mixiユーザー(id:5501094)

2019年12月05日10:37

605 view

岩波文庫で「久米正雄作品集」を読んで

照る日曇る日 第1318回

久米正雄の小説、随筆の他に俳句まで要領よくスクープした1冊である。

小説はあまり感心しないが取るとすれば「受験生の手記」だろうか。
一高受験に失敗した主人公が上京して親戚の家に下宿し、若い女性に恋する。そこに同じ一高を受験すべく弟も上京。賢くて要領のよい弟は見事現役で合格し、恋の勝者となるが、兄はまたしても不合格となって失恋。傷心のあまり自殺してしまうというどこかで読んだことがあるような非恋青春小説で、この大衆性、通俗性こそが久米選手の除こうとしても除けない一大特性であった。

失恋ということでは、彼は漱石晩年の門下生となり、その長女の筆子と婚約するが、筆子が松岡譲に乗り換えたために破談となり、それが一生のトラウマとなったようだ。

「私小説と心境小説」なる文学論?も書いているが、同じことをジャッグルしながら夢中になって論じたてる頭の悪さ?には「微苦笑」する他はない。

若い頃にまだ季語を用いていた河東 碧梧桐の影響で「三汀」の雅号で俳句を作っているが、どの作品も私にはちっともいいと思えない代物であった。

ということで久米選手の真面目は、なんでもかんでも新聞記者のように書き飛ばしたいろんな随筆ということになるが、その中では大正12年9月1日の関東大震災のオンタイムルポルタージュが白眉だろう。彼はこのカタストロフを鎌倉の長谷の借家で体験しており、その地震と津波と火災の描写の正確さと生々しさは、異様なまでの迫真力を備えている。

おそらく今度の大震災も、鎌倉の奥の相模湾を震源地として勃発するだろう。

  横須賀の大滝町の「朝廷」のラーメン美味しスープもみな飲む 蝶人

6 14

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2019年12月>
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031