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mixiユーザー(id:547825)

2019年10月10日21:06

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曽野綾子著「ブリューゲルの家族」

この本は、著者に一人の女性読者が送った25通の手紙という形で構成されています。
ごくごく平凡な女性であるという五十代の女性は、知恵遅れの24歳の、天使のような一人息子と
その息子を人生の汚点だと見なす、エリートの冷たい夫と暮らしています。
ある日、たまたま見たブリューゲルの絵の中に、我が子の姿を見つけたと言います。
それが「ネーデルランドの諺」。

フォト


先月、六本木の「見たことがないブリューゲル展」で私も観た絵。
この絵の真ん中の下あたりに描かれている、大きな樽を抱えた男。
その「愚かしいばかりに膨らんだ頬をして、眼はきょろんと上を向いている」男が
自分の息子そのままだというのです。
この男の絵は、「陽だまりを運ぶ男」と解説にあるのだそうで、
そんな意味のない、しかし温かいことをすることも息子にピッタリだと。
そして彼女は、ブリューゲルの様々な絵に、幸福や不幸、温もりや冷淡を見い出し、
天使のような息子と、心の通わない夫との日常に重ねて行くのです。

ブリューゲルの絵一つ一つに色々なエピソードが書き込まれるのですが
中でも私が特に好きなのは、第11章の「豚の前に薔薇を撒く」。
同じく「ネーデルランドの諺」の中の、真ん中の下の方にいる青いターバンの男。
「豚の前に薔薇を撒く」というのは、無駄な仕事をするという意味なのだそうです。

ある日、女性の息子が行方不明になってしまい、必死に探すが見つからない。
そこへ近所の顔見知りのお婆さんが、隣町にいたという息子を連れて来てくれる。
女性は泣いて喜んで、その老婆に御礼として綺麗なブラウスを買って贈る。
淡いグレイとブルーの花模様で銀色のラインが入っているというそのブラウスを
夫は、あんな婆さんに、豚に真珠だとあざ笑い、
実際、その地味な老婆がその服を着ている姿を女性も見たことはなかった。
その後まもなく老婆は心臓の病で亡くなるのですが、息を引き取る間際に、
あのブラウスを着せてお棺に入れてくれと言ったのだそうです。
「よく似合ったんですよ、あの方。普段は構わないなりしていらしたけれど、
ほんとは顔立ちのいい方でしょう。だからあのブラウスを着て、見違えるほど、
伯爵夫人になったみたいに綺麗だったのですよ」と、その場にいた人の言葉。
しみじみとあたたかい話ではありませんか。
ブリューゲルの絵から広がる、独特の世界を楽しませて頂きました。

「ブリューゲルの家族」 https://tinyurl.com/y49h8ed4

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コメント

  • mixiユーザー

    mixiユーザー2019年10月10日 22:42
    ブリューゲルの絵といえば、現世を皮肉る警句が一杯で、またそこが面白いところですが、そういう心温まるアネクドーテもあるのですね。知りませんでした。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2019年10月10日 23:49
     おそらく、その老婆にとっては、贈ってもらったブラウスが着るのがもったいないほど大切なものだったんでしょうね。
     こういう話が、「豚の前に薔薇を撒く」の章の中に書かれていたということで、そう云えば、『星の王子さま』の内藤濯さんの訳にも素晴らしいものがあったことを思い出しました。
     キツネが王子さまに言った言葉です:「あんたが、あんたのバラの花をとてもたいせつに思ってるのはね、そのバラの花のために、ひまつぶししたからだよ」
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2019年10月11日 00:32
    そのおばあさんが、贈られたブラウスを何度も眺め、そっと触り、そしてまたタンスに大事に仕舞い込む姿が見えるようなお話ですね。
    でも、目を凝らしたのですが、樽を運ぶ男を見つけられず、夜は視力が落ちるせいでしょう。明朝また探してみます。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2019年10月11日 01:22
    曽野綾子が著者というのが驚き。確か、野田聖子議員について、欠陥のある自分の子どもが、こんな高額医療を国民の負担において受けさせてもらっていることに対する、一抹の申し訳なさや感謝が全くないというような批判を書いていたと思うのですけれど。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2019年10月11日 06:27
    いい話ですね。朝からあたたかくなって、元気でました。ありがとう!(*^_^*)
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2019年10月11日 10:58
    > mixiユーザー 

    アネクドーテというかね
    曽野綾子が勝手に作り出した話なのですけれど
    結構しみじみと来ました。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2019年10月11日 11:01
    > mixiユーザー 

    この本では、エリートの夫は悪魔、知恵遅れの息子は天使と
    ハッキリ書き分けられています。

    >あんたのバラの花をとてもたいせつに思ってるのはね、そのバラの花のために、ひまつぶししたからだよ

    いい言葉ですね。
    「星の王子様」大好きでした。
    あの、象を飲み込んだウワバミの絵が大好きでした。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2019年10月11日 11:03
    > mixiユーザー 

    淡いグレイとブルーの花模様で銀色のラインが入っていると具体的な所がよいですね。
    本当に目に浮かぶようです。

    絵の真ん中ほどの、青い三角屋根の小屋のような建物の、左前にいます。
    見つけられましたかしら?
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2019年10月11日 11:05
    > mixiユーザー 

    曽野綾子は敬虔なカソリック信者と聞いたような。
    この本にも、聖書に絡めた話が多く出て来ました。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2019年10月11日 11:05
    > mixiユーザー 

    共感して下さってありがとう!わーい(嬉しい顔)
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2019年10月11日 12:01
    > mixiユーザー 手(パー)
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2019年10月12日 00:28
    ずっと前のことになりますが、友人の先天性の心臓病の娘が7歳でいよいよ危ない感じになって来た時、友人から「お姫様ドレスを買ってきて」と頼まれました。当時は地方都市に住んでいたので洒落た店もなく、散々さがしてブルーの発表会用のようなドレスを手に入れ、7歳の子はとっても気に入ってくれたのです。「退院する時に着ようね」と言っていたのですが結局帰らぬ人となり、そのドレス姿でお棺に横たわっていました。思い出しても涙が出ます。

    曽野綾子はストーリーテラーとしては才能があるのですが、日常の言動が大いに問題ありで、カトリック信者だと言ってほしくないと怒っている人もいます。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2019年10月12日 03:48
    お読みになられたんですね。

    曽野綾子は、亡き母からの、ファンです。

    凄い信仰者だぁと思います。

    私はzooey様お勧めの「愚か者の、タブロー」で「楽園の、カンヴァス」以来久しぶりに原田マハ読み、点知識での松方コレクションが、繋がりました。松方の父も興味深い人物ですが。

    今やはり、おすすめの「リーチ先生」と興味あったのですが読み損なっていた百田尚樹の「カエルの楽園」をどっち先読むか楽しい迷い中。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2019年10月12日 21:18
    > mixiユーザー 

    小さな子どもが亡くなるのは、本当に悲しい。
    青いドレス、そのお嬢ちゃん、さぞ喜んだことでしょう。
    今ならネットで手に入りますが、見つけるの大変だったでしょうね。

    曽野綾子、確認してみたらもう88歳になるのですね。
    彼女の著作は幾つか読んでいますが「神の汚れた手」が印象的でした。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2019年10月12日 21:22
    > mixiユーザー 

    ご紹介ありがとうございました。
    ほのぼのとした本でした。

    「愚か者のタブロー」は未読なんですよ。
    その内読むつもりです。
    楽しい迷いですね。
    私も3〜4冊、いつも同時進行で読んでいますよ。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2019年10月22日 17:46
    私は毎年、有名画家のカレンダーを何種類か買いますが、去年は一つがブリューゲルのものでしたので、興味深く読みました。

    作家本人と作品は分けるべきだ、という考えではあるのですが、曽根綾子は発言が差別的かつ旧時代的でどうしても好きになれない人です。なので、ほとんど読んだことがないのですが、このお話はとても興味深かったです。ありがとうございます。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2019年10月22日 20:48
    > mixiユーザー 

    ブリューゲルの絵は退屈しないので
    カレンダーにはピッタリかもしれませんね。

    曽野綾子について色々な意見があることは多少知っていましたが
    少なくともこの本は、あたたかいものでした。
    こちらこそ読んで下さってありがとうございます。

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