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2017年08月28日18:31

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米の「人種差別デモ」 単純な「正邪」対立ではない メディアは公正、客観的に報道せよ 元駐米大使・加藤良三

 下記は、2017.8.28 付の【正論】です。 日米共に左翼マスコミは、反安倍、反トランプで、本来のジャーナリズムのあり方を放棄して、反対の為のプロパガンダと化しておりますね!

                       記

 近年のスマートフォンのカメラ機能の高度化には驚くべきものがあり、専門家さながらの撮影が誰にでもできる。しかし、レンズは大概標準レンズで、特別の広角、まして望遠機能は備えていない。皆、同じポーズ、同じ図柄の撮影を繰り返す。写真は真実の一部を切り取るが、全体像は示さない。

 世の中のことをより良く理解するためには広角、望遠の機能を補強する必要があり、その役割を果たすのがメディアだと思う。しかし、近年はメディアも同じような標準レンズを使って「限界効用」の低い映像を量産している感があり、プロフェッショナルとしての役目を十分果たしていないように感ずる。自ら身を以て「事実」(ファクト)を追求し、読者、視聴者に提供する精神が衰退傾向にあるのではないかと危惧される。

 ≪正邪対立の単純な構図なのか≫

 最近起こったアメリカのバージニア州シャーロッツビルでの衝突事件の報道ぶりを見て、改めてその感を深くする。

 日本のメディアの多くが「トランプ憎し」の感情(ないし、その受け売り)を前提にした報道を繰り返した。今回の騒ぎは「白人至上主義者(悪)対市民グループ(正義)」、すなわち単純な正邪対立だとする構図を描いた。私にはトランプ氏を擁護する義理も動機も全くゼロであるし、トランプ氏の大統領ぶりは異様だと思っている。

 しかし、メディアには、日本に居てはよく分からない騒動の発端、経緯、背景をもうちょっと掘り下げて、公正、客観的に伝える責任があるのではないか。

 阿川尚之教授(同志社大)の著作に示される通り、シャーロッツビルはトーマス・ジェファソン(第3代大統領。民主党の祖とされる)が創った南部の穏健、静謐(せいひつ)な学園都市だった。その街の公園に南北戦争の南軍司令官だったロバート・リー将軍の銅像が1924年以来存在してきた。リー将軍は南部はもとより北部でも尊敬された「時代の英雄」「史上の重要人物」だと聞いてきた。

 ごく最近その銅像を撤去・売却するとの決定を市議会が行った。さすがに、この決定に当たっては州の司法を含めていろいろ慎重論、反対論もあったようだ。

 撤去を主張した勢力は、これ以前に銅像が所在していた公園(「リー・パーク」)を「エマンシペーション・パーク」(解放公園)に改称させている。

 この集団・勢力をアメリカの主要メディアは「(一方の)抗議集団に反対するグループ」「カウンター・アクティビスト(反活動家)」などと表現している。

 ≪問題は「寛容性」に対する挑戦≫

 この勢力は何を目指すのだろう? アメリカには南部を中心にして、南軍の軍人の名を冠した公園、街路、ハイウェイ、軍基地を含む諸施設、学校(その中には日本人学生、研究者も行くワシントン・アンド・リー カレッジといった質の高い大学もある)など多数存在する。

 およそ、南部または南部的なものを「悪」として否定する立場を貫くのであれば、名称変更から始まって際限のない騒ぎが続き、結果としてアメリカ自身にとって貴重な歴史の教材が失われることになりはしないか。これは、アメリカの伝統である「寛容性」に対する挑戦ともなりうるだろう。

 この集団の人種差別撤廃の主張(その根底に黒人の見せかけではない怒りのエネルギーがある)を突き詰めれば、やがては、ジョージ・ワシントンやトーマス・ジェファソンも人種差別擁護者として糾弾されうるわけで、この点に関する限りトランプ氏の言い分は正しいと私は思う。

 今回のシャーロッツビル衝突を最初に仕掛けたのが、最も筋悪な白人至上主義者を含むグループだったことは不幸な事実だった。またこの事態が発生する環境を作り出したのが「大統領・トランプ」だったというのも正しかろう。

 しかし、問題の本質は「トランプ憎し」の感情の次元を超えるもの、アメリカの歴史がどうなるかに関わるものではなかろうか。

 ≪堂々巡りを始めたアメリカ≫

 現象的には、今回の名称変更、銅像撤去のような風潮への反発が「大統領・トランプ」を生み出し、そのトランプ氏への反発が騒動を招くという堂々巡りをアメリカが始めているように見える。

 これにけりをつける責任と能力はアメリカ以外にはない。

 ただ、アメリカの寛容性が失われることの世界的影響は大きいだろう。中国の指導層や日本のリベラル左翼人士の多くも子女をアメリカ留学に出していると聞く。それはアメリカの寛容性とそれを基盤とする知的、科学技術的発展の底力に信をおいての判断だろう。

 この先、トランプ氏の支持率は一層低下し、アメリカの信頼性がさらに失われるとの報道やコメントが続くと思われる。しかし本当に知りたいのは、広角、望遠機能をフルに働かせて得られる客観的事実とその分析である。その役割の一端をメディアに期待するのが私だけであるはずがない。(元駐米大使 加藤良三 かとう・りょうぞう)

 http://www.sankei.com/column/news/170828/clm1708280006-n1.html
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