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2020年09月28日08:17

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勉強会講話より「84人の成就者たち」第一回(5)




【本文】

 その後、彼らはオーデーシャという異郷の地に行き、そこで托鉢をしました。その後、ルーイーパが王を売ったのは、ダーリカパの伝記の中で明らかにされます。

 師ルーイーパとブラーフマナ階級の大臣の二人は、一週間後、仏教徒の王のお膝元であったジャイナタプラにつきました。彼らは酒を売る女の家に行き、酒売りのかしらであるその女を見つけて言いました。
「奥さん、人を買いませんか?」
 女将は家の中から答えました。
「買いましょう。いくらですか?」
「金300トーラで結構です。」
 師ルーイーパが言うと、彼女は代金を支払い、ブラーフマナを引き取りました。
 師はそこを去る時、こう言いました。
「こういう値で買われたのだから、彼をひとりで寝かせてください。彼がお金を料金分稼いだら、彼を解放してください。」




 これはまあつまり、チャクラサンヴァラっていう素晴らしい教えを伝授して、で、その大臣と王様は、「その見返りとしてわたしたちの身体を差し出しましょう」と。で、それはもう、なんていうかな、言葉だけの話ではないんだね。ほんとに差し出してるんです。よってここで師ルーイーパは――つまり、まあさっきの話じゃないけど、彼らの体はもう師のものだから。この師が酒屋の女将にその大臣を売っちゃうわけだね。
 で、これにはもちろん大きな意味がある。このような密教の世界の一つの特徴っていうのは、まず師匠、つまり師の偉大性です。つまり師が弟子を見て、その弟子のけがれを打ち砕くためのさまざまな方法を取るんだね。で、それが決まりきった方法じゃないんです。つまり誰にでも当てはまる最大公約数的なものっていうのは、もちろん基礎としては必要なわけだけど、その人の個々のけがれを打ち破るには、個々に合った方法が必要になってくる。よって師は弟子に合った方法を取るわけだね。で、それは一見すると「なんでこんなことやらせんの?」みたいなふうに感じることもある。それはすべて、なんていうか師の計画のもとにある。で、このときもその酒屋の女将にこの大臣を売って、そこで働かせるっていうのが、この師ルーイーパの計画だったわけだね。
 ここで重要なのはもちろん弟子の、なんていうかな、純粋な師への帰依っていうかな。つまり、「わたしの師というのはわたしのことをわたし以上に分かっている」と。「そしてわたしを愛してくれている」と。「よって、わたしの師匠がわたしに対してやることっていうのは、わたしには今全く理解できないかもしれないが、すべて完全な悟りにすべて直結してるんだ」っていうような、もう絶対的な信頼を置けるかどうか。
 だって皆さん、考えてみてください。さっきの話じゃないけど、例えばわたしが――Tくんが例えば来て、「ちょっと入会させてください」と。「ああ、いいだろう」と。「その代わり身体を差し出しなさい」と。「分かりました」って言って、「じゃあちょっとTくん来て」と(笑)。酒屋に行って、「はい、Tくん売ります」と。五百万円で売ります――「はい、じゃあおまえは今日からここでタダ働きだ」と。そう言われたときに、「分かりました!」と、「それがきっとわたしの悟りへの道です」っていけるとしたら、それは素晴らしい。でもなかなか現代人っていうのは疑い深いから、あるいは間違った合理性が強いから――ユクテスワが言うような「利己的知性」っていうやつだね。つまりエゴの都合のいいように合理的に考えたがる。「なんでおれは酒屋で働かなきゃいけないんだ……」(笑)。「うちの師匠、五百万が欲しかっただけじゃないのか?」とか(笑)。「なんでそんな意味のないことをやらなきゃいけないんだ?」――ワーッて巡り始める。で、逃げ出すかもしれない。そうすると、師匠がやろうとしたプログラムが働かないわけだね。
 これは、マルパとミラレーパの話でもそういうのあるよね。マルパはミラレーパのカルマを浄化するためにもう徹底的にいじめ抜くわけです。で、ミラレーパは九十パーセントまでは純粋についていったわけだね。うちの師匠はほんとに偉大な聖者だから、もうほんとに何があってもついていこうと。でも最後の最後で――まあ奥さんも悪いんだけど。マルパの奥さんが、あまりにもかわいそうだったんでちょっと助け舟出しちゃって。で、ミラレーパもそれに乗ってちょっと逃げ出してしまった。で、また戻ってくるんだけど。でもマルパが最後に言ったのは、「おまえが最後まで逃げずにやり遂げていたら、その時点で完全な悟りを得ただろう」と。しかし最後の最後で逃げちゃったから、ちょっとだけけがれが残ったと。で、それはまあそのあとの瞑想修行で落とさなきゃいけないと。
 だから、弟子にそういう信がないと、なかなか師が言った、師がやろうとしてる計画が働かない場合がある。
 ただこの場合、このディンカパの場合は、おそらくその師に対する完全な信と、それからまあもちろん修行者としての素養も高かったんでしょう。全く疑問を持たずに、まあルーイーパが言ったとおりにこの酒屋で働くわけだね。
 あの、実はね、今回はやらないけど、この『八十四人の成就者たち』の中には、師の言うことを聞かない人も出てきます(笑)。つまり同じように、そういうちょっとわけが分からないことを命令されるんだけど、ちょっとできなくて、で、修行失敗しちゃう人の話も出てくる。だからもちろんこれは、なんていうかな、偉大な道であって、誰でもがそれを一〇〇%できるかどうかっていうのは分からない。
 はい。で、ここで「彼を一人で寝かせてください」って書いてあるけど、これはつまり夜は修行するためです。つまりこの人は何をやらされたかっていうと、昼間はこの酒屋でタダ働きさせられて、夜は一人で部屋にこもって、さっきのチャクラサンヴァラとか、そういう瞑想修行をしてたわけです。これが彼の師から言い渡された悟りへの道だったんだね。はい。




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