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2018年01月08日20:59

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読書日記Nо.1058(記憶の織物としての物語)

■北村薫「ヴェネツィア便り」2017年10月新潮社刊

北村薫の読者になって、まだ2、3年の新参者だが、往年の文学青年
である私の、琴線に触れてくる物語にゾクゾクしている。

本書は、近刊の短編集。

なにわともあれ、惹句を紹介。

“ヴェネツィアは、今、輝く波に囲まれ、わたしの目の前にあります。
沈んではいません。――あなたの「ヴェネツィア便り」は時を越えて、
わたしに届きました。”

“この手紙も、若いあなたに届くと信じます――なぜ手紙は書かれたのか、
それはどんな意味を持つのか……変わること、変わらないこと、得体の知
れないものへの怖れ。”

“時の向こうの暗闇を透かす光が重なり合って色を深め、プリズムの燦めき
を放つ《時と人》の15篇”

『波』の2017年11月号に、歌人の藤原龍一郎さんが、素敵な書評を書いていらっしゃ
ったので、その抜粋も紹介。

“記憶は物語の断片を内包している。その断片が時に巧みに綴り合わされると、
きれぎれだった記憶が物語を奏で始める。北村薫はそんな記憶から忘れがたい
人生の物語を紡ぎ出す手練れの魔術師である。”

“久生十蘭の彫心鏤骨の短編小説を即座に連想した。仏蘭西的な衒学趣味、
技巧をつくした修辞、みごとなストーリーテリング。この小説が十蘭の未発表作品
だったと言われたら疑わない。これは誉め言葉なのだが、北村氏に叱られるだろうか。
いや、してやったりと思うのではないか。”

“表題作の「ヴェネツィア便り」は書簡体小説。といってもひねりの効いたそれである。
20代と50代の女性の心理の綾が、ヴェネツィアというトポスを触媒として語られる。
ヴェネツィアでなければならない必然の物語なのだ。”

“漱石の「夢十夜」のみごとなパスティーシュ「指」。ホラー風味の愛の物語
「ほたるぶくろ」、女性一人称の落語擬きの「くしゅん」、教養趣味あふれる夫婦小説
「白い蛇、赤い鳥」、私のように短歌をつくっているものには涙なしでは読めない珠玉
の小品「白い本」。どの一篇も読書の醍醐味、短編小説の真髄を味わわせてくれる。”

なにより、この書評に、感激してしまった。

小説の職人、北村薫さんの魅力を語りつくしているではないか。

文学の海に耽溺したくなったら、北村薫の小説は、間違いなく愉楽をもたらして
くれますね(^^♪

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コメント

  • mixiユーザー

    mixiユーザー2018年01月10日 05:48
    ヴェネツィアは一度だけ行ったことがありますが、その経験がなくとも北村さんの小説、読んでみたくなりました。北村薫の本はここしばらく読まなくなってしまいましたが、短編小説も読み返したくなるものがたくさんありますね。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2018年01月10日 08:09
    shu1さん、おはようございます。

    ヴェネツィアは、塩野七生さんの、「海の都の物語―ヴェネツィア共和国の一千年」
    で馴染んでいますが、私は訪問したこともありません。

    小説の舞台としても、絵になるところで、北村薫さんは、見事なタペストリーに
    織り込んでいます。まさに名手のなせる技です♪
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2018年01月10日 08:37
    ヴェネツィアの光景はヴィスコンティでもまだ汲み尽くせない魅力がありますが、珠玉の小説たちの表題を飾るに相応しそうです
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2018年01月10日 08:53
    かみかわさん、おはようございます。

    ヴィスコンティといえば、「ヴェニスに死す」ですね。
    日本の作家でも、須賀敦子さんの「ヴェネツィアの宿」とか、
    塩野七生さんの、「緋色のヴェネツィア」とか、ヴェネツィアは
    芸術作品の舞台になりますね♪
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2018年01月10日 20:44
    私も須賀敦子さんの随筆で紹介されたヴェネツィアを読んで行きたくなりました。
    しかも、有名なリアルト橋ではなく、地味なアカデミア橋を褒めていたので。
    そんなヴェネツィアを彷彿させる小説なら、ぜひ読んでみたいです。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2018年01月11日 08:00
    じろさんさん、おはようございます。

    本作品集は、15編の短編が所収されていまして、表題の作品は
    その一編です。

    当該の作品は、ヴェネツィアはあくまで舞台回しで、30年後に
    若き日の自分に手紙を書くところに、文学的感慨がありましたです♪
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2018年01月11日 16:54
    え、ヤマヤマさん、北村さんを読みだして2,3年、ってことはないのでは?
    もっとずっと前からの読者という気がしましたが。

    この本、アマゾンで「あ、新しいの出てる」と思ってたはずなんだけど、なかなか手が回らずまだ読めてません。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2018年01月11日 20:51
    しまみみさん、こんばんは。

    いえいえ、実はそうなんです。

    小説も、道楽読書の重要なジャンルなのですが、根っからの
    小説読みではないので、レパートリーが結構狭いことを自覚して
    います。

    だから、しまみみさんはじめ、小説読みのマイミクさんの情報を
    とても大切にしています(^^♪
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2018年01月12日 00:20
    ヴェネツィア、一生に一度は訪ねたいです。ゴンドラに乗りたい。小説や映画では皆さん既に挙げていらっしゃいますが、私にとっては(超個人的な体験話ですが)メンデルスゾーンの無言歌集の舟歌です。まだ子供でしたが弾いた時に先生がゴンドラの絵葉書を下さって、その時以来ずっと船に揺られることに憧れを抱いてきました。簡易なクルーズなども好んで乗ります。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2018年01月12日 12:49
    ping pongさん、こんにちは。

    メンデスルスゾーンの無言歌集の舟歌、早速ユーチューブで聴きました。
    初めて聴きますが、メンデルスゾーンらしい哀愁を帯びた甘美なメロディーが
    一度聴いたら、忘れられませんですね♪

    https://www.youtube.com/watch?v=JgQq3ZIrx3U

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