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2020年12月15日02:03

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アーノンクールの「運命」から

最近は、kindleで本を買ってしまうし、職場の位置から、リアル本屋に行かない。
今日たまたま寄って、「レコード芸術」誌を立ち読みした。
ベートーヴェンの「名曲名盤」投票をやっていた。もう何十年もやっているもの。
気軽に見ていたら、ちょっと衝撃を受けた。
何十年も、交響曲4・5・7番の1位常連の、カルロス・クライバーが、0票とか1票しかない。
フルトヴェングラーもあまりない。
カラヤンも、アバドも、バーンスタインも、ラトルすらほとんどない。
パ-ヴォ・ヤルヴィも一世を風靡したが、それですらない。

名前を知らないような指揮者とか、無名のオーケストラも多い。

まあ、新しい世代の、極東の評論家がいきがって変な投票をしてるだけだ、と、鼻で笑ってもよかったのだが、あまりそういう気分でもなかった。

なんとなくわかっていたのだ。
もう、カルロス・クライバーとかが神様として、若い世代も含めて新鮮に感じられ続けるような魔法はないのだと。
マイケル・ジャクソンを、若者がいつの時代でも好きだろうということもない。
クライバーの録音に心酔し、いまの自分のオーディオの水準では、聴き飽きるのがもったいない、大事に聴かずに取って置いて、オーディオを育てようとやってきた私ですら、オーディオに太鼓判を押せそうないま、そこまで聴く気がなくなっているのだから。

また、良いことだとも思った。
もう、ベストワンのレコード1枚だけを選んで、後生大事にノアの箱舟に積む時代でもないのだ。
録音なんか無数にできるし、すでにあるし。
もともと、アプローチなんか演奏家の数だけ無限にあるのに、最高の一つを競うのもおかしい。世界に一つだけの花なのだ。
新しい演奏会や録音が、世界最高である可能性があるほうが楽しいし、あの演奏もこの演奏もどっちも最高であったっていい。
宇野さんや諸井さんの評論の世界じゃなくたっていいのだ。もうあの指揮者たちは神話なのだ。
だから、1位票がばらけているのも納得である。

ベートーヴェンというと、ピリオド楽器のアプローチに人気が集中しているようだ。
私が知る指揮者で言うと、クライバーに変わって首位になったのが、4番と5番のアーノンクール。
人生最後の録音でもある。
これは聴いてみたくなる。
で、いまの時代だから、ハイレゾで即日ダウンロードできた。2曲で2600円以上は、最近の相場で言うと気に入らないが、そんなこと言っていたら音楽産業は滅びてしまうので寄付した。演奏会に行ったらすごい額なのだから。

アーノンクールは、玄人評価が高いが、モツレクの旧盤以外は、流れの悪さが目立って、感心したことがあまりない。
しかし、このレコードは確かにただならぬものだった。
4番は、キャラが違うというか、音色は面白いが、やはりクライバー節の魅力にかなうとは思えない。
ただ、5番に関しては、確かにクライバー以来の衝撃性があった。
クライバーは、何が一番大事か聞かれて「流れを止めない」と答えたというような話があった。
それでいえば、アーノンクールはつっかえまくる。縦に、杭を打ち込んでいくような音造り。
これが、5番にハマった! ベートーヴェンの実験的な、孤独な精神世界が、抽象化のカラカラの骨組みのように響き、軋みのように金管が鳴く。

録音も、昔のソニーのクセっぽさが減って、鮮やかなハイレゾで、クライバー時代より優位性がある。
実際は同い年だと思うが、時代が変わったと思わせられた。

クルレンツィスの5番、1楽章を聴きなおすと、ちょっと作為的にも思えるが、先日聴いたときよりも素直に、新しい時代の1個性のアプローチとして受け入れられた。

だがここで大逆転!
今日、気になる2枚のCDをリッピングした。
ひとつは、カラヤンとウィーンフィルのドヴォルザーク8番。35分ぐらいで1枚のCDという、カラヤン晩年ならではの贅沢。
これは、30年も前に、最初のステレオでも、美しい音に驚嘆したが、それはベスト100的なCDで、いつしか処分してしまった。
それを、最近、中古で初期盤を入手してリッピングしたものだ。

これはもう、流麗そのもの、美しい音であふれかえり、新鮮な音の処理も多く、カラヤンの最高傑作ではと思える。録音も、超定番のグラモフォンチーム。ハイレゾにも、風格では負けない。
90年代の、アバドとベルリンフィルのものなどを最近聴いていたが、これだけでいうと格が違う。

もう1枚、いつか書きたいが、バーンスタインとイスラエルフィルの「新世界」、超スローの2楽章の冒頭を聴いたが、これも魂の即興。今の時代でも、こんな大胆な芸をオケに指示できる大家がどれだけいるだろう。

これだけの名盤たちを1時間以内で流し聞きしないといけない、現代人の忙しさよ!!
しかしクラシック音楽は素晴らしい。
6 8

コメント

  • mixiユーザー

    mixiユーザー2020年12月15日 02:29
     いきなり余談めいた話になってしまって恐縮ですが、アーノンクールという人はオーマンディのファンからは人気があります。
     アーノンクールは生前、今日のアメリカのオーケストラをダメにしたのは、ライナーやセルなどのハンガリー系の亡命指揮者だという趣旨のことを語ったことがありましたが、そのハンガリー系指揮者の名前として、彼はオーマンディの名前を挙げなかったのです。アーノンクールとしては、そもそもオーマンディは相手にもしなかった、あるいは単に忘れていただけのことだったのかもしれませんが、オーマンディがダメな指揮者の典型としてよく引き合いに出されることにうんざりしていたオーマンディファンは、この発言を聞いて、おぉ、こいつは分かっているなと喜んだということです。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2020年12月15日 12:33
    アーノンクールの5番は、終結部が、ここまでやるのかと吃驚しました。
    全集録音していたら、どうなっていたことか、本当に惜しまれます。
    クルレンツィスの5番は、4楽章で、コントラファゴットという低音楽器が聴き慣れない音のうなりを上げます。
    他方、カラヤンのドヴォ8,バーンスタインの新世界もまた、彼ら独自の美学に貫かれ、本当に素晴らしい。
    名曲をさまざまな名演で楽しむ。趣味の喜び愉しみですね。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2020年12月15日 12:52
    やっぱり巨匠の時代というのはあったと思います。トスカニーニやクレンペラー、カラヤンやバーンスタインといった人々の代わりは今日見いだせないと感じています。昔、長岡さんの外盤ジャーナルにショルティの「指輪」が登場し、「これを超える録音は永久に出ないだろう」とあって、「永久」とは大げさな、と思ったのですが、ま、それが巨匠の時代ということなんだと思います。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2020年12月15日 13:56
    アルノンクールの「5番」は私も持っています。
    「流れを止めることだ」っていう感じの演奏で、笑っちゃいました。
    「レコード芸術」の前の号で、ブラームスの「4番」のトップはエリオット・ガーディナーの録音でした。
    ところが「2番」では、なんとピエール モントゥーの録音がダントツでトップだったと記憶します。
    名曲と言われるほどの楽譜には、様々な時代の様々な様式での演奏を楽しむ。
    そういう時代が来たんでしょうね。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2020年12月16日 01:19
    > mixiユーザー 
    アーノンクールがフィラデルフィアサウンドを評価していたと考えると愉快ですね。
    なにか豊かな贅肉を嫌う印象があります。セルを批判するのは意外ですが・・・
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2020年12月16日 01:21
    > mixiユーザー 
    一昨年だったか、コパチンスカヤとクルレンツィスの実演にふれて、私のクラシックの止まっていた時計が動き出したのでした。
    古典もいいのですが、新解釈もよしですね。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2020年12月16日 01:30
    > mixiユーザー 
    いまはYouTuberが活躍する時代ですから、天才とか巨匠とか、世代や時代を代表して信仰を受ける人は出にくいかもしれません。
    1992年に急死したカリスマロック歌手の尾崎豊の、遺書とされるものが何年か前に出てきて、ずいぶん大げさな表現で驚いたものです。世界を背負うもののような。
    長岡評論についても、カリスマとして夢中に読んだものですが、いまならネット情報に埋もれそうな気がします。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2020年12月16日 01:34
    > mixiユーザー 
    ガーディナーのブラ4が1位とは、聴いたことはないのですが、ちょっと、もう何かに飽き果てた人たちのチョイスという感じもします。
    人生は長いのか短いのか。長いなら、彼らが投じた票の盤を聴いてみたい気がいたします。

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