下記は、4月3日 付の 産経抄 です。
記
日本人が外出時にマスクをするようになったのは、1910年代に世界中で猛威をふるったスペイン風邪がきっかけである。政府が予防のために着用を呼び掛けたからだ。実は欧米でも奨励されていた。
▼米国では多くの地域で、マスクなしで公共の交通機関が利用できなかったほどだ。もっとも、予防効果に乏しいとの認識が広がり、廃れていった。では、なぜ日本だけ定着したのだろうか。
▼江戸時代までは、風邪=風であり、玄関にお札を貼って追い払おうとした。明治以降も残ったこうした伝統的な考えが背景にある、と社会学者の堀井光俊さんは指摘する。お札の代わりというわけだ。現代でも社会が危機に直面するたびに、不安を吸収する機能を果たしてきた(『マスクと日本人』)。
▼こうした日本のマスク文化は外国人にはなかなか理解されなかった。スギ花粉を防ぐためだと知らず、日本の深刻な大気汚染を象徴していると論じた欧米メディアの記者がいた。東京電力福島第1原発の事故の後は、放射能対策、との誤解も生まれた。
▼新型コロナウイルスの感染拡大が止まらなくなって、ようやく米国もマスクの効用に気づいたようだ。ニューヨーク・タイムズ紙は1日付の紙面で、「マスクの作り方」と題した記事を載せている。では本家本元の日本はどうか。
▼確かに、マスクの品薄状態は相変わらず続いている。だからといって、布製マスク1億枚を購入し、全世帯に2枚ずつ配布するという、政府の発表には耳を疑った。患者の急増で医療現場は機能不全に陥りつつある。資金繰りにあえいでいる中小企業の多くは、悲鳴を上げている。優先すべき政策は山のようにある。首相の決断を押しとどめるブレーンはいなかったのか。
https://special.sankei.com/f/sankeisyo/article/20200403/0001.html
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