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2019年12月09日20:21

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北朝鮮、突然の「重大な実験」が意味すること 見えないアメリカとの交渉の行方

 下記は、2019.12.9 付の 東洋経済オンライン に寄稿した、ダニエル・スナイダー 氏の記事です。

                        記

 日本人は新年をスマホの「警告音」で祝うことになるかもしれない。北朝鮮のミサイルの到来を告げる警告音で。

 12月7日、北朝鮮は西部の西海(ソヘ)衛星発射場で、おそらく新しいタイプの大陸間弾道ミサイル(ICBM)用固体燃料エンジンの実験を行った。この発射場は、昨年のミサイル実験凍結の声明の一環で閉鎖されていた。

 かつて日本に向けてミサイルを発射していた北朝鮮東部の発射場も、2009年以降休止状態だったが、改修工事の兆候が見られるとミドルベリー国際問題研究所の上級研究員ジョシュア・ポラック氏は述べている。

ICBMが太平洋に向けられる可能性も

 アメリカの多くの専門家は、少なくとも今のところ、核実験再開の準備ができたという証拠は見いだしていない。その代わり、長距離ミサイル実験に注目が集まっている。おそらく実験は人工衛星の打ち上げを装うものとなるだろう。

 「ミサイル打ち上げの再開は、金正恩朝鮮労働党委員長が2018年4月20日に交わした約束を守り、中国政府を過度に警戒させ怒らせることなく、困難を切り抜ける最善の策である一方、国連安全保障理事会を無視し、日本の意表を突くものではないか」 とポラック氏は見る。「ICBMの発射実験は、近い将来、日本を越えて太平洋に向けられる可能性もある」。

 北朝鮮は、典型的なやり方でミサイル実験の準備を始めている。11月30日に発表された安倍晋三首相への不快な非難の声明の中で、北朝鮮の外務省幹部は安倍首相が多連装ロケットシステムの実験を非難したことに対して、はるかに不吉な脅しを持って応えた。「安倍は遠くない将来、本物の弾道ミサイルを間近で見ることになるだろう」。

 北朝鮮は、アメリカのトランプ政権との舌戦も再開している。年末には北朝鮮の金正恩委員長が昨年4月に設定した米朝協議の期限が迫っているにもかかわらず、だ。

 北朝鮮側のレトリックの変化は顕著である。外務省幹部や軍の高官が次々と発表する声明で年末の期限を繰り返し伝え、アメリカからのコメントに異例の速さで応じている。

 例えば、北大西洋条約機構(NATO)首脳会議でドナルド・トランプ大統領が軽く発言したことに対して、北朝鮮の朴正天(パク・ジョンチョン)総参謀長は、トランプ大統領に「意気揚々とはったりを言う」ことが戦争につながると警告。12月4日に発表した声明の中で朴総参謀長は「武力行使はアメリカだけの特権ではない」と述べた。

 こうした中、多くの国際アナリストはこうしたレトリックや初期の実験を、北朝鮮がアメリカを再び交渉のテーブルに着かせるためのいつもの戦略と見ている。つまり、北朝鮮は昨年から求めてきた、核武装能力放棄のための限定的な措置と引き換えに、経済制裁を解除する協定をまだ結びたいと考えているというのだ。

 「北朝鮮の目的は変わっておらず、アメリカが交渉のテーブルに戻ることを望んでいる」と、ソウルに拠点を置くロシア人学者アンドレイ・ランコフ氏は、NK Newsにこう寄稿した。

 「何よりも制裁緩和に関して、北朝鮮の利益になる協定をまだ必要としている。しかし、求めているものが手に入るほど甘いアメを見つけることができなかったので、当面はムチにしがみつくだろう」

 北朝鮮には、大きなリスクを抱えずに緊張を高めることができると信じるだけの理由がある。国務省東アジア・太平洋局の元局長エヴァンズ・リヴィア氏は、「北朝鮮は、アメリカと韓国が弾道ミサイル実験など最近の行動に反応しないのを受け、北朝鮮が米韓の許容範囲を超え、アメリカのレッドラインにまで足を踏み入れる余地があると確信しているようだ」と話す。

 「彼らは正しいかもしれない。なぜなら米韓政府はどちらも次の大統領選挙を控えており、今は対立を避けたいと考えているからだ」

 確固たる実験計画の再開は、過去1年半の間に緩和された制裁体制を再び活性化させるおそれがある。アメリカ海軍大学の専門家テレンス・ロエイリグ氏は、「現時点では『最大限の圧力』をもう一度かけるのは難しいが、長距離ミサイル実験によって復活する可能性がある。とくに、すでに長距離ミサイルを発射する能力を持つ北朝鮮には利益にならない」と語る。

 「ただし、北朝鮮がそのように考えているかはわからない」とロエイリグ氏は付け加える。「もし経済状況が切迫した状態なら、これに賭けるしかないと考えている可能性もある」。

 だが、アメリカのインテリジェンス・コミュニティのベテランの北朝鮮専門家の中には、昨年の夏、北朝鮮指導部がトランプ大統領から望みどおりの成果が得られる見込みはほぼないと判断し、交渉を断念したとの見方もある。彼らは、主に政権側が公開した声明の中に、重大な戦略転換の痕跡があると指摘している。

ハノイサミット後に事態が変わった

 2018年初め、北朝鮮政権による“平和攻勢”が始まったとき、金委員長は北朝鮮が経済成長と軍事力の強化という2つの目標を並行して追求する並進路線から離れつつあり、より開放的で市場主導型の経済への資源と焦点をシフトすると表明した。

 2018年にシンガポールで行われた米朝首脳会談では、はっきりとトランプ大統領が主張していたこの見解に信憑性を加えたように見えた。しかし、2019年2月に行われたハノイ・サミットが失敗に終わった後、事態は変わった。ここで北朝鮮は、核施設の一部を閉鎖するための曖昧かつ限定的な措置と引き換えに、主要な経済制裁すべての解除を求めていた。

 金委員長は、アメリカとの交渉期限を設定した4月12日の演説の中で、 「宮廷経済」 と 「核防衛」 という目標を再確認。夏の終わりまでに、北朝鮮政権は防衛産業の優位性を再び主張した。

 そして、潜水艦発射弾道ミサイルなどのミサイルシステム実験が頻繁に行われるようになった。同時に北朝鮮政権は、革新的な韓国の文在寅政権に対し、アメリカとの小規模な合同軍事演習の中止と米韓同盟の破棄を要求し、圧力を強めた。

 夏のどこかで交渉を事実上打ち切る決定が下されたようだ、と長年アメリカの上級情報アナリストを務めた人物は考えている。金委員長は6月、板門店の非武装地帯で急遽行ったトランプ大統領との会談の後、実務協議を行うことで合意した。

 その実務協議は10月初めにストックホルムでようやく開催されたが、協議が行われたのはわずか1日だけで、北朝鮮はその日の終わりにアメリカが「古い態度と考え方」から抜け出せなかった、と非難する長文の声明を発表している。

 アメリカと韓国の国際政治評論家の中には、北朝鮮が大規模な措置を要求してきたにもかかわらず、アメリカが制裁を緩和する前にこれを拒否したことを非難し、金委員長の声明に賛同する人もいる。しかし、スティーブン・ビーガン特別大使が率いるアメリカの交渉担当者たちは、実際は制裁を緩和するための新しいアイデアや段階的なアプローチを提示したと主張している。

 代わりに北朝鮮には真剣に交渉するつもりがなかった証拠がある。ビーガン特別代表とそのチームと緊密に連絡を取っていたアメリカの元諜報部員2人によると、北朝鮮代表団は、すでに声明の全文を手にして会談に臨んでいた。

 また、北朝鮮は会談が1日で終わると主張したようで、どちらも北朝鮮が首脳会談で話し合う可能性のある合意内容に、本気で取り組むつもりがなかったことを示す証拠と見られている。これまで指導部との協議、さらには平壌で行われた協議まで、重要な話し合いには、2日はかかっていた。

12月最後の10日間に「党大会」を開催

 トランプ大統領との3度目の首脳会談が開かれる可能性もわずかながら残っている。北朝鮮は依然としてトランプ大統領を個人的に攻撃しないように注意を払っており、トランプ大統領の平壌訪問を求めていると言われている。それは金委員長にとって魅力的な見通しだが、トランプ大統領がそうした政治的リスクを進んで取るような兆候はない。

 とはいえ、北朝鮮はトランプ大統領の訪朝を諦めていると見たほうがいいだろう。朝鮮労働党中央委員会の政治局常務委員会 (指導部内部の核) が先週、12月最後の10日間に党大会を開くという異例の発表は、その姿勢を表している。発表によると、大会は「変化する内外情勢の要求に応じた重要問題の討議および決定」を行う予定で、これはすでにアメリカが「敵対政策を撤回する」ことはない、と北朝鮮が結論づけたことを示唆している。

 この発表にはプロパガンダの写真や映像が付いており、そこには金委員長が白馬に乗って夫人や党の幹部、軍の主要指揮官らを連れて、政権誕生の象徴である聖地・白頭山を訪れる様子が映っていた。

 この訪問は過去2カ月で2度目。これに先駆けて中国との国境近くにある観光施設を視察し、中国からの観光客を呼び込もうとした。現在、重要な中国の支援を受けて強化された軍事政権を強調することで、体制の維持、つまり自立への道を進んでいる、というわけだ。

 12月初旬、ある元上級情報機関の専門家は、7日の実験を予測して私にこう言っていた。

 「今月末の大会の予定を発表したこと、金委員長が最近白頭山に姿を現したという異例の長々とした報道から、何を準備しているのかがわかるまでそう長くはかからないだろう。金委員長の設定した締め切りまで、あと3週間あり、アメリカ政府が行動する余地はある。しかし、大会の予定を組んだ時点で、すでに金委員長の心は決まっており、待つ意思がないことを示している」

 http://www.msn.com/ja-jp/news/world/%e5%8c%97%e6%9c%9d%e9%ae%ae%ef%bd%a4%e7%aa%81%e7%84%b6%e3%81%ae%ef%bd%a2%e9%87%8d%e5%a4%a7%e3%81%aa%e5%ae%9f%e9%a8%93%ef%bd%a3%e3%81%8c%e6%84%8f%e5%91%b3%e3%81%99%e3%82%8b%e3%81%93%e3%81%a8-%e8%a6%8b%e3%81%88%e3%81%aa%e3%81%84%e3%82%a2%e3%83%a1%e3%83%aa%e3%82%ab%e3%81%a8%e3%81%ae%e4%ba%a4%e6%b8%89%e3%81%ae%e8%a1%8c%e6%96%b9/ar-BBXXVlJ


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