mixiユーザー(id:547825)

2015年12月22日12:54

543 view

「あの日の声を探して」

フォト


感動的だった「アーティスト」のミシェル・アザナヴィシウス監督の作だというので
楽しみにしていたのですが、今年の春、単館上映で見損なってしまった作品、
ようやくDVDで鑑賞。

1999年のチェチェン。
小さな古い村を無差別に攻撃していくソ連兵の一人が撮っているビデオカメラの画面から
話は始まります。
「『プライベートライアン』じゃない、これが現実の戦争なんだ!」という台詞から
まだ新兵のようだと分かります。
中年の農夫をテロリストと決めつけ、問答無用にその妻ごと射殺する。
殺された両親に絶叫してすがりつく娘は兵士たちに連れて行かれたようですが
その場面はそこで終わります。

フォト

チェチェンに住む9歳の男の子ハジは、目の前で両親を殺されたショックで
口が利けなくなってしまう。
乳飲み子の弟を抱えて一人で歩き出すが、壊されていないチェチェン人の家先に
その子をそっと置く。
物陰に隠れて、赤ん坊がその家の人に抱きかかえられるのを確認して
泣きながら、また一人であてもなく歩いて行く。
9歳といえば、日本では小学校3年生か。
我家の息子たちは、ポケモンやゲームに夢中だった頃だと切ない思いで見ていると
ハジは彷徨った挙句、EU職員のキャロルに出逢って保護されることになる。
哀れに思ってキャロルは世話をするが、ハジは中々心を開こうとしない。
ハジの身内を探そうとするも、一言も話さないのではどうしようもない。
キャロルはまた、チェチェンの悲惨な状況を必死にEUに、世界に訴えようとするが
殆ど無視されて苛立っていた。

フォト

場面変わって、ソ連の地方都市。
友人と女の子のことなどを話ながら街中を歩いていた19歳の青年コーリャは
マリファナ所持という軽微な罪で路上で捕まり、軍隊に入れられる。
上官、仲間からの凄惨ないじめ、しごきで、血だらけになるまで痛めつけられる。
心根の優しい普通の青年が日々非人道的な仕打ちを受け、残虐な兵士へと変わって行く。
やがてコーリャは前線へと送られ、新兵として参戦する。
片っ端から敵を殺し、遺体から金目の物、腕時計や財布などを略奪する。
ビデオカメラを見つけて喜ぶコーリャ。

そして話は冒頭につながるのです。
両親を殺され、姉や弟とも生き別れになったハジの話と
殺人鬼に変貌する青年コーリャの話がどう繋がるのだろうと訝しく思っていましたが
最後で見事に繋がって、あっと驚かされたところで唐突に幕は降ろされる。
なんとも重苦しい気分に包まれて。
そりゃ、人を殺すのが戦争だもの。
略奪だってレイプだっていじめだって生き別れだって、何だってありなのだと
戦争の恐ろしさに改めて身震いするばかりです。

原題は「The Search」。
今年観た中の、ベスト5に入る映画です。
16 10

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2015年12月>
  12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  

最近の日記

もっと見る