下記は、2020.1.20 付の 【古典個展】 です。
記
年が明けるや、いろいろな事件が起こった。わけても米国とイランの対立は不気味である。
それと言うのも、単なる戦争の話に終わらないからである。中近東・ヨーロッパ地域は、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教の諸対立が根底にあり、儒教・仏教系の日本人である老生は、その諸対立の真相がよく、いやまったく見えない。
だから、ただ〈一つの事件〉としてしか受け取れず、その歴史性・文化性については、残念ながら体感がない。
しかし、東北アジア(日本・中国・朝鮮半島など)についてならば、目に見えない場合でも、その背後についての見通しは、ある程度可能である。
例えば、この1年来、米中貿易摩擦が激しくなっているが、次第に中国の「正体」が現れつつある。
それは、どのようなものか。
本紙昨年12月7日付に、ある小さな記事があった。
その見出しを引くと、「米国産の大豆・豚肉 中国、追加関税除外」とある。米中両国が、輸出入問題について、互いに相手国からの輸入物産に対して、関税額のつり上げ競争をしていた。相手に負けられないからである。
ところがなんと、前引記事によれば、米国からの輸入である大豆・豚肉に対しては、つり上げ対策をしない除外措置を中国がとったと言うのである。
記事は、「米国による対中制裁関税の発動が今月(昨年12月)15日に迫る中で、中国が歩み寄りの姿勢を見せた可能性がある」と解説する。
その後、米中両国が「第1段階の合意」なるものに達し、問題を一時先送りにしたことは、ご承知の通り。
だが、前引記事の背景にあるのは果たしてそれだけか。
中国は、農産物や食肉−こういう分野は中国が得意というイメージが一般にある。特に日本人に。
しかし、それは大いなる誤解である。つまり、農業国としての力は弱体化している。
中国大陸は長江を境にして、北は小麦、南は米が主食。
中国は、小麦の生産国であると同時に輸入国でもある。
人口の増加により、世界中で穀物の奪い合いが始まっており、14億人の国民を食わせねばならない中国は、いきおいその先頭に立たざるを得ない。
中国の小麦の輸入相手国には、オーストラリア、カナダなどと並んで米国がある。
もし、米国が中国への小麦輸出をストップすると困る。そうならないように、中国は大豆・豚肉への関税を増やさずトランプ氏のご機嫌を取ったのである、と観察すべきだろう。
中国は、古来、多くの人民を食べさせるだけの十分な主食生産ができずに今日に至り、今や北方は荒れ果てている。
いくら軍事力を高めても基礎ができていない砂上の楼閣である。
王符の『潜夫論』浮侈(ふし)篇に曰(いわ)く、一夫(いっぷ)耕さざれば、天下に必ずその饑(うえ)を受くる者あり…今、世を挙げて農・桑を舎(す)てて…と。(かじ のぶゆき)
https://www.sankei.com/column/news/200120/clm2001200004-n1.html
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