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2022年05月12日15:55

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居場所を失くしたすべての人へ「JR上野駅公園口」

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昭和8年、福島県相馬郡の貧乏な家に生まれた男は、生涯を家族の為に働き続けた。
結婚してからは出稼ぎの為に上京、ひたすら送金し、たまに帰っても息子や娘が懐くことはなかった。
還暦を迎えて48年の出稼ぎ生活を終え、平穏な暮らしに入ろうとしたところで、妻が65歳で急逝。
男は家を出て、上野公園のホームレスとなった。その後、故郷は東北大震災の津波に呑み込まれた。

”自分は悪いことはしていない。ただの一度だって他人様に後ろ指を差されるようなことはしていない。ただ、慣れることができなかっただけだ。どんな仕事にだって慣れることができたが、人生にだけは慣れることができなかった。
人生の苦しみにも、悲しみにも…喜びにも…”

上皇と同じ年の同じ日に生まれた男。
天皇と同年同日に生まれ、浩一と名付けられた長男は、21歳で急逝してしまう。
ホームレスとなって暮らす上野公園では、時々「山狩り」と呼ばれる特別清掃が行われた。
天皇家の人々が博物館や美術館を観覧する前にコヤを畳み、公園の外に出なければならないのだった。

”そうやって人生は続いていく。暦には昨日と今日と明日に線が引かれているが、人生には過去と現在と未来の分け隔てはない。誰もが、たった一人で抱え切れないほど膨大な時間を抱えて、生きて、死ぬー。”

「東京オリンピックの前年、出稼ぎのため上野駅に降り立った男の壮絶な生涯を通じ描かれる、日本の光と闇……居場所を失くしたすべての人へ贈る物語。東北から出稼ぎに上京した一人の男性がホームレスとなった人生を、上野、天皇陛下、震災をからめながら描かれた作品」(amazonから)
しかし、この寂しい男にも、結婚した時、懐妊の知らせを受け取った時、そして子供が生まれた時、たまに帰った折に懐いてくれないながらも無心に眠る子供たちの寝顔を見た時、喜びに輝く瞬間があったのだと思いたい。
なんとも物悲しい物語です。
全米図書賞受賞。

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