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2019年12月13日11:11

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四方田犬彦著「聖者のレッスン」を読んで

照る日曇る日 第1322回

本書は「映画における聖者の表象」をテーマに東京大学文学部で行われた13回のレクチャーを再録した、とても面白くて為になる講義録であるが、それが映画の話を超えて博覧強記と豊かな学殖で知られる話者の、全知全能をあげた文明批評に到達しているところに素晴らしさがある。

例えば、終わりごろに記されている我々の「無戒」の問題。

キリスト教やユダヤ教やイスラム教などの「戒律」によって人間が厳しく規矩されている国では、その「戒律」や律法が諸国民の生活様式を決定づけるコードになり、厳正なコードを地上にもたらす神や絶対者と諸個人との対立や相克や矛盾が、自由や倫理や文化の淵源となるだろう。

しかしこの国では、聖と俗を隔てる壁も人倫の掟も無く、なんでもありの無法無秩序状態である。こんな国と民草にあって、向後いかなる豊饒な文化や思想が涵養されるというのか?

そんな憂うべき未来を潜りためにも、これまで人類が製作してきた「聖なるもの」を巡る映画史を、世界映画学、比較宗教学、歴史社会学の総合的観点から該括してみよう。というところに、本書の存在意義があるのではなかろうか。

なお些事ながら、本書ではアロンはモーセの弟と2度にわたって表記されているが、兄の間違い。旧約聖書でエホバが「出エジプト」を命じた時、モーセは80歳、アロンは83歳でした。

 GUの大バーゲンで身の回り豪華絢爛に装えば王侯貴族になりし気分か 蝶人


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