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2016年08月23日15:19

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つづき

(4)長期、マイルド(Long, Mild)

 戦闘は封じ込められ、損害は許容の範囲内であり、米中両国が低烈度の紛争を継続することによる政治的コストも小さい。両国が軍事的な優勢を獲得しないと、紛争はしばらく継続することになる。

 一方、戦闘は限定されるが、経済的損失が特に中国において増大する。時間の経過とともに、国際および国際的な政治的反応が、「長期で厳しい」ケースの場合ほどではないが、増大する。

 これらのケースは、米中両国の通常兵器によるカウンターフォース能力が、当初から制限のない敵対行動の終始を通じて大きな軍事的損害をもたら可能性があることを示している。そして、先制攻撃が有利であるという認識は、両国間の紛争の生起を容易にする要素になる。

 中国のA2AD能力の向上は、2025年における米中間の損害のギャップを縮小させる。中国の損害はそれでも大きいが、米国の損害は2015年における損害よりも大きくなる。

 米国の軍事的勝利の可能性は低下するが、中国の勝利の可能性も小さい。

 両者は、損害を継続して与えることはできるが、敗北を受け入れるわけではない。「厳しい長期の軍事的帰趨のはっきりしない」戦争は、両国を弱体化し、その他の脅威に対して脆弱になるであろう。

●非軍事的要因の重要性

 戦争は、結局は非軍事的要因で決定される。この非軍事的要因は、現在も未来も米国に有利である。

 戦争は、両国の経済を傷つけるが、中国経済が被る損害は破滅的で長く続き、その損害は、1年間続く戦争でGDPの25〜35%の減少になる。一方、米国はGDPの5〜10%の減少になる。

 長期かつ厳しい戦争は、中国経済を弱体化し、苦労して手に入れた経済発展を停止させ、広範囲な苦難と混乱を引き起こす。

 そのような経済的損害は、政治的混乱を引き起こし、中国内の分離派を大胆にする。政府や治安部隊は、そのような挑戦に対抗できるであろうが、戦争中における抑圧を強め、中国政府の正統性を減じることになる。

 一方、米国内の党派色の強い小競り合いは、戦争努力に影響を与えるだろうが、紛争がいかに長くかつ激しくなったとしても、その紛争が通常戦である限りにおいて、社会的な安定を脅かすものではなく、国家の生存には影響を及ぼさない。

 サイバー戦がエスカレートすると、両国にとって有害であるが、中国の経済問題を悪化させ、落ち着かない国民をコントロールする政府の能力を低下させることになる。

 国際的な反応も長く厳しい戦争において米国に有利になるであろう。

 NATO(北大西洋条約機構)は、欧州におけるロシアの脅威を抑え込み、米国の東アジア同盟国(日本を含む)の米国に対する支持は、中国の軍事的チャンスを害することになる。

 日本は、在日米軍基地が攻撃されたならば、参戦することになろう。日本政府の集団的自衛権に関する憲法解釈の変更、日本の軍事力の改善及び日本の参戦は、2025年までの戦争の方向性と結果に変化をもたらすであろう。

 これらの事実は、米中戦争が非常に害が大きく、両国はその回避に最高の優先順位を置かざるを得ないことを明示している。

 大きな損害が計画的戦争の蓋然性を低くするならば、両国の強い危機管理と軍隊のシビリアン・コントロールが求められる。両国の指導者間のコミュニケーションが重要になる。

 米国は、厳しい紛争をコントロールできず、勝つことができず、大きな損害やコストを避けられないかもしれないが、激烈で迅速なカウンターフォースを自動的に実施すべきではない。

 それは、軍事計画の遂行に関する大統領の最終的な許可に基づき実施され、指揮官たちは、大統領に実施可能な選択肢を提供しなければいけない。

 中国は、A2AD能力の向上にもかかわらず、厳しい紛争の損害を被る。

 ハイテクおよびハイスピード戦における軍民協力の経験に乏しい中国の指導者は、軍の現代化のトレンドは「短期戦の勝利である」という間違った助言を受けているが、実際の戦争は、厳しい長期の軍事的に決着のつかない戦争の蓋然性が高い。

 そして、米国に有利な経済的政治的および国際的効果を伴う戦争である。中国は、米国と同様に政治的決心により、迅速激烈なカウンターフォース戦略に基づく軍事計画の自動的な遂行を防止すべきである。

●米軍のために奨励する行動

 中国の米軍攻撃の抑制は、中国による米軍行動の予測に依存する。米軍は、紛争の初期段階において中国のA2/AD能力を撃破する計画に依存すべきではない。

 そのような依存は、危機の安定化を阻害し、中国の先制攻撃を促し、当初からの激烈な戦闘を不可避にする。

 さらに、米軍は、迅速な通常兵器によるカウンターフォース攻撃という唯一の計画で、大統領の選択肢を制限してはいけないし、代替案の遂行を準備すべきである。長期の高烈度の戦争を計画し、これを中国に知らしめることが安定の強化と抑止にとってより良策である。

 兵器の残存性の向上とA2/AD能力(ミサイル、潜水艦、ドローン、ドローンの発射プラットフォーム、サイバー、ASAT)に資金を投資することにより、中国のA2ADに対抗すべきである。

 これらのA2/AD兵器は、中国の戦勝の自信を否定し、紛争初期の緊要な時期のみならず全般にわたる安定の改善に資する。しかし、これらの兵器は、米国の軍事的優越性やコントロールを回復し、厳しい紛争における大きな損害や経済的損害を回避するわけではない。

 中国との確率の低い戦争に準備する膨大なコストを考えなければいけない。

・激烈な軍事作戦を遂行し、生き残るための能力を改善する。
・中国周辺の同盟国及び友好国の優先順位の高い軍事的能力を高め、軍事的相互運用性を向上する。
・日本およびその他の東アジア同盟国および友好国と有事計画を作成する。
・中国との紛争を含む偶発事態及びそれに対するロシアやイランの反応についてNATOと協議する。
・中国製の重要な製品の中断を緩和する方策を採用する。
・中国にとって戦時重要物資(例えば原油)の輸入を阻止する方策を案出する。

●米陸軍への提言

 米陸軍は、次のことに貢献できる

・対A2/AD能力、例えば、中国の海空戦力損害を増大するために、機動式の地上発射ミサイル、統合防空を研究する。
・東アジアの友好国を強くし、アドバイスし、強力な防衛の構築を可能にする。
・長期の厳しい戦争における需要の大きい兵器と備蓄を評価する。

 米国は、米陸軍を含み米中の軍対軍の相互理解および誤認識や誤判断によるリスクを低減するための方策を拡大し深化させなければいけない。

●「中国との戦争」の結論

 中国の軍事力の向上は、米国の軍事的優位性を低下させ、米中戦争は、激烈で、1年以上継続する、勝者がいない、両国に非常に大きな損失とコストを強いる。そのような戦争が長く続くほど、経済的、国内政治的および国際的な影響が重要になる。

 そのような非軍事的な影響が中国を最も激しく打ちのめし、米国の経済を害し、世界的な挑戦(諸問題)に対応する米国の能力を大きく損なう。

 米国は、中国との長く激しい戦争を遂行することができるように、賢明な準備をしなければいけない。重要なことは、その計画立案、シビリアン・コントロール、平時・危機時・戦時に中国と意思疎通できる能力により、中国との戦争の規模、激しさ、期間を局限する米国の能力である。

 同じように中国にとって、政治的統制、戦時におけるトップレベルの良き意思疎通が不可欠である。

 中国の軍事力の向上は、米国に決定的に敗北する危険性を減じているのは事実である。しかし、中国は、短期の戦争を頼ることはできなくて、長期の戦争が中国を弱く、不安定で、不安全で、貧しい状態にするであろう。

 米中がお互いを破壊する能力が同等になると、どちらも許容可能な犠牲で勝利する自信を持てなくなる。もしも対立や突発事態が敵対行動にスカレートしたならば、いかに勝利するかではなく、いかにして損害を局限するかを考え抜くべきである。

2 「中国との戦争」に対するコメント

 ランド論文「中国との戦争」は、示唆するところの多い、意義のある論文であるが、以下のような評価もせざるを得ない。

●JAM-GC*4(Air Sea Battleの後継作戦構想)を否定するのか?

 「激烈で迅速なカウンターフォースを自動的に実施すべきではない」、「米軍は、紛争の初期段階において中国のA2/AD能力を撃破する計画に依存すべきではない」という表現は、JAM-GC(Air Sea Battleの後継作戦構想)を否定する表現と判断せざるを得ない。

 この点がランド論文「中国との戦争」に対する筆者の最大の疑問である。

 ランド研究所はいかなるJAM-GCの代替作戦構想を持っているのか。昨年秋にランド研究所が発表した米中戦争のシミュレーションである「米中軍事スコアカード」は、Air Sea Battleを作戦構想とする分析であった。

 ただ単に激しい戦争を避け、長期の戦争に持ち込むために、JAM-GCを否定するような表現を使っているのか、疑問である。

●日本は厳しい状況を覚悟すべし

 米軍が紛争の初期段階における犠牲を避けようとすればするほど、米国の同盟国である日本の被害は大きくなる。

 米国が「短期、厳しい」ケースを避けたとすると、日本などの同盟国や友好国は「長期、厳しい」ケースに耐えなければならない。この点は、日本にとって重大である。

●米軍に対するA2/AD兵器の推奨

 中国のA2/ADに対抗するために、米軍のA2/AD兵器の導入を推奨しているが、あまりに消極的すぎる提案である。

 米国防省の第3次相殺戦略で提案されている長距離の打撃力などの中国に勝利する兵器や技術をどのように評価しているのか、疑問である。国防省は、あくまでも「長期、激しい」戦争に勝利する作戦構想および兵器を保有するという考えであろう。

●中国の指導者やシビリアン・コントロールについての評価

 米中戦争の回避に関し、中国の政治的指導者の統制能力やシビリアン・コントロールに期待しているが、これらに期待できないから米中戦争が生起するのであろう。

 中国には民主主義国家に見られるようなシビリアン・コントロールは存在しない。人民解放軍を習近平中央軍事委員会主席が本当にコントロールできるか否かが問題なのである。

●米中戦争の抑止

 「中国との戦争」は、戦争による損失の大きさを強調することにより、米中戦争を抑止するという観点がある。しかし、損失の大きさは米中戦争抑止の重要な要素にはなるが、それだけでは不十分であり、総合的な抑止の方策が必要である。

*4=Joint Concept for Access and Maneuver in the Global Commons

 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47674
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