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2022年05月02日09:54

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「掃除婦のための手引き書」ルシア・ベルリン作品集

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レイモンド・カーヴァーも影響を受けたというこの人の本を、楽しみにしていました。
2020年本屋大賞「翻訳小説部門」第2位。

なんとまあ、物凄い人生を送った人です。
訳者後書きによると1936年アラスカに生まれ、鉱山技師だった父親の仕事の関係で、アメリカの鉱山町を転々とする。
テキサスの母の実家に移り住んだ時には、祖父も叔父も母もアルコール中毒という環境。
アメリカでは下層階級だったのに、父親の転勤でチリに行ったらいきなり上流階級の暮らし。
ニューメキシコ大学在学中に最初の結婚、その後3度の離婚を経験し、高校教師、掃除婦、電話交換手、看護師などしながら、シングルマザーとして4人の息子を育てる。
アルコール中毒に苦しみながら小説を発表、最終的にコロラド大学の教授となるが,
2004年癌で死去。
彼女の作品は死後10年を経て再発見され、近年、評判になっているのだそうです。

この短編集は訳者によると、ほぼすべてが彼女の実人生から材を取っているのだと。
鉱山町で過ごした幼少期、テキサスの祖父母の家で過ごした少女期、お屋敷で過ごしたチリのお嬢時代、4人の子供を抱えたブルーカラーのシングルマザー期、メキシコで癌で死にゆく妹を看取った日々。
驚くほどに起伏に満ちた人生を短編に切り取りながら、彼女の文章は何処か冷めていて、ユーモアをたたえている。
「冷徹な洞察力や深い教養と、がらっぱちな、ケツをまくったような太さが隣り合わせている」のです。

祖父母の家で過ごした、暗黒の少女時代を切り取った一場面。
”祖父が酔っぱらうと、捕まって揺さぶられるので、わたしはいつも隠れた。一度は大きな揺り椅子の上でそれをやられた。わたしを押さえつけ、かんかんに焼けたストーブすれすれに椅子が激しく上下し、祖父のものがわたしのお尻を何度も何度も突いた。大声でがなる。あえぐ、うなる。すぐそばには祖母がいて、わたしが「メイミー!助けて!」と叫んでも、座って聖書を読むだけだった”

いやいや、こんな経験をしたら、私だったらもうそれだけで一生苦しみそうです。
しかしこの人はその後、何度も恋愛、不倫、離婚を繰り返し、アルコール中毒を克服し、自分の人生を文学に昇華している。
凄いなあ…
原題は「A manual for cleaning women」といいます。

https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000362905

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