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2020年06月07日09:27

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ドナルド・キーン著「日本文学を読む・日本の面影」を読んで

照る日曇る日第1408回

このせつの日本人はおおかた日本および日本人が嫌いであるが、昔から日本人より日本人的で、日本を愛した人物もいて、それは例えばアーネスト・サトウとか小泉八雲とかこのキーンのようなひとなのだろう。

キーン選手の本は全部読んだと思っていたが、全集の後で新潮選書からこの本が現れいでて、前者は1971から77年の「波」への連載、後者は1992年NHK教育テレビの13回連続講座の元原稿なのだった。

解説に拠れば後者はぶっつけ本番のライブ収録らしいが、手元に何の資料も無くこれほど明解詳細に日本文学と文化について語り下ろせる人物がどこにいるかといいたくなる。

例えば啄木の英語の実力は抜群で、すでに15、6歳にしてワイルドの原書に親しみ、ワーグナー!を聴いてその感想を認め、イプセンの戯曲を翻訳している。彼の英文は文法的にはうまくないが語彙が豊富で英文としてはとても面白く、当時彼ほど英文を書ける日本人はそう多くなかった、という辺りは、氏ならではの発言だろう。

前者では二葉亭四迷から大江健三郎まで50名の文学者についてその特質を短い紙数に要約した文章で、中には多少の異論もないではないが、一葉、啄木、谷崎、斎藤、萩原、梶井、太宰、西脇、火野、大岡、安部、読んでこれほど面白く随所で啓発されるエッセイも「あらない」やろうね。

 「頑張って生きろよ」と火野葦平声掛ける黄色い大きな犬に向かって 蝶人

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