作に馴染んでいたので、この二人の対談なら、読まないわけには
いかない。

読後感は、いやぁ、面白かった!

惹句を紹介しますね。

“明治以降、なぜ日本は近代化に成功したのか。それは明治維新で日本が
変わったのではなく、成功の要因がすでに江戸時代までの歴史の中で形
づくられていたからだ。”

“日本には、古代から変わらない「国の核心」がある。古来、培ってきた組織
原理や行動原理、権威に対する考え方などが、今なお日本人に大きな影響を
与えている。その「日本的原理」の長所と短所を知らねば、この国で成功を
つかむことは難しいし、いかなる変革も望めない。”

“では、「この国の秘密」とは何か?――
平安時代から江戸時代まで「通史的思考」で読み解き、日本のあり方に迫る、
白熱討論。”

章立てと小見出しの抜粋も紹介

第1章 日本の組織原理と権威構造の源泉──古代をたずねる
 ・天皇の権威がなぜ、いかにして全国に行き渡ったか
 ・平安時代の流通システムと貨幣のあり方
第2章 「新しい公」の再編成──鎌倉、室町、戦国のダイナミズム
 ・日本の1500年代から1700年は「偉大な二百年」
 ・信長や秀吉は「天皇」の権威利用がうまかった
第3章 江戸武家社会の組織と個人──サラリーマン根性の始まり
 ・「滅私奉公」は江戸時代の武士階層のための言葉?
 ・責任と権限は「上」、実質的な差配は「中」
第4章 二六〇年の泰平を維持した社会システム──「転封」や「ジャンケン国家」の智恵
 ・武士たちは何が楽しかったか
 ・江戸の社会は「ジャンケン国家」
第5章 江戸に花咲いた近代的経済──進んだ経済政策と百姓たちの企業家精神
 ・豪農の息子が一万石の大名よりも強い経済力を持っていた
 ・産業振興策としての二宮金次郎ファンド

「おわりに」で、磯田道史さんは、こんなメッセージを読者に伝える。

“いま、読者諸氏に申しあげたい。日本が変化しないときは、時代ごとの死んだ
歴史を読んでいても命に別状はない。だが、いま日本人は、これまでの構造が
一夜にして変わってしまう世の中に生きている。このようなときは、『通史的思考』を
なさねば変化のなかを生きてはゆけない”

磯田道史さんは、古文書を読むことで、筋肉トレーニングのように、歴史観を養って
いて、ファクトに基づいた、歴史素人でもうなるような視点での提言が、彼の歴史の
本を読む楽しさに繋がっていると思う。

日本史好きの人には、ぜひ、オススメです♪
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