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2018年12月14日10:38

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エドガー・アラン・ポオ著・八木敏男訳「ユリイカ」を読んで 



照る日曇る日 第1176回

1848年、ポオの最晩年に書かれた散文詩だというので期待して読みはじめたら、紀元2848年に書かれたという触れ込みの「物理的宇宙ならびに精神的宇宙についての論考」だったので驚いた。

序言には「真理の書」、「芸術作品」「一篇の詩」と書かれているのだが、いきなりニュートンの物理学やケプラー、ラプラスの天文学のその当時における最新の学説が紹介され、敷延され、清濁併せ呑まれ、最終的にはポオ選手独自の哲学や宇宙論の補強材料として使い捨てられる。

当時の文明後進国アメリカの一介の詩人・文学者ぐあ、文芸理論ではなく、宇宙の創造、進化、本質について、まるで第一線の物理学者・天文学者のように「理路!?整然?!」と語り尽くす。こちとらは子供の時から理系はカラキシ駄目だから、何が何やら分からないままに図表まで添えられた大論文を目で追うしかない。

そして原始粒子の絶対的単一性の吟味から開始された哲人的考察は、広大無辺の太陽系、銀河系、宇宙の構造の因果律の直観的把握を経て、「聖なる存在者」と遭遇し、ちっぽけな人間は、空に輝く星もろとも神とひとつになって、永遠のいのちの律動を体感するにいたるのである。

ポオは最後に、「すべては、いのち、いのちのうちなるいのちであって、小なるものは大なるもののうちにあり、そしてすべては精霊のうちにあることをゆめ忘れたもうな」と綴って、この空前絶後の「散文詩」の筆を置くのであるが、その瞬間、おそらくかのアルキメデスと同様に、「Eureka(エウレカ 我見いだせり!」と叫んだことだろう。

  ユリイカとヤリイカは相異なるが距離の2乗に反比例して惹きつけられる 蝶人


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