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2020年02月18日15:27

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厳格な定年規定の意味 長戸雅子

 下記は、2020.2.18 付の 【一筆多論】 です。

                       記

 「なぜこんなことが起きるのだろうか」

 夜空にそびえたつソウル中央地方検察庁の建物を見上げながらため息が出た。

 2014年8月。真夏なのに肌寒かった。その年の韓国は冷夏だった。

 朴槿恵(パク・クネ)大統領(当時)の名誉を傷つけた疑いがあるとして加藤達也産経新聞ソウル支局長(同、在宅起訴後、無罪が確定)が同地検から1回目の聴取を受けていた。

 関係者の一人として現地で対応に当たったが、「大統領案件」として政権と一体になって動く検察にうす気味悪いものを感じた。この過程で韓国では政権が代わると検事総長ら検察幹部がガラリと入れ替わると聞いて驚いた。検察の最大のよりどころであるはずの「中立性・独立性」はそこになかった。

 ソウルから戻って間もなく霞が関の検察庁周辺に所用で出向いた。ほぼ門前払いをされた記憶しかない役所の庁舎が少し好ましく思えた。無謬(むびゅう)とまではいえないかもしれないが、「政治との距離」においては国民の信頼に足る組織と思ったからだ。

 政府は1月末、東京高検の黒川弘務検事長(63)の定年延長を決めた。検察庁法22条では定年を検事総長は65歳、総長以外の検察官は63歳と定めている。黒川氏は2月7日で定年だったが、国家公務員法(国公法)の定年延長規定に基づき、8月7日まで勤務が延長された。

 検察庁法に定めのない検事長の任期延長は過去に例がないが、政府は国公法の「退職により公務の運営に著しい支障が生ずる」と認められる場合に当たるとし、ゴーン事件など「国を挙げた戦い」(検察幹部)を抱える中で「調整力などに優れた黒川氏の手腕が引き続き必要」などと説明した。

 もっとも異例の措置は今夏の退任がささやかれる稲田伸夫検事総長の後任に黒川氏をすえるためのものとされており、これが事実なら政府が「検察トップの人事に介入した」といえる前例をつくることになる。

 「検察官に国公法の定める定年規定を適用するのは法的に問題がある」と語るのは検事や弁護士らだ。

 定年規定を含む検察庁法は裁判所法とともに戦後間もない昭和22年に成立した。司法権の独立、それと不可分の関係にある検察官の独立が極めて重要と考えられたからだ。かたや一般の国家公務員の定年やその延長などを定めた改正国公法が成立したのは30年以上も後の昭和56年だ(施行は60年)。

 国公法改正時の衆院内閣委員会では当時の人事院任用局長が「検察官と大学教員には国公法の定年制は適用されない」と度々明言、それまで定年制度がなかった国家公務員にだけ適用することを明らかにしている。以後、これを翻す答弁などは記録されていない。

 法曹関係者はいう。「検察庁法が定年退官日を厳格に定め、延長の規定もないのは司法の公正さを保つため。検察官の人事に権力が恣意(しい)的に介入することを防ぐためなのです」と語る。

 検察庁法22条は国公法に優先するとの見解だ。つまり22条は検察官の独立と密接不可分といえる。

 黒川氏の任期延長は法務省側からの要請という。それが事実なら法律を盾とする組織で前例のない判断と決断がどのようになされたのか。法務省の説明が聞きたい。(論説委員)

 https://www.sankei.com/column/news/200218/clm2002180005-n1.html
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