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2021年04月25日21:32

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バーンスタインとベルリンフィルのマーラー9

思うのだけど、音楽は心の中そのものだ。
緑内障が深刻化してからは、マタイ受難曲とマーラーの9番(1楽章)と、あとは坂井泉水ばかり飽きずに聴いている。死や滅びと隣り合わせの曲ばかりだ。

手術後、眼圧が健康人並みに測定され、大量の薬が減り、深い霧から像が見えてきたときは解放感があった。
そうすると、同じマーラーでも、復活が聴きたくなった。特に、癌の手術から復帰したアバドが、ルツェルン祝祭オケという、新しい自身のスーパーオケを振った復活が無性に聴きたくなった。が、いまはスピーカーはCDからハードディスクに一度移行するので、この作業が面倒である。凝らなければすぐできるのだが、マニアなのでいろいろ手順をふむと、たまにしかできないのだ。

しかし、眼圧は、視界がクリアになった段階でいちど跳ね上がるという、妙な特徴があるそうだ。確かに高眼圧に戻り、縮瞳の目薬も処方された。霞んで暗い。きつい飲み薬も再開。眼圧とダイレクトに関係はないようだが、光視症といって目の端がピカピカ光るのが増えて、これも不安でいっぱいになる。

こうなると、復活など聴く気はなくなり、マーラー9番の中で、いちばん危機的で厳しい演奏はなんだろうか?、と考える。
そうすると、手持ちの中で、ハードディスクに入っているものでいうと、バーンスタインの名前が浮かぶのは当然だろう。

イスラエルフィル・コンセルトヘボウのものもあるが、いくつかの理由から、1979年のベルリンフィルとの唯一の共演を選ぶ。
これは空前絶後の演奏だ。ベルリンフィルという、カラヤンが滑らかに磨き上げたという意味で絶頂期を迎えていた楽器が、ささくれだった汚い割れるような、絶叫調の連続となる。
歴史的な背景として、ユダヤ人虐殺があったドイツの世界一の名門に、ユダヤ系のアメリカ人スターが単身乗り込んだ、カラヤンとライバル関係で本拠地に一度きりの対決に来た、ヨーロッパの分厚い文化にアメリカ人が挑んだ、など、があり、これは、ちょっと想像がつかないぐらいの大きなイベントである。

それに打ち勝った演奏は、凄絶という言葉があてはまる。
よくいわれる、退屈な2楽章や3楽章でさえ、緊張感がある。
しかし、名人の奏者としては、とにかく全力で叩け、みたいな指示で、どうだったのかと思う。
バーンスタインのウィーンフィルリハーサルビデオというのがあって、かなり前に見たが、ひとつだけ覚えているのは、マーラーのリハーサルで、ひとしきり演奏して、「美しい、でもこれはマーラーなんです」みたいな言葉。
つまりバーンスタインにとって、マーラーは調和でもテクニックでもなく、狂気だということ。

だから、2021年に(コンサートは結局ないのだけど)、家族連れやカップルで、ウエストサイドストーリーのバーンスタインを、また、婦人が教養をつけるために、これを聴きにきたらどうだろうか?
これは気が狂った人の、異常な心理の音楽だ。宗教団体のコアなイベントに急に参加させられたような、迷惑な感じになるのではないか。
しかし、世界大戦の傷を知っている人たちには普遍性を持つだろう。

なぜ私はこんな世界に、こんな生まれ育ちで、滅びるために存在するのか?

私は、真に苦しい気持ちで共感して聴いていた。もし芸術の価値が苦しみの深さで測れるのなら、そのときはこういう演奏が最上位にくるだろう。
しかし、強烈すぎたか、この演奏を聴いて目を開けたときに、どうも再出血していたようで、片目が暗い。そして、その週におそろしい眼圧で、グッタリと点滴を受けることになった。
今週は怖くて続きが聴けなかった。

音質は、FM放送のエアチェックがマニアの間で神聖化されていて、その海賊盤もあり、これはバーンスタインの唸りやため息がノーカットで入っているという。
バーンスタインの死後、ドイツグラモフォンが放送局のテープよりCD化。
OIBPと、エソテリックSACDも出る。
そして、本家グラモフォンのSACDだが、初版は不良品で、音量レベルが低すぎて最大ボリュームでもどうかとか。クレームがあって、急遽交換になったものは、バーンスタインの唸りなどがけっこう入っていて、ありがたいという。(日本企画のこういうSACD化で、本国がいい音源をくれない感じがわかって嫌なエピソードだ)
ハイレゾもあって、これはSACDの交換後と同じはず。

私は、最初のグラモフォンCDと、OIBPと、ハイレゾを持っている。
OIBPは嫌いなので、どこにあるのかも不明。ハイレゾは、なぜか音のバランスがよくない。評判のいい交換後のSACDと同じなのだろうか?
普通にオリジナルのCDは、中古500円ぐらいで売っていたりするが、リッピングして、音質はバランスがよく生々しさもあると思う。海賊盤で唸りやため息を全部聴いてみたい気もするのだが・・・
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コメント

  • mixiユーザー

    mixiユーザー2021年04月25日 23:45
     バーンスタインとベルリンフィルのマーラー9番については、(曲そのものというよりは、カラヤンのエピソード、鶏肋の故事との関係で)以前、私も日記に書いたことがあります➝https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1937939793&owner_id=22841595

     今回のbswanさんの日記は、ほとんどバーンスタインとベルリンフィルのマーラー9番について書かれていますが、チラッと出てくる坂井泉水さんの歌を今のbswanさんがよく聴いておられるというのも、「音楽は心の中そのものだ」というお言葉を例証するものだと言ってよいように思われます。本当に目が大変な状況にありますが、「負けないで」。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2021年04月26日 00:19
    > mixiユーザー 
    ありがとうございます。結果がわかるのに、もう2か月ちょっとかかりそうです。コロナ禍に似て、長期戦ですね。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2021年04月26日 00:28
    > mixiユーザー 
    カラヤンの話は初めて読みましたが、これは、カラヤンを曹操のような悪役にしたいストーリーに思えます。
    どちらかというと、カラヤンはこのときのバーンスタインを意識しまくりで、1979年にマーラー9番のレコーディングしてますが、なんとこれが、バーンスタイン10月に対して11月。
    それで勝てた気がしなかったのか、1982年にもしつこくライブで取り上げてレコーディング。これは名演です。

    フルトヴェングラー相手にも、フルトヴェングラーが演奏した直後に同じ曲を振って、「演奏を盗んだ」的なことで徹底的に嫌われています。
    しかし、超ビッグネームの十八番相手に、こういうことをやるのは、ある意味では強烈な自信ですね。

    曹操と関羽の話は、私も、少年版かなにかで読んだだけですが、お気に入りです。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2021年04月26日 15:26
    バーンスタインのベルリンフィル登壇について、少し補足すると、アムネスティ・インターナショナルがお金を出してオケを借り上げた公演でした。つまり、カラヤンの方には、拒否権がありませんでした。
    お書きになっているとおり、カラヤンはマーラーの魅力に気づき、9番を勉強・録音を予定していました。
    スタジオ録音は、美しい演奏ながら、自分の音楽にはしていなかったのでしょう。また、スコアに詳しい人によると、演奏ミスもあると言います。
    バーンスタインの方は「カラヤンが、自分のボウイング(弓の上げ下げ)を盗んだ」と言ったとも報じられます。(「ナチ野郎」に対するアメリカ人特有のジョークでしょう。)
    カラヤンの方は心中穏やかでない。実演経験を重ね、とびきり美しい演奏を行い、ライブ録音しました。(交響曲の正規録音としては、カラヤンにとって初めて、かつ、生前発売された唯一のライブではないでしょうか)

    カラヤンのマーラーをめぐっては後日談があって、1980年代後半、カラヤンがウィーンで第6番「悲劇的」を演奏する機会があり、バーンスタインが面白がって、終演後の楽屋を訪問し、二人きりで面会したそうです。そこで話された内容は、明らかにされていません。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2021年04月27日 00:29
    > mixiユーザー おもしろいエピソードをありがとうございます。80年代後半に、ウィーンフィルとの悲劇的というのは興味深かったです。残っていたら聴いてみたいです。
    カラヤンのマーラー9番は、今日聴いてみていましたが、カラヤン節になりきっているかな?、どうかなというところですが、緊張度が高く美しい名演に思えます。
    しかし、バーンスタインに心底共感してしまうと、表面的に磨いているとか言いたくなってくるのは、ちょうどフルトヴェングラーファンと同じですね。
    ただ、途中で左胸が痛くなり、怖くなって演奏を止めました。たぶん、目のために不自然な姿勢で寝ることになったので、筋肉痛と思いますが。最近、マーラー9番を聴くと、どうもいろんなことが起こり、ちょっと聴くだけで命がけです。

mixiユーザー

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