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2020年06月04日17:24

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米中対立激化 安倍首相の中国への怒りは本物か?

 下記は、2020/06/04 付の Forbes に寄稿した、牧野 愛博 氏の記事です。

                記

トランプ大統領が6月のG7を9月に延期し、露骨な「中国包囲網」を明確にし始めた。中国が香港への統制を強化した「国家安全法」に反発し、アメリカが香港に認めている優遇措置の廃止手続きを発表。アメリカVS.中国の対立がエスカレートするなか、関心が集まっているのが日本の安倍首相の言葉だ。公式声明のあとで、非公式の「追加説明」が外交ルートで行われているという。

中国の全国人民代表大会(国会)が5月28日、国家安全法を香港に導入する「決定」を採択した。日本政府は直ちに、菅義偉官房長官がそれまで記者会見で使っていた「強い懸念」という表現を「深い憂慮」に切り替えた。

外交上のレトリックでは、「懸念」→「憂慮」→「遺憾」→「非難」という順番で、表現が強くなっていく。複数の関係者の話によれば、この表現は、様々な国際環境を頭に入れたうえで、周到に練られた結論だった。

まず、香港は「一国二制度」ではあるものの、中国の一部である事実を、日本も認めている。そうである以上、抗議という形式は取りづらい。政府関係者の1人は「中国が日本人を抑留した問題や、尖閣諸島の日本領海を侵犯している問題とは区別すべきだ。香港問題でやり過ぎると、中国が日本の国内問題に首を突っ込んでくる名分を与えかねない」と語る。

そして、最大の友好国である米国への配慮も加えた。新型コロナウイルス感染問題への対応に批判が広がり、経済不況も深刻になりつつあるトランプ米政権は、11月の大統領選を控え、中国叩きに狂奔している。トランプ大統領は5月29日、中国と香港の当局者への制裁や、貿易などで香港に与えた優遇措置の停止などの方針を明らかにした。米政府は当然、日本にも同調を求めていた。

お隣の韓国が「事態を注視する」といった表現にとどめたのに対し、日本は秋葉剛男外務事務次官が28日、中国の孔鉉佑駐日大使を外務省に呼んで「深い憂慮」を申し入れた。形式として強い態度を示すことでバランスを取ったわけだ。

日本政府の対応について、自民党の一部などから、更に強い対応を求める声が出ている。だが、表現を「憂慮」と、やや弱い水準にとどめたのは上述したような綿密な計算に基づいた結果だった。今後の香港情勢を見極めて、徐々に表現を強くしていく余地を残し、外交戦術の選択肢を確保する狙いもあった。いきなり、中国に対する制裁を口にしたトランプ政権のやり方に全面的に付き合う必要はないという計算も働いた。

そして、肝心の安倍晋三首相の中国に対する視線も厳しくなっているという。香港問題について外務省や国家安全保障局などからの説明を聞くとき、首相からはしばしば中国を批判する言葉が口をついて出るという。周辺は、内閣支持率の低下や、中国への厳しい対応を求める自らの支持層からの突き上げが原因ではないかと噂し合っている。

もともと、安倍首相自身、日本人拉致問題で名を上げてきただけに、人権問題には強い関心を持っている。昨年12月の日中首脳会談でも、安倍首相は「香港の繁栄は中国の利益でもあり、日本や世界の利益につながる。香港問題の解決に努力してほしい」と訴えた。この言葉に、習近平主席は辟易とした態度を見せている。

安倍首相は5月25日の記者会見で、新型コロナウイルスの感染拡大について「中国から世界に広がったのは事実だ」と述べた。この発言も、延期になっている習近平中国国家主席の訪日問題とは切り離し、中国に必要以上の政治的な配慮をしない姿勢を示したものだったのかもしれない。中国外務省の趙立堅副報道局長も26日の記者会見で、安倍首相の発言について「ウイルスの発生源を政治問題にして、汚名を着せることに断固反対する」と反発していた。

ところが、ここで奇妙な現象が起きた。安倍首相の会見を受け、共産党機関紙・人民日報系の新聞「環球時報」が社説で「安倍首相は同盟国であるアメリカに配慮しつつ、中国を刺激することを避けた」と説明した。関係国からは、「趙局長の反応が正しいのか、環球時報の社説が本当なのか」「中国は、安倍首相に腹を立てているのか、立てていないのか」などと、中国の真意を訝る声が相次いだ。

こうしたなか、中国は、日中関係の行方を注視している関係国に対し、安倍首相周辺から、首相の記者会見についての追加説明があったと非公式に説明しているという。追加説明の詳細は明らかになっていないが、おおまかに「安倍首相は、中国から広がった、とは言ったが、中国が発生源だ、とは明言していない」「首相の発言はなお、中国に配慮したものだから、中国も無用に腹を立てる必要はない」という趣旨の説明だったようだ。

ただ、日本政府は3月以降、閣議了解などで「中華人民共和国で発生した新型コロナウイルス感染症について、感染が世界的に拡大している」という表現を繰り返し、使っている。上述した首相周辺の説明が事実だとしても、極めて政治的な言い回しだったと言える。

もともと、日中関係の改善や習近平中国国家主席の訪日推進は、安倍政権のレガシー(業績)づくりを重視した首相官邸の側近らが、慎重な態度を示した外務省を押し切って進めた政策だった。中国が最近、安倍首相の発言に対して見せた異なる対応は、日本政府内の足並みの乱れをそのまま映し出した結果だったとも言えそうだ。

安倍首相の中国に対する怒りが本当であれば、いずれ、側近たちも首相に足並みをそろえるだろう。トランプ大統領の乱暴な動きが心配だが、日本は今後、日米関係を基軸に中国と是々非々で付き合うという、本来の対中戦略に立ち戻っていくように見える。実際、習近平氏の訪日を巡る調整は完全にストップしている。日本政府内で「習氏の年内訪日」を予測する声は皆無だ。そうなれば、今回の環球時報のような、「日本は中国に配慮した」というような反応も減っていくだろう。

安倍政権は今後、首相側近らを中心に一時期打ち出した「日中関係改善戦略」に、一体どんな外交哲学があったのか、という総括を迫られるかもしれない。

http://www.msn.com/ja-jp/news/national/%e7%b1%b3%e4%b8%ad%e5%af%be%e7%ab%8b%e6%bf%80%e5%8c%96-%e5%ae%89%e5%80%8d%e9%a6%96%e7%9b%b8%e3%81%ae%e4%b8%ad%e5%9b%bd%e3%81%b8%e3%81%ae%e6%80%92%e3%82%8a%e3%81%af%e6%9c%ac%e7%89%a9%e3%81%8b/ar-BB14ZYpb
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