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2021年07月12日13:17

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話題本2冊「傘を持たない蟻たちは」「平成くん、さようなら」

「傘を持たない蟻たちは」
著者はジャニーズ「NEWS」の加藤シゲアキ。
サラリとした軽い感じの幾つかの短編の中で「にべもなく、よるべもなく」が印象的でした。
いつの間にか同性愛に嵌っていった幼馴染のケイスケを、なんとか理解しようとする主人公。
が、理性では抑えられない嫌悪感や複雑な思いを抱えて、次第にケイスケから離れてしまう。
少年特有の純粋さや切なさ、やりきれなさに包まれた短編です。
唯一の理解者(といっても具体的には殆ど話さない関係ですが)として出てくる「根津爺」のキャラがいい。
”僕が漁師になると言った時、根津爺は止めはしなかったが、ただ一言「海で死ぬな」と言った。海上で骨壺を開けると、遺灰は風にさらわれ、空に流れて行った。あまりに早く骨壺が空になったので、根津爺はここに帰って来たかったんだと僕は思った。”という部分が好きです。

タイトルの「傘を持たない蟻たちは」というフレーズも、それを匂わせる内容も、本文の中に出てこない。
「行き詰まりながらも今いるところから抜け出そうとする主人公たちを、如何なる時も歩みを止めない蟻の姿になぞらえてタイトルをつけさせていただきました。厳しい現実と必死に向き合おうとする人々から何かを感じ取ってもらえたら嬉しいです。」ということだそうです。
アイドルがどんな小説を書いたのだろうという軽い興味で読みましたが、著者の名前を知らなくても、十分に楽しめる小説です。

https://tinyurl.com/9s6723b4

「平成くん、さようなら」
社会学者古市憲寿の初小説、芥川賞候補にもなったということで読んでみました。
平成元年に生まれ、平成を象徴する人物としてマスコミに引っ張りだこの小説家、平成(ひとなり)君。
合理的でクールな彼は、恋人の愛(私)と一緒に住んでいるものの、性的接触は好まない。
ある日突然、平成の終わりと共に安楽死をしたいと愛に告げる。
愛はなんとかその決意を翻そうと色々試みるが…

ドリスヴァンノッテンのシャツ、メゾンマルシェラのコート、ラッドミュージシャンのブーツなどブランドもので身を固め、家賃130万円の虎ノ門の高級マンションに住む平成君は、著者を投影しているのか。
ブランドや飲食店や有名人の名前がこれでもかと出てくるのは、昔の田中康夫の「なんとなくクリスタル」を思い出させます。
「彼から安楽死を考えてると打ち明けられたのは、私がアマゾンで女性用バイブレーターのカスタマーレビューを読んでいる時だった」という書き出しには驚きましたが。
お金持ちでクールな若者のライフスタイル紹介本かと思いきや、ラストには一抹の寂しさが漂います。
これが何故、芥川賞候補になったのか、私には最後まで理解できませんでしたが。

https://tinyurl.com/yt3nuptc

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