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2020年01月21日13:45

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元パナソニック開発者がアイリスオーヤマに入社して驚いた「超効率経営」

 下記は、2020.1.21 付の ダイヤモンドオンライン の記事です。

                        記

大手家電メーカーが品目数を減らし始めた2009年に家電事業へ本格参入。白物家電でラインアップを広げた後、19年には黒物家電(テレビ)へも本格進出を果たし、総合家電メーカーへまい進するのがアイリスオーヤマだ。特集「パナソニック老衰危機」(全10回)の番外編では、元パナソニックかつ元アイリスオーヤマの家電開発担当者、アイリスオーヤマ家電開発部長の2人へのインタビューをお届けする。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)


大手家電から中途積極採用で

国内家電業界の台風の目に

 不採算などの理由で三菱電機(洗濯機)、日立製作所(テレビ)、東芝(白物家電、テレビ)など、大手家電メーカーが次々と品目を減らす中、逆に「家電ラインナップ拡大中」と我が道を進むのが、アイリスオーヤマだ。

 よく知られているように、アイリスオーヤマの家電開発部員の多くは大手家電メーカーなど同業他社からの中途採用者であり、約100人のうち7割を占める。大手で早期退職募集があったため移ってきた人や、やりがいを求めて移ってきた人など、背景はさまざまだ。パナソニックやパナソニックの下請け会社からの中途採用者は現在約10人ほどだという。

 アイリスオーヤマは開発拠点にこだわりを持つ。「もともとの開発拠点は本社がある宮城県だけ。募集をかけても勤務地が大きく変わることになるため、人が集まらなかった」と同社幹部。そこでパナソニック、旧三洋電機、シャープの各本社からほぼ等距離のところにある大阪・心斎橋に14年、大阪R&Dセンターを開設。東京R&Dセンターも18年、東芝、日立製作所、三菱電機、ソニーの各本社から近い東京・浜松町に開設した。中途採用者に寄り添う姿勢を徹底したのだ。

 家電事業の売上高は約1000億円と、まだまだ大手家電メーカーの背中は遠い。食品事業、BtoB事業などグループ全体で22年度売上高1兆円(19年度5000億円)を狙っており、当然家電事業でもさらなる成長を目論んでいる。

 以下、アイリスオーヤマ関係者へのインタビューを通じて、同社の家電事業の強みを紹介する。


アイリスは給料2/3、開発部員1/5

パナと段違いのコストダウン効果

――パナソニックからアイリスオーヤマに移って驚いたことは何でしょうか?

 人件費の違いによるコストダウン効果です。だいたい1人当たりの給料がパナソニックの3分の2。さらに開発部門の人員がパナソニックのざっと5分の1。あるプロジェクト開発でパナソニックでは50人かかるところをアイリスオーヤマでは10人で、という感じでしたね。大手は仕事をしない人がいらっしゃる(笑)。一方、アイリスオーヤマにはいません。各人が仕事をしないと回らないからです。

 アイリスオーヤマは中途採用が多いので一人一人のノウハウがすごい。一人一人の責任が重く、領域が広く、その結果、知識は益々広く深くなります。

 会社としての意思決定が速く、「あかんなー」と思ったら止める柔軟性もあります。一番ひっくり返すのは……、大山健太郎会長、大山晃弘社長(笑)。反対に大手は内部で時間をかけて「決定」を積み上げていくので、なかなか後戻りができません。

――卓上IHコンロ対面操作式、両面ホットプレートなど、アイリスオーヤマが「とがった家電」を出せる源泉は何なのでしょうか?

 とがった家電に見えるだけです。大手家電メーカーもユーザー視点に立った機能を搭載した家電は多い。ではなぜアイリスオーヤマの家電がとがって見えるのか。訴求点がシンプルで分かりやすいのです。そして、“値ごろ感”を外さない。

 アイリスオーヤマはマーケットリサーチをしても信じません。最終的には開発者の意欲と経営幹部の勘を大事にします。

 パナソニックにはご飯をおいしく炊くためにでんぷんだけ研究する人とか、お釜の材質を研究する人とか、ノーベル賞受賞の吉野彰さんみたいな人たちがいました。一方、アイリスオーヤマは基礎科学的大発明を狙っていません。「これだったらなんとか開発できるんじゃないの。お客さんも困っているし」といった感じで、ライトな辺りを攻めています。

――大手家電メーカーは同質性競争(機能の横並び競争)に陥っているとよく聞きます。

 スペック表(ダイヤモンド編集部注:大手家電量販店に展示された家電に添えられている「△△機能=○、□□機能=なし」などと書かれた表)分析はアイリスオーヤマもしています。ただし競合他社と比較して足りないところを補うのではなく、全体の傾向として参考にし、極端に負けている機能がないようにしています。

 大手家電メーカーは機能の横並びでも負けないようにしつつ、特長を出す工夫を行っているのに目立たない。それはこのスペック表が原因。だってスペック表は○か×かしか評価はないですから。実際は同じ○でもレベルが違う。特にパナソニックはすごい。アイリスオーヤマはスペック表なら×ばかりでしょうね。でもとがった機能を訴求してお客さんに、「これがほしい」と指名買いしてもらえる家電を世に出しています。加えてアイリスオーヤマの家電には“値ごろ感”があります。

――その“値ごろ感”を生み出す要因に、「余計な機能を付けない」という点も大きい?

 大手家電メーカーは100人のうち90人に満足してもらう製品を出そうと思い、いろんな機能を切り離せないのでしょう。アイリスオーヤマは100人のうち5人が買ってくれたら、「それでいいじゃん」と。規模を追わない。自分たちの“値ごろ感”と“感覚”で、家電に付ける機能を取捨選択します。

 例えばアイリスオーヤマが16年に発売した銘柄量り炊きIH炊飯ジャーはヒットしましたが、同様の製品を過去に大手家電メーカーが世に出して、全然売れませんでした。なので、業界では「売れない製品」とみなされていた。われわれは「やはり本当においしい」と思ったので開発しました。なぜヒットしたかといえばやはり“値ごろ感”です。開発に掛かる人件費も安いですが、アイリスオーヤマは余計な機能を付けませんから。

――パナソニックOBとして現在のパナソニックの家電事業をどう見ていますか?

 結構頑張って良い商品を提案し続けていると思います。マクロな視点での生活提案はパナソニックのような生活者感覚を持った企業にこそリードしてほしい。何やかんや言って、創業者の理念は社員一人一人のDNAとなっています。

 パナソニックは巨大化し、当初の生活家電事業で利益を出せる体制ではなくなっています。特に人件費は膨大で、必要のない業務を切り落としつつも、構造的に今後の伸長は困難。総花的な事業は切り離さざるを得ないでしょう。低価格の家電事業はいずれアイリスオーヤマのような超効率的な運営ができる新興企業、あるいは中国企業に置き換わっていくと思います。

 創業者である松下幸之助さんの理念を現代風に読み換えて、生活感ある血の通った商品の開発に取り組むのは、「お客様視点」のパナソニックの使命ではないでしょうか。少なくとも重電系の日立製作所や三菱電機の発想ではできないと思います。


中途採用者が成長エンジン

新卒も大手家電を蹴って選んでくれる

――なぜ積極的に大手家電メーカー経験者を中途採用するのでしょうか。

 大型白物家電やテレビの開発は、やはり経験者の知恵が必要です。例えば経験者にはお客様からのクレームの蓄積があるので、どこを起点にものづくりをすればよいか分かっています。

――前職を早期退職した人が多い?

 たしかに大手家電メーカーが早期退職募集するので、うちとしてはこれまで採用しやすい環境にありました。早期退職の波が終わってからは「管理職から現場に戻りたい」「自由に開発がしたい」といった人がうちに来ています。家電業界自体に元気がないので、「開発を自由にやらせてもらえない」、「守りの開発環境なのでアイデアを持っているのに社内で通らない」といった状況があるようですね。わが社は外から見ると少しおもしろそうに見えるらしい。ベンチャー企業だと思っている人もいるぐらいです。

――大手家電メーカーとの開発の違いは?

 決裁スピードが断然速いです。大手では5〜10個のハンコが必要な書類でも、うちだと1、2個。下手したらオーナーのハンコだけなんてことも。

 任せられる仕事が多いのでやりがいがあります。それは新卒入社でも同じで、だからパナソニックなど大手家電メーカーと併願していても、それらを蹴ってうちを選んでくれる学生がいます。大手家電メーカーだと、開発の一部分しかやらせてもらえない。一方うちは新人でも新製品を「どーん」と任せます。もちろん簡単な製品からですが。

 また大手家電メーカーほど縦割りではありません。例えば、炊飯ジャーの実験の横で空気清浄機の実験をやったりと敢えて実験室を区切りません。関係ないエンジニアが「何やっているの?」と興味を持って話しかけるところから、新しいアイデアは生まれますから。今は所帯が小さいのでできる部分もありますが、今後どんどん大きくなっても風通しの良さにはこだわっていきたい。

――中途採用者の影響で、開発した家電製品が例えば、「東芝っぽい」「パナソニックっぽい」なんてことはないのでしょうか?

 ないですね(笑)。簡単にいうとアイデア出しはプロパーからが多くて、それらの具現化が中途採用者という構図。「日用品を長年やってきたアイリスならではのエンドユーザーに寄り添ったアイデア出し×中途採用者の技術力」で相乗効果を発揮しています。

――アイリスオーヤマの家電は総じて安いと思いますが、価格設定の目安はあるのでしょうか。

 一番は消費者感覚。ものすごく感覚的です。結果としてボトム(低価格帯)からミドルライン(中価格帯)になっています。中国メーカーとの値段的優位性はありません。ただわれわれも中国工場、中国の人件費で作っていますので、中国メーカーと比べて製品が高いわけでもない。むしろ中国では、少し高めに設定して日本ブランドで勝負しています。

 ハイエンド(高価格帯)はありません。われわれのブランドでは売れないだろうというのが事実ですし、消費者感覚で言うと、「ハイエンドは買わないな」とも思いますし。市場にあるハイエンドは余計な機能を付けてハイエンドにしていることが多い。誤解を恐れずに言えば、消費者に嘘をついています。販促のためだけに付けるような機能もありますし。もちろんうちもそういう製品がゼロとは言いませんが、ハイエンドはそういう家電が多すぎます。われわれはあくまで、消費者目線での価格設定と機能設定をしています。

――国内大手家電メーカーは利益率の高いハイエンドを主に攻めています。

 だからこそわれわれに勝機があると思っています。リアル店舗からEC(電子商取引)へ市場がシフトしていくと、安ければ安いほど客は反応します。残酷にその傾向は出ます。ですので、われわれのような企業が有利になっていくのではないでしょうか。

――ところで創業家の大山一族は家電が好きなのでしょうか?

(笑)。生活の不便を解決するというフィロソフィーがまずあって、その手段として家電がありました。われわれが得意としていた業態がホームセンター。ホームセンターで売れている商品群で「生活の不便」を解決していくなかで、必然的に家電にたどり着いたというわけです。

――ベンチマークする企業はありますか?

 ないですね。われわれは独自の立ち位置を保ちたいなと思っています。

 家電量販店が大きくなりすぎて、家電メーカーが言いなりになってしまいました。量販店は毎年新しいものを欲し、売り上げが下がらないようにしようとします。お客さんがいくら安いものを求めていても、できれば毎年上げようとする。家電メーカーがそこに乗っかると、製品はつまらないものになってしまいます。家電メーカーはそこと一線を画さないと。対決するぐらいでないと、いいものづくりはできないと思います。

 http://www.msn.com/ja-jp/news/money/%e5%85%83%e3%83%91%e3%83%8a%e3%82%bd%e3%83%8b%e3%83%83%e3%82%af%e9%96%8b%e7%99%ba%e8%80%85%e3%81%8c%e3%82%a2%e3%82%a4%e3%83%aa%e3%82%b9%e3%82%aa%e3%83%bc%e3%83%a4%e3%83%9e%e3%81%ab%e5%85%a5%e7%a4%be%e3%81%97%e3%81%a6%e9%a9%9a%e3%81%84%e3%81%9f%e3%80%8c%e8%b6%85%e5%8a%b9%e7%8e%87%e7%b5%8c%e5%96%b6%e3%80%8d/ar-BBZ9EEz
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