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2019年12月16日09:34

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映画「カツベン!」

幼い頃、俊太郎の住む村にやってきた「活動写真」の撮影隊。時は大正の初め。
仲間と周囲をウロチョロしていた俊太郎は、それが芝居小屋で上映されたとき、自分たちが映り込んでいるのにいるのにびっくり。
さらに、無声映画にセリフと状況説明を加える、“活動弁士”の、熱気と臨場感あふれるしゃべりに魅了された。
貧しい暮らしの俊太郎は、活動写真を見られるお金がなく、梅子という女の子の手引きで、こっそり秘密の入り口から中に入っていた。

だが、ある日、その入り口がふさがれてしまっていた。
もう、活動写真は見られない。
俊太郎はいつか活動弁士になることを、梅子は女優になることを夢見て別れたのだった。

そして10年後、俊太郎(成田凌)は、待望の活動弁士に・・とはいかず。
売れっ子で、俊太郎の憧れでもあった山岡秋声(永瀬正敏)の名をかたる、「ニセ弁士」となり、上映された町ごとで泥棒を働く盗っ人一味に、心ならずも加わっていた。

そんな暮らしがいやで、俊太郎は盗っ人団から、戦利品のお金を持って逃走、流れ着いた町の「青木館」という活動写真の上映館で働くことに。
青木館は館主(竹中直人)と気のいいおかみさん(渡辺えり)の夫婦が経営。
そしてそこはクセ者ぞろい。
自信過剰のイケメン弁士(高良健吾)、職人気質の映写技師(成河)、三味線、鼓、クラリネット演奏のメンバー(徳井優、田口浩正、正名僕蔵)。
雑用ばかりの俊太郎の前に、あの梅子(黒島結菜)が現れ、しかも彼女は活動写真の女優として「松子」という芸名になっていた。

しかし、青木館のライバルであるタチバナ館の社長(小日向文世)は、青木館つぶしを画策、高慢ちきな娘(井上真央)ともども、青木館へのいやがらせや、弁士の引き抜きをもくろみ、俊太郎もそれに巻き込まれ、さらにかつての盗っ人団、さらにニセ弁士を追っていた刑事(竹野内豊)まで加わり、大混乱。

活動写真のフィルムを荒らされ、上映がかなわなくなった青木館。
映写技師が個人的にコレクションしていた、フィルムの切れ端をつなぎ合わせて、なんとか上映に持ち込むが、さまざまな映画のシーンがてんでばらばらにつながってるので、わけがわからない映像だ。
これに弁士がセリフを合わせて物語を語るなんてそりゃ不可能だ・・
青木館の若手弁士(森田甘路)は、壇上で立ち往生してしまう。
そこへやってきた俊太郎。
彼は、デタラメに流れる映像に、見事セリフを吹き込み、堂々の物語をつくりあげ、弁舌がさえわたるのだった。

周防正行監督作品。
無声映画時代の弁士が主人公だが、映画史上、一時期しか存在しなかった活動弁士に光を当て、熱気あふれるしゃべり口調と、その果たした役割を見事にクローズアップさせることに成功した映画だと思う。

加えて、周防監督の「映画愛」もうかがえる。
娯楽の少なかった時代、観客が「活動写真」を見に詰めかけて大盛り上がりになるところや、フィルムの切れ端を映写技師がコレクションするところ、可燃性フィルムのために火事が起きるところなど、明らかに「ニュー・シネマ・パラダイス」へのオマージュである。

物語は、ドタバタもののコメディが基調で、そのベタすぎるところも面白い。
追いかけようとして、看板がドーン!と落ちてきてぶつかってずっこける、なんてまるで昭和のドリフじゃありませんか。いや、そんなところが逆に今じゃ新鮮。

ほかに出演は、俊太郎の子ども時代に活動写真を撮影している監督が山本耕史、梅子に、京都で撮影する映画に出ないか、と誘う監督に池松壮亮。

さらにエンドロールのクレジットで、周防監督の奥様の草刈民代や、シャーロット・ケイト・フォックスの名前が出てきて「???」と思ったが、劇中の無声映画の上映シーンに出てくる女優さん役だったのだ。

映画と言えば、音声が入っているのが当たり前だが、弁士が熱く語り、ナマの楽団がバックで演奏する、という活動写真、いっぺん経験して見たいですね。

最後にスクリーンに出る稲垣浩監督の「日本では厳密にいえば “無声映画” の時代はなかった。それは日本では活動弁士がいたからである」という言葉にはぐっときますね。
(12月13日、大阪ステーションシティシネマ)
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