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2019年12月16日17:18

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「いだてん」が終わってしまった!!

大河ドラマ「いだてん」が昨夜、最終回を迎えた。

この1年、欠かさず毎週見て(当日、見られない用事のある時は録画して)、1年だけなのに、金栗四三の幼少期の明治の終わりから1967年まで、長い長い旅をしてきたような気分になった。

わかりにくいとか、低視聴率だとか、なにかと芸能マスコミはうるさかったけど、わたしにとっては今まで見た中で最高に面白い大河ドラマだった。

たぶん、テレビの前で漫然と見るには適さないドラマなんだと思う。
物語が入れ子構造になっていて、時間があちこち飛び越え、志ん生が語る「1964年の東京オリンピックに至る物語」が、金栗四三、田畑政治のそれぞれの生涯を軸にしながらも、志ん生自身の生い立ちがからみ、それらとリンクするように落語の「富久」などの噺がはさまっていく。

大いなる緊張感をはらみっぱなしのドラマ。
だからこそ、目が離せなかった。
ダレる回が1回もなかったし、話の埋め草みたいなシーンもない。
さまざまに登場する人物たちがどれも「キャラが立って」いて、魅力的であり、毎回のエピソードの大半が、創作ではなく史実であるという驚き。

そう、やっぱりクドカン(宮藤官九郎)は天才だった!
これだけの情報量の物語に伏線を張り、見事に回収し、収れんさせていく。
エピソード部分などはかなりリサーチャーも付けて調べて、台本に落とし込んだんじゃないかと思うけど、こんな壮大な話の設計図を作るのは並大抵じゃない。

ストックホルムのオリンピックに初めて日本人が参加したとき、選手は金栗四三(中村勘九郎)と三島弥彦(生田斗真)のたったふたりだけ。

終盤、時は流れ、自国で東京オリンピックを開くに至った日本。
そこへやはり二人だけで参加することになった「コンゴ共和国」。
急なエントリーに、スタッフはあわてて国歌用の演奏曲を練習。国際電話でメロディーを聴いて、譜面に書き起こしをする(楽譜を書いている人は、大友良英さんの楽団メンバーだそうだ)。
ずっと見ていた視聴者は、そこに、異国へふたりだけで出場した時の金栗と三島の緊張と不安と晴れがましさを、コンゴの選手に重ねただろう。

初めてオリンピック委員会から日本へ招待状が届き、嘉納治五郎(役所広司)は、「それって面白いの?」と自問し、周囲にも問いかける。
そして、最終回、いまはもう亡き治五郎の幻が、田畑政治(阿部サダヲ)の前に現れ、
「面白い! 実に面白かった!」と告げるシーンは、

「ああ! あのときとつながった!」と見ながらわたしも感無量だった。

そして、64年の東京オリンピックに至るまで、を描きながら「サイドストーリー」ではなく「政治と戦争と平和」を大きな幹として描き切ったのが特徴だろう。
なにせ、大河ドラマにムソリーニやヒトラーが出てくるんだよ(;´∀`)。
参加するのがやっとだったオリンピックなのに、それが政治に利用され、ベルリンではもろに「国威発揚」の場となり、日本も同様の道をたどりかねなくなる。
「今の日本は世界に見せたい日本ですか?」
田畑のセリフ、ああ、これってまさに21世紀の日本人にも問いかけてほしいセリフだ。

最終回で、晴れがましい開会式に集った、かつての五輪選手や体育協会のメンバーたち。
しかし、つい21年前には、神宮の杜の同様のスタジアムから、学徒出陣の壮行会がおこなわれていたのだ。
そのシーンが挿入され、平和であることの素晴らしさが、よりしみじみと見る者に実感させられる。

最終回が東京オリンピックそのもののお話なので、開会式やバレーボールやマラソンのシーンを持ってくるのは普通だけど、そこに「直前に出場を取りやめたインドネシアと北朝鮮」のこと、その両国の国旗を、国旗担当の職員たちが舞台裏から掲げていたエピソードを入れてしまうところが、このドラマの凄い所。

志ん生の弟子「五りん」は、女性アスリートの先駆けだったシマ(杉咲花)が祖母であり、シマは関東大震災の犠牲に。その娘・りく(杉咲花の二役)は、金栗四三の弟子だった小松と結婚するが、小松は満州でソ連軍に殺される。
そして死ぬ直前、満州に慰問に来て、戦後の混乱で帰国できぬままだった志ん生の「富久」を聞いた感激を「志ん生の富久は絶品」としたためた絵葉書を内地へ送った。
こうして物語が進むにつれ、五りんと金栗四三、志ん生がゆっくりとリンクして、パズルのピースが終盤、キッチリとつながっていく。

最終回のさらに終盤、金栗四三が、子供時代の姿に戻り、暗いトンネルを駆け抜けていくシーンは、思わず涙しそうだった。
トンネルの向こうには必ず出口がある、明るい光がある、という暗示であり、それはあの名作ドラマ「あまちゃん」の最終回を思わせた。
あのときもアキちゃんとユイちゃんがトンネルのむこうへ、震災後の復興の新しい未来へ、駆けて行く名シーンだった。

まだまだ、「いだてん」について書いてみたいことはあるけど、とりあえずはこれぐらいで。
ナレーション、美濃部孝蔵(のちの志ん生)、金原亭馬生、古今亭朝太(いずれも志ん生の息子)と4役も演じた、森山未來の芸達者ぶりにも感銘。
そして、大好きな役所広司さんのTVの代表作になったのは間違いないです。
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