ホーム > mixiユーザー(id:547825) > mixiユーザーの日記一覧 > 「太陽の棘」

mixiユーザー(id:547825)

2019年09月01日20:29

74 view

「太陽の棘」

フォト


サンフランシスコの心療内科のオフィスで、老精神医エド・ウィルソンは
壁に掛けられた海の絵を観ながら、半世紀以上前の沖縄での日々を思い出していた。
彼は若い頃、太平洋戦争終結直後の沖縄へ軍医として派遣された。
幼い頃から美術を愛し、自らも絵筆をとる心優しいエドは、精神を病んだ兵士を診る傍ら、
愛車を乗り回して憂さを晴らし、ある日不思議な場所に辿り着く。
「ニシムイ・アートヴィレッジ」と名付けられたそこは、みすぼらしい掘立小屋の集まりだが
誇り高い沖縄の若き画家たちが集まった美術の楽園であった。
その出会いが彼らの運命を変えて行く…

凄惨を極めた沖縄の地上戦。
終戦直後も食糧難、物資の欠乏、米兵による暴行と、厳しい受難は続く。
そうした中で良家の息子であるエドは、軍医としての任務に携わる傍ら、
本国の親から送られた真っ赤なオープンカーに乗って休日にドライブする。
彼の愛車ポンティアック1948シルバーストリークというのは、こんな感じらしい。

フォト

彼に悪気はなくても、住む家も破壊され、その日の食べ物にも事欠く沖縄の人々が
そのこと自体に傷つけられたことは想像に難くない。
そしてそうしたことは、彼らの友情が続く中にも多々起きるのです。
悪気がなくてもどうしようもなく傷つけることが、あるのですね。

しかし貧しい沖縄の画家たちは、決して卑屈にならなかった。
そして彼らの類いまれなる才能をエドは素直に認め、彼らの絵を買い取り、
本国から絵の具などの材料を取り寄せては彼らに与えるのです。
そして同時に、彼らからは量り知れない芸術への情熱を受け取るのです。
画家の一人ヒガが米軍少佐から受けた残酷な仕打ちは、沖縄の悲劇を象徴しているのかも。
しかしそれを乗り越えようとする人々の力強さ、
芸術の力の重み、そして友情のあたたかさを、この本全編から感じ取りました。

読み終わった後に調べて分かったのですが
「ニシムイ・アートヴィレッジ」というのは戦後の沖縄に実存した芸術村で
この本の表紙の表も裏も、そこで描かれた実際の絵なのだそうです。
表紙は精神科医エドの顔。凛として意志の強そうな、しかし優し気な眼差し。
裏表紙はそれを描いた画家タイラの自画像。丸い眼鏡の奥の強い意志をたたえた眼。。
エドが本国に持ち帰って大事に保管していた絵を借りて
こんな風に近年にも展覧会が行われたのだそうです。

フォト


本書の序文。
”「私たちは、互いに、巡り合うとは夢にも思ってなかった」
None of us was preparedto meetースタンレー・スタインバーグ”
このスタンレー・スタインバーグ医師こそが、エド・ウィルソンその人だったのですね。
読み終わってすべてが腑に落ちました。

「太陽の棘」 https://tinyurl.com/yymz4t8j
19 17

コメント

  • mixiユーザー

    mixiユーザー2019年09月01日 21:52
    余り語られてこなかった、敗戦後の沖縄の一面を物語る優れた作品のようでうね。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2019年09月01日 22:28
    単行本刊行時に読みました。原田マハさんはドナルド・キーンさんをエドのモデルにした、と語っていましたね。
    もちろん経歴等はかなり異なりますが、キーン氏も戦時中、沖縄にいましたから。彼は兵士の日記の翻訳をしたりしていたそうですが。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2019年09月01日 23:21
     ポンティアック(Pontiac)が出てきましたが、今ではこのブランドはないそうです。9年前に、GM(ゼネラル・モーターズ)が、ポンティアック・ブランドの終了を正式に発表したからです。
     実は、亡父が在米時に乗りまわしていたのが、1961年製のポンティアック・カタリナでした。
     久しぶりにポンティアックの名前が出てきたので、懐かしかったです(^^♪
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2019年09月02日 10:59
    > mixiユーザー 

    はい、作家の佐藤優が、沖縄の終戦を書いた本の中で一番好きだと絶賛していました。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2019年09月02日 11:00
    > mixiユーザー 

    予備知識なしで読んだので
    本当のことだったと後で知って驚きました。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2019年09月02日 11:04
    > mixiユーザー 

    原田マハは、スタンレー・スタインバーグをモデルにしたと言っているようですが。
    ドナルド・キーンをも投影したのかしらね?
    https://www.shosetsu-maru.com/www.quilala.jp/fbs/interview14_07.html
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2019年09月02日 11:04
    > mixiユーザー 

    原田マハは、スタンレー・スタインバーグをモデルにしたと言っているようですが。
    ドナルド・キーンをも投影したのかしらね?
    https://www.shosetsu-maru.com/www.quilala.jp/fbs/interview14_07.html
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2019年09月02日 11:07
    > mixiユーザー 

    ポンティアック、そうでしたか。
    お洒落なお父上だったのですね。
    それがね、私のFBフレンドには妙にクラッシックカーに詳しい人がいるのですが、
    この写真は少なくとも50年代以降のものだって。
    そんなこと知らんがな…顔(げっそり)
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2019年09月02日 12:06
    > mixiユーザー モデル自体はその方だと思います。キーン氏は沖縄派兵の日本通、というモチーフを借りました、みたいなことを言ってました。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2019年09月02日 14:00
    > mixiユーザー 手(パー)
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2019年09月02日 22:47
     お洒落だなんて、とんでもない(笑)
     1971年から乗りまわしていたので、購入時すでに10年モノとなっていた中古車で、よく故障しました。
     一応、同一車種はこんな感じです→https://mixi.jp/show_diary_picture.pl?owner_id=22841595&id=1959108059&number=213が、これはメンテナンスのいいものを写真写り良く撮ったから、こう見えるだけでして、うちのはあちこち錆びついたぼろっちい白の車体でした。
     まぁ故障することも見込んでわずか150ドルで購入した車なので、あまり文句はいえません。
     実際、案外よく働いてくれました。ナイアガラの滝とかワシントンDCに行けたのもこの車のおかげでした。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2019年09月03日 00:43
    原田マハさんの本は以前にも紹介しておいででしたね。
    この本も面白そう!
    全く知らない作家さんなので、ぜひ読みたいと思っています。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2019年09月03日 12:51
    > mixiユーザー 

    なるほどです。
    ありがとうございます。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2019年09月03日 12:54
    > mixiユーザー 

    150ドル!
    無論、ドルの価値が今とは違い時代でしょうが
    それでもお安かったのですね。
    きっつぁんさんも御父上と一緒にアメリカにお住まいでいらしたのですか?
    ワシントンDCは昔、観光で行きました。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2019年09月03日 12:55
    > mixiユーザー 

    1冊読むと次のも読みたくなって
    今の所、原田マハが続いております。
    美術がお好きなtamaさんだったら、絶対面白いと思いますよ。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2019年09月03日 18:25
     丁度1ドル=360円の固定相場制の時代から変動相場制への移行期でした。
     2年間、一家でフィラデルフィアに住んでました。
     亡父が比較的高年齢で留学してくれたお蔭で、金魚の糞みたいに付いて行っただけの私は当時のことも割と鮮明に覚えてていて、時々、日記にも書いてます。
     当時は何でもアメリカ・ファーストの今と違って、ベトナム戦争で失敗したり、公民権運動で黒人の発言権も高くなったりして、アメリカの保守派がその分自信を失っていた(謙虚になっていた)せいか、外国人にとっては住みやすい社会でした。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2019年09月03日 23:12
    > mixiユーザー 

    そうでしたか。
    フィラデルフィアというタイトルの映画もありましたね。
    その頃のことを書いた日記を楽しみにしています。

mixiユーザー

ログインしてコメントを投稿する