■竹本健治「涙香迷宮」2016年12月講談社刊
マイミクさんの中には、小説読みで、中でもミステリを集中して読まれている方
もいらっしゃるが、私は、ミステリは、たまに読む程度。
でも、たまに読んでも、出来のいいミステリに出会うと、他では味わえない、
ゾクゾクした震えを感じちゃうんです。
本書も、たまたま本書が、「このミステリーがすごい2017年度版」(国内篇)第1位
になっていたので、どれどれと手に取った。
いやぁ、言葉の究極のマジックというか、とくかく脱帽です!!
ところで、題名の「涙香」は、「るいこう」と読みます。
明治から大正にかけて活躍した、黒岩涙香の、涙香です。
黒岩涙香は、小説家・思想家・作家・翻訳家・ジャーナリストですが、新聞「萬朝報」
を主宰して、一時は、日本の発行新聞の一位となりました。
自ら、「鉄仮面」「幽霊塔」「巌窟王」「ああ無常」などの翻案小説を書きながら、
現代の文春砲のような、政治家・実業家などのスキャンダルを連載し、本名が
黒岩周六だから、マムシの周六と、恐れられました。
芸事にも造詣が深く、五目並べを連珠としてルールを整備したり、競技かるたの
団体をつくったりと活躍し、日本のレオナルド・ダ・ヴインチとも称されています。
本作品は、その黒岩涙香のオマージュともいえる作品ですが、涙香を素材として
活用しながら、突き抜けた、独自の世界を展開します。
惹句を紹介します。
“明治の傑物・黒岩涙香が残した最高難度の暗号に挑むのは、IQ208の天才
囲碁棋士・牧場智久! これぞ暗号ミステリの最高峰!”
“いろは四十八文字を一度ずつ、すべて使って作るという、日本語の技巧と
遊戯性をとことん極めた「いろは歌」四十八首が挑戦状。”
“そこに仕掛けられた空前絶後の大暗号を解読するとき、天才しかなし得ない
「日本語」の奇蹟が現れる。日本語の豊かさと深さをあらためて知る
「言葉のミステリー」です。 ”
担当編集者の声も紹介。
“お待たせしました! 竹本健治3年半ぶりの新刊はあまりにも精妙な、暗号ミステリ
の最高峰というべき大傑作です!”
“いろは四十八文字を一度ずつ、すべて使って作る「いろは歌」。この「いろは歌」自体が
まさしく日本語の技巧と遊戯性を極めているわけですが、なんと、そこに何重もの暗号が
仕掛けられているのです。”
“天才囲碁棋士の牧場智久がその頭脳を駆使し、暗号を解読していく様を読み進めると、
日本語という言葉の不思議さと魅力をたっぷり感じ、うっとりすらしてしまいます。そして
実感するのです。こんな超絶暗号を編み出す竹本健治は天才だ! と。”
一年の一番寒い、大寒の、今日この頃、こたつに入って、このミステリに堪能するのも
よいのでは、とミステリファン、日本語ファンには、オススメいたします(^^♪
そんな涙でもこぼしてみたいような気持ちになります。
ペンネームの付け方からして才能がありそうなんですね。
ミステリー大ファンの私としては要チェックの本ですね。
ミステリーも様々、ありえない展開にワクワクするものもあればじっくり読ませてくれるミステリーも多く
止められません(笑)
「言葉の究極のマジック」というと、アガサ・クリスティー『アクロイド殺し』を思い浮かべます。
このミステリーでは、どんなマジックなのか興味が湧きます。
明治の文人の雅号は、すばらしいですね。
涙香、ばかりか、漱石、鴎外を筆頭に、以下のような雅号が
浮かびます。
鳴雪、逍遥、泣菫、抱月、未明、鏡花、花袋、泡鳴等など♪
迷宮、ラビリンス。ゾクゾクする言葉です!
暗号の迷宮を逍遥し、快刀乱麻のごとく謎解きをする、
そのカタルシスには、うっとりしてしまいます♪
ご明察のとおり、私は山本夏彦の読者ですので、彼の
コラムで、マムシの周六こと、黒岩涙香のことを知りました。
作家でありながら、「萬朝報」を主宰し、ジャーナリストとしても
偉大でした。
ミステリファンでいらっしゃいましたですね!
ミステリも色々ありますが、本作品は、言葉の暗号の創作部分が
他の追随を許さないほと見事で、「日本語の奇跡」という紹介が
ぴったりの作品でした♪
早速、ご購入いただき、誠にありがとうございます!
それにしても、ミステリに目がない方ですね、くろねこさん♪
読まれたら、ぜひ、mixiでご感想をお聞かせください。
お待ち申し上げます♪♪
クリスティの「アクロイド殺し」は、数年前に読んで、読書日記に
書いた記憶がありますが、いつだったか、私の読書日記が整理
ができておらず、迷宮のようになっていますので、忘れてしまい
ました。
リタイアしたら、自分の読書日記をエクセルで整理しようと思って
いるのですが。(汗)
竹本賢治さんは、たくさんミステリを書いておられるようで、本書の
後に、作品一覧が載っていました。
本作品一編で感じた作風は、人間心理というより、謎解きが主流かと
思います。でもその謎解きが、尋常じゃなく突き抜けていましたです。
[泣菫] 泣けます。 どんな声かしら?
・・が、この本(もちろん第1位なのでスル-するはずもなく)も手にはとったものの、暗号が出てきた時点で急速リタイア(笑)
何しろ本格ミステリがほんと苦手なのでどうしようもなく
おもしろそうなのにねー、残念ですが私はトリックよりプロットを楽しむほうがあってるかなと
雅号は、現代でも、書道の人などは名乗っているようですが、
文人で廃れたのは、惜しい気がします。もっとも、「文人」という
ジャンルが廃れたからかもしれません。
泣菫、スミレの泣き声とはどのようなものか、想像するだけで風雅です♪
確かに本書、暗号となる「いろは歌」が、48首すべて、何ページにもわたって
出てくるところは、圧巻でもあり、ちょっと引いてしまうところでもありますね。
この作家、このような「本格」ミステリが得意領域のようで、東野圭吾さんや
宮部みゆきさんのように、大メジャーになれないのは、そのせいかもしれません。
>いろは48文字の中に我々の人生は尽きるのかも知れない
全くその通りかもしれませんですね!
本書は、そのいろは歌を、48種類創作し、暗号化してミステリ
にしているという、離れ業が、真骨頂です。