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2020年09月16日07:34

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大島史洋著「短歌こぼれ話」を読んで



照る日曇る日第1466回

題名通りあれやこれやの100本近い逸話を集大成した、面白くて楽しい読み物である。

最初の「土岐善麿と冷水茂太」では昭和10年代の始め頃には短歌朗詠が盛んであったこと。永田淳の妻である植田裕子さんの本によれば、「寝耳に水」はどんな感じのものかと思った夫が妹の紅ちゃんの寝耳にほんとに水を注いだので彼女が「1回だけ本気で怒った」とか、有本芳水の「笛鳴りやまず」には樋口一葉の弟子になりたいと17歳で岡山から上京した近松秋江が本郷の一葉宅を訪ねたら、髪を銀杏返しに結った22、3歳の娘(邦子)が出てきて、「せっかくですけど姉は5日ほど前に亡くなりました」と言ったとか、「頑強なる抵抗をつづけし敵陣にリーダーがすててありたりと云ふ」という渡辺直己の伝聞の歌が、「頑強なる抵抗をせし敵陣に泥にまみれしリーダーがありぬ」という戦陣吟に変容した経緯、土屋文明が愛した教え子、伊藤千代子の無惨な死、最後の「赤とんぼ」では角川源蔵の出棺の時、角川春樹の赤とんぼの絶叫がマイクから流れてきたとか、どこのページをひらいても、新型コロナも吃驚の思いがけないアネクドートが転がり出てくる。

騙されたと思って手に取って御覧なさい。
ところで長きに亘って運営委員長として「未来」を支えてきた著者が、岡井隆亡き後なぜ編集委員長に就任しなかったのだろうか。ま、門外漢の私にはどうでもいいことであるが。

    天人菊またの名前は特攻菊長く咲くなり特攻隊より 蝶人

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