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2020年01月25日09:21

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ギュスターヴ・フローベール著・菅谷憲興訳「ブヴァールとペキュシェ」を読んで



照る日曇る日 第1344回

著者の死後の1881年に未完のままで刊行された本書は、2人の悲喜劇的な主人公が狂言回しとなって繰り広げられる所謂「笑劇的百科事典」で、そこでは19世紀現在における社会、思想、宗教の相関関係が徹底的に総括されていて興味深い。

「笑劇的百科事典」というても「笑劇的」なのは、フ氏が本書の付録として添付した「紋切型辞典」にみられる機知に富んだ皮肉な揚言形式を指すのであって、「衝撃的」な小説形態を模索せんとする氏の真摯な研鑽努力を指すものではありませぬ。

ちなみにこの文字通り画期的なエンサイクロペディアを立ち上げるために、氏が本書で論及したカテゴリーは、「農学から造園術、化学、医学、地質学、考古学、歴史学、文学、政治学、恋愛、体操、オカルト科学、哲学、宗教、教育学」(解説より)などなどの殆ど森羅万象に及んでいますが、そのために氏は、なんと1500冊以上の著作、文献、参考資料を渉猟し、それらを読み込みつつ膨大なメモを作成し、その成果を「百学連環」とでも称すべき本書に取り込んだのです。

思想とは何か?という大問題を、古今東西の始原から当代にまで東奔西走して、考究し尽くそうとする哲学者ならぬ小説家の野望、ゲーテやマルクス、南方熊楠に比すべきこの知的冒険の一大事業は、マラルメの「肉体は哀し。万巻の書は読まれたり」という諦観、ポール・ヴァレリーの「思考は極端なるものによってのみ進むが、中庸なるものによってのみ存続する」という認識に到達し、「すべての知は虚しい」とする相対的な悟達のうちに幕を閉じるのです。

  ジャッキーのチェンがいた頃の香港はポリスは弱きを挫かなかった 蝶人


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コメント

  • mixiユーザー

    mixiユーザー2020年01月27日 12:57
    であるとともに、蓮實重彦氏の大作『「ボヴァリー夫人」論』と、『凡庸な芸術家の肖像−マクシム・デュ・カン論』は、読んでおきたいところですね。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2020年01月27日 13:54
    > mixiユーザー されどあんまり読みとうないずら。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2020年01月27日 14:29
    > mixiユーザー ブヴァール&ペキッシュは、角川文庫のセット箱入り上下で読んだずら。面白かったズラ。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2020年01月27日 15:01
    > mixiユーザー はい。岩波文庫からも出ていましたね。でも今度の新訳は完全訳でして註解が物凄いずら。「紋切型事典」ってこの本のおまけだったんですね。知らんかったずら。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2020年01月27日 20:22
    > mixiユーザー  オマケをこえて一冊本になるくらいだったスゴい企画だったようです。今度の新訳を知らんずら。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2020年01月28日 08:22
    >ジャッキーのチェンがいた頃の香港はポリスは弱きを挫かなかった 蝶人

    本当に、その通りです。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2020年01月28日 08:41
    > mixiユーザー 訳者は蓮實選手のお弟子さんらし。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2020年01月28日 08:41
    > mixiユーザー 手(チョキ)
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2020年01月28日 13:06
    > mixiユーザー ありがとうございました。そうでしたか…。そんなふうでもないと、あのとんでもない百科全書的ビブリオテーク、できんぞなもし。やる気もおきんし。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2020年01月28日 14:47
    > mixiユーザー 手(パー)

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