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2019年07月27日15:17

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「ガラスの城の子どもたち」

先日観た映画「ガラスの城の約束」の原作を読んでみました。
「ニューヨーク・マガジン」の人気コラムニストのジャネット・ウォールズが
衝撃的な自身の半生を赤裸々に綴り、全米ベストセラーとなった作品。
2006年、アメリカ図書館協会アレックス賞を受賞。

365ページの長編で、2時間の映画では描き足りなかった詳細を知ることができました。
思った通り、映画よりも酷い生活実態が克明に。
両親の育児放棄ぶりは凄まじく、4人の子供たちはろくに食べ物も与えられない。
学校にお弁当を持って行くこともできず、ランチの時間にはトイレに隠れ、
級友のお弁当を盗み食いしたり、学校のゴミ箱から食べ残しを漁っていたと。
お風呂にも入れず、洗濯もして貰えず、そんな子供たちは学校でも散々苛められる。
しかし子供たちは親に一言も相談せず、自分たちだけで耐え、或いは闘って行く。

一家があちこち放浪した末に(借金取りから逃げ回っていたともいえる)、
父親の故郷、ウエストバージニアのウエルチに落ち着いたところで
両親が前の居住地フェニックスにいったん戻るシーンがあります。
その時の子供達のやり取りが悲しい。

”両親の乗った車が走り出すと、ブライアンがつぶやいた。
 「ちゃんと帰って来るかな?」
 「あたりまえじゃない」そうは答えたものの、私もブライアンと同じ思いだった。
 その頃、私たち子どもは次第に両親の負担になっているように感じられた。(中略)
 きっと戻って来ると信じよう、そう自分に言い聞かせた。信じていないと、
 両親が戻って来ないような気がした。このまま捨てられてしまうのかもしれないと。”

こんなことを13歳の子供に思わせる時点で、親として許せないと私は思うのです。

あるいは、その少し後のこんなシーン。
”その日一日、母はソファベッドの上で毛布を被ったまま、こんな人生は耐えられないと泣きじゃくっていた。
 毛布を頭に引きかぶり、さも自分が悲劇の主人公であるかのように振舞い、5歳児のよ  うに泣きじゃくっている、この女が自分の母親だなんて思いたくもなかった。
 母はこの時38歳、もう若くはないが年寄りでもない。
 あと25年もすれな自分も母と同じ年齢になるのだと、私は自分に語りかけた。
 その時自分がどんな暮らしをしているかは分からないが、母のようにだけはなるまい。
 こんな辺鄙な山間部の、暖房もないあばら家で目を泣き腫らしているような人間にだけはなるまい、そう心に誓い、教科書を手に家を出た。”

父親はアル中の無職ではあるが博識で哲学的でもあり、母親は教員免許も持ち、
だから無知無教養という訳では決してない。
子供達への深い愛情も持っているが、しかし親としての責任を果たすことができない。
そんな親を、ジャネットがどうやって許すことができたのか、
それが知りたくて読んでみたのですが…

親の無節操ぶりに、余計に腹が立っただけでした。
4人の子供達は生き永らえるために結束し、酷い環境から脱出するために
バイトと勉強に明け暮れ、次々と自立して行き、幸せな人生を勝ち取った。
そうした子供達を生み出したということが、親としての唯一の功績だったと言えるか。
三女のモーリーンだけは、こちらが書かれた時点では低迷しており、
このネグレクト、機能不完全家庭の犠牲者であったようです。

「ガラスの城の子どもたち」 https://tinyurl.com/y586oszx
映画についての日記 https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1972014661&owner_id=547825

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