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2019年12月07日17:30

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家康監視に足利氏を利用か 小田原落城後に出した秀吉の書状発見

 下記は、2019.12.7 付の 産経ニュース の記事です。

                        記

 安土桃山時代末期の天正18(1590)年、豊臣秀吉が関東の有力戦国大名・北条氏を滅ぼしたいわゆる「小田原征伐」の直後、秀吉が室町幕府将軍家の分家に当たる「関東足利氏」に送った書状が見つかった。北条氏亡き後、秀吉は東海地方で勢力を誇っていた徳川家康を関東に移封させたが、一方で分断状態にあった関東足利氏の統合に動いていた。室町幕府はすでになくなっていたが、家康を牽制(けんせい)するため「かつての権威」である足利氏を利用しようという意図があったことを示す、貴重な証拠といえそうだ。(橋本昌宗)

かつての名家が“没落”

 書状を展示している神奈川県立歴史博物館(横浜市中区)によると、書状は「豊臣秀吉朱印状(しゅいんじょう)」と呼ばれるもの。日付は天正18年7月17日で、秀吉から関東足利氏の末裔、足利頼淳(よりあつ、頼純=よりずみ=とも)に送られたものとされる。これまで書状の存在自体は知られていたが、現物の行方は分かっていなかった。古物商のもとに書状が保管されていることが判明、今年の夏に同博物館が買い取ったという。

 関東足利氏は、室町幕府を開いた足利尊氏に続く2代将軍・義詮(よしあきら)の弟、基氏(もとうじ)が関東武士の抑えとして鎌倉に派遣され、「鎌倉公方(くぼう)」と呼ばれたことに始まる。その後、関東足利氏は戦乱により鎌倉を追われ、この混乱に乗じて伊豆から関東に侵入、勢力を伸ばしたのが北条氏だった。

 関東足利氏はその後、「古河(こが)公方」や「小弓(おゆみ)公方」などに分裂し、抗争を繰り返した。小田原征伐の頃には古河公方側は当主不在の状態。小弓公方側の足利頼淳は、房総半島を拠点に北条氏と戦っていた里見氏のもとに身を寄せていた。

 「本家」である室町幕府も最後の将軍、義昭が織田信長によって追放されており、足利氏は存続自体が風前の灯だった。苦境に置かれていた頼淳にとって、難攻不落を誇った北条氏の居城・小田原城(神奈川県小田原市)を落城させた秀吉の存在は、まさに天の助けだったといえる。

秀吉の「戦後構想」

 北条氏最後の当主、氏直が秀吉に降伏したのが天正18年7月5日。書状はその直後に出されている。頼淳から北条氏を滅ぼしたことへの祝い品が届いたことに対する礼に続き、「北条氏に対し長年鬱憤が募っておりましたこと、致し方ないことです。まさにこの度の北条氏への処罰について、満足なさっていることでしょう」と、当時の頼淳の境遇をおもんぱかる文言がつづられている。

 同博物館の渡辺浩貴学芸員は、「祝い品を送るなど、秀吉と頼淳がかなり早くから接触していたことがうかがえる」と説明する。特に注目すべきなのは、書状の宛名が「鎌倉左兵衛督(さひょうえのかみ)殿」となっていること、「秀吉」と差出人が書かれている上に印が押されていること、の2点だという。

 渡辺学芸員によると、通常の書状は印のみで、「秀吉」と書くのは、関白を継がせた養子の秀次などの近しい親族や、徳川家康クラスの有力武将に宛てる際に限られていた。また、鎌倉で政務を執ったこともない頼淳に「鎌倉」と付けたうえ、関東足利氏に代々受け継がれた官職である「左兵衛督」とわざわざ呼んでおり、「由緒正しい足利氏を厚く処遇する様子が見て取れる」という。

 秀吉のそうした振る舞いの背景にあるとみられるのが、北条氏亡き後の「戦後構想」だ。

 秀吉は、家康を本拠地である東海地方から引きはがし、北条氏の領地だった広大な関東の領土を任せた。北条氏が5代100年にわたり根を張った地の統治を担わせることで、勢いをそごうとしたともいわれるが、渡辺学芸員によると、足利氏への厚遇も「家康シフト」の一環だった可能性があるという。

 小田原征伐の後、秀吉は分裂していた古河公方と小弓公方を縁組などを通じて統合させている。「長く関東の権威だった足利氏を利用することで、家康に対する牽制や監視の役割を期待したのではないか」(渡辺学芸員)というわけだ。

 結局、家康は秀吉の死後に関ヶ原の合戦などを経て天下を取り、江戸幕府を開いた。頼淳の血筋は喜連川(きつれがわ)藩=現在の栃木県=として、江戸時代に存続していくことになった。

                        ◇

 秀吉から頼淳に送られた書状の展示期間は12月27日まで。問い合わせは神奈川県立歴史博物館045・201・0926。

 https://www.sankei.com/premium/news/191207/prm1912070006-n1.html

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