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2018年12月11日15:27

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産業革新投資機構vs.経産省 取締役9人辞任の裏側 経産省が狙う「ゾンビ救済ファンド化」に歴戦のプロたちが反旗

 下記は、2018.12.10 付の JBpress に寄稿した、 大西 康之 氏の記事です。

                        記

 「官民ファンド」産業革新投資機構(JIC)の田中正明社長ら、民間出身の取締役9人全員が10日、辞任を表明した。経産省からの「高額報酬批判」に端を発した経産省とJIC経営陣の喧嘩だが、この日、記者会見した田中氏は「民のベストプラクティスでやれると思ったが、(実態は)国の意思を反映する官ファンドだった」と語り、争点は「報酬ではなく方針」と主張した。安倍内閣による長期政権が続く中、「官と政の奢り」が民のプライドをないがしろにした結果である。

日経電子版が辞任の第一報

 12月9日、午後11時過ぎ、日経電子版が「JIC経営陣 辞任へ」と第一報を流した。すぐさま情報筋にアクセスすると「明日の午後、記者会見する予定だ」と返事があった。

 10日朝、JICの広報に電話して「午後記者会見があると聞いている。フリーのジャーナリストは会場に入れるか」と尋ねると「担当者が席を外しており、わかりかねます」と素気無い返事。

 「会見があるかないかが分からないのか、フリーが入れるかどうかが分からないのか」と聞いても「担当者が席を外しており」とおうむ返し。「それだけ言っとけ」と命じられている広報さんをいじめても仕方ないので電話を切る。

 その後、情報筋から「記者会見は午後1時から丸の内永楽ビルのJIC本社で」と知らされる。確認のため正午にJICに電話すると「まだ何も分かりません。分かり次第、こちらからご連絡します」とさっきよりはまともな対応。それにしても予定の時間まですでに1時間を切っている。

 電話がないので永楽ビルに押しかけると、すでに受付が始まっており、会場は満員で後ろにはテレビカメラの三脚が林立している。大手メディアには何時間も前から知らせていたようだ。

 午後1時、田中社長が登場し、カメラのフラッシュが焚かれる。

 三菱UFJ銀行で副社長を務めた田中氏は米国勤務が長く、海外の投資家とも太い人脈を持つ。田中氏以外の8人を確認しておくと

金子恭規 代表取締役副社長

佃秀昭 代表取締役専務COO

戸矢博明 代表取締役CIO

坂根正弘 社外取締役 取締役会議長 

冨山和彦 社外取締役 報酬委員会委員長

星岳雄 社外取締役

保田彩子 社外取締役

和仁亮裕 社外取締役

辞任を決めた「その道のプロフェッショナル」たち

 金子氏は、元内科医で投資銀行のパリバ・キャピタル・マーケッツの法人事業部長を務め、自ら米国でバイオ専門のベンチャーキャピタルを経営している「海外投資のプロ」。

 佃氏は三和銀行から、企業のガバナンスに強いコンサルタント会社エゴンゼンダーに転じ日本法人の社長を務める「ガバナンスのプロ」。

 戸矢氏は大蔵省(現財務省)を飛び出し、投資銀行のゴールドマン・サックスを経てアクティブ(物言う)投資家になった「投資のプロ」。

 そこに、産業界の「ご意見番」で、安倍首相の知恵袋でもある小松製作所相談役特別顧問の坂根氏と、初代産業再生機構のメンバーで、日本の再生ファンドに黎明期から関わってきた経営共創基盤CEOの冨山氏、日本の金融システムに詳しく(競争力を失った大企業を国が支える)ゾンビ企業の研究などで知られるスタンフォード大学教授の星岳雄氏らが社外取締役として加わる。

 「日本でソブリン・ウェルス・ファンド(SWF)を立ち上げるなら、ベストに近いメンバー」(金融業界関係者)というメンツが、全員辞任するのだから、ただ事ではない。

 記者会見では辞任する9人のコメントをまとめた資料も配られた。

 「今回の混乱の経緯はともかく、官側の提案に基づいて取締役会で正式決議したことを根底から覆されたことと、両者間の信頼関係が修復困難な中で、今後取締役会議長としてガバナンスを遂行することに確信がもてなくなった」(坂根氏)

 「まことに残念なことですが、これでは内外のトッププロフェッショナルを集め(中略)、グローバルな一流どころと組んで仕事をすることは今後、極めて難しいと見るべきでしょう」(冨山氏)

 「産業革新投資機構が、ゾンビの救済機関になろうとしているときに、私が社外取締役に留まる理由はありません」(星氏)

 その道のプロたちが「本格的なSWFを立ち上げよう」意気込みで集結したのに、経産省(や官邸)に翻弄された悔しさが滲み出ている。

 田中氏の発言で一番、印象に残ったのは、

 「(JICでは)民のベストプラクティスを生かすのだと思っていたが、(実態は)国の意向を反映する官ファンドだった」の一言だった。

 JICはすでに、金子氏らの活躍により、米国西海岸で最大2000億円の投資枠を持つバイオベンチャー向けの投資ファンドを立ち上げる手続きに入っていたが、経産省と財務省の待ったで白紙になった。

 田中氏は「せっかく集めた優秀な人材が雲散霧消してしまった」と悔やんで見せた。

政府がやらせたかったのは「ゾンビ企業の救済」

 田中氏らがやりたがっていたベンチャー投資を止めてまで、国はJICに何をやらせたかったのか。それは紛れもなく、星氏が指摘している「ゾンビ企業の救済」だろう。

 JICの前身で現在も活動している産業革新機構(INCJ、志賀俊之代表取締役会長)は、総合電機の負け組液晶事業の寄せ集めであるジャパン・ディスプレイ(JDI)に2750億円、ルネサスエレクトロニクスに1383億円を出資している。国際競争力を失った日本の総合電機の延命に巨額の税金を投じているのだ。

 JICは「ゾンビを救済しない」と決めていたはずだが、そこに民と官の思惑の違いがあった。官はやはり、税金を使ってゾンビ企業を救済したいのだ。例えば債務超過を免れるための東芝メモリ売却にはINCJが一枚噛んでいるが、メモリ事業を手放した東芝はゾンビ予備軍である。トルコの原発輸出が厳しくなった三菱重工業も陸海空で失策が続く。経団連会長を輩出している日立製作所とて、盤石ではない。ゴーン前会長逮捕で揺れる日産自動車もゾンビになる恐れがある。

 官は公的資金の注入をチラつかせながら、こうした企業の再編を主導することで存在感を増したいのだろうが、それは「健全な金融機能の強化による日本の産業競争力強化」を掲げたJICと真逆の道である。今回は官に三行半を叩きつけた9人に拍手を送りたい。

 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54916
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