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2021年01月28日10:24

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米大統領選挙、陰謀論と嘲わずに調査報道せよ〜施光恒氏  

 九州大学教授・施光恒(せ・てるひさ)氏は、人権・国際正義・ナショナリズム等について注目すべき研究をしている政治学者である。
 施氏は、産経新聞令和3年1月20日付に、「米国民の分断解消に必要なこと」と題した記事を書いた。
 施氏は、この記事で1月6日の米連邦議事堂侵入占拠事件に触れ、「なぜトランプ陣営の呼びかけに応じ、あれだけの大群衆が全米各地から集まったのか。不正選挙に関するトランプ氏側の主張が大手マスコミや政府機関に不当にもほとんど取り上げられていないと感じたからだ。大手マスコミの見方では不正選挙の主張は『陰謀論』にすぎない。しかしトランプ陣営が進行役を務め各地の議会で開いた公聴会では非常に多くの宣誓供述書付きの証人が名乗り出ているし、大規模な不正があったとする大統領補佐官ピーター・ナバロ氏による詳細な報告書もある。実際、各種世論調査では共和党支持者の大半が不正選挙はあったと感じている」と書いている。
 わが国の有識者が全国紙上にこのような事実を書くのは、まれである。また、全国紙がこのような見解を載せるのも、ごく少ない。大統領選挙の結果が確定し、こうした意見を出しても社会的な評価を失う危険性がなくなったので、ようやく出始めたのかもしれない。施氏は、国立大学かつ旧制帝大の九州大学の現職の教授である点も特筆されよう。
 施氏は、次のように続ける。
 「大手マスコミはこれらもやはり一笑に付すのかもしれない。だが、かなりの割合の国民を陰謀論者と嘲ってしまえば民主主義は成り立たない。国民融和を果たすには、不正があったと考える国民が多数に上るという事実を見つめ、遅ればせながら超党派的な調査委員会を作るべきだ。またマスコミも否定するだけでなく、調査報道を行うべきだ。例えば、証人に独自にインタビューしてみるべきである。そうしなければ多くの米国民が大手マスコミに不信を抱き、世論の分断は加速化するだけだ」
 また、施氏は、米国社会の分断について、次のように述べている。
 「そもそも米国民の分断が生じたのはトランプ氏のせいではない。1990年代後半ごろから米国では『エリート層対庶民層』の分断が社会問題化していた。庶民層からの後押しで2016年の選挙で当選したのがトランプ氏である。
 分断を生んだ原因はグローバル化の進展である。グローバル化が進めば、グローバルな企業や投資家と、一般国民との間の利害は大きく乖離する。グローバルな企業や投資家は政策形成に大きな影響を及ぼすがゆえに、各国の政治は各々の国民を第一とするものではなくなった。(略)
 トランプ氏の『米国第一』というスローガンはグローバル・エリートの手から庶民に政治の主導権を取り戻すという意味合いが強い。こうした背景を顧みずトランプ陣営や支持者の声を抑圧しても米国民の分断は解消されない。庶民の声に真摯に耳を傾けると同時に、グローバル化の歪みの是正を他国との連携の下、真剣に模索すべきだ。そうしなければ大手マスコミやIT企業、政府諸機関に対する庶民層の不信は増し、民主国家・米国の土台は揺らぐばかりだ」と。
 以下は、施氏の記事の全文。

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●産経新聞 令和3年1月20日

https://special.sankei.com/f/seiron/article/20210120/0001.html
米国民の分断解消に必要なこと 九州大学教授・施光恒
2021.1.20

≪背景にある大衆の疎外感≫
 トランプ氏に関する最近の米国や日本の大手マスコミに載る論評や報道を見ていると違和感ばかりを覚える。米国社会の分断をいっそう深め、民主国家・米国の土台を揺るがせ、ひいては東アジアの安定を損なうものではないか。
 大半の論評や報道は以下のようなものだ。米国民の分断を煽(あお)ったのはトランプ氏である。今月6日に議事堂への乱入が生じ、死者が出たのはトランプ氏のせいだ。だから弾劾されて当然だ。トランプ氏や支持者の言論をツイッターなどが規制するのも仕方がない。
 このような報道や論評は米国社会の分断の原因を大きく見誤っている。これでは分断は解消されるどころか深まる一方である。
 6日の議事堂への乱入の件について、一方的にトランプ氏側に全責任を課し糾弾しても問題の解決にはつながらない。むろんトランプ氏の側にも責任はある。大集会を企画するのであれば、アンティファなど反対勢力による攪乱(かくらん)も予想したうえでしっかりとした警備を手配すべきだった。
 だが、もっと大きな視野で事態を見つめる必要もある。なぜトランプ陣営の呼びかけに応じ、あれだけの大群衆が全米各地から集まったのか。
 不正選挙に関するトランプ氏側の主張が大手マスコミや政府機関に不当にもほとんど取り上げられていないと感じたからだ。大手マスコミの見方では不正選挙の主張は「陰謀論」にすぎない。
 しかしトランプ陣営が進行役を務め各地の議会で開いた公聴会では非常に多くの宣誓供述書付きの証人が名乗り出ているし、大規模な不正があったとする大統領補佐官ピーター・ナバロ氏による詳細な報告書もある。実際、各種世論調査では共和党支持者の大半が不正選挙はあったと感じている。
 大手マスコミはこれらもやはり一笑に付すのかもしれない。だが、かなりの割合の国民を陰謀論者と嘲(あざけ)ってしまえば民主主義は成り立たない。国民融和を果たすには、不正があったと考える国民が多数に上るという事実を見つめ、遅ればせながら超党派的な調査委員会を作るべきだ。

≪言論規制の異常さ≫
 またマスコミも否定するだけでなく、調査報道を行うべきだ。例えば、証人に独自にインタビューしてみるべきである。そうしなければ多くの米国民が大手マスコミに不信を抱き、世論の分断は加速化するだけだ。
 トランプ氏に対するツイッターなど大手IT企業の対応も異常だった。トランプ陣営だけでなく支持者のアカウントにも大掛かりな規制をかけた。驚いたのは、保守派が多く集まるパーラーというSNSは、アマゾンにホストを置いていたのだが、アマゾンがサーバーの使用を禁じたため、パーラー自体が使用できなくなった。保守派の情報交換を事実上禁止してしまったと言っても過言ではない。
 トランプ氏がかつて出演した映画から氏の登場シーンを削る動きまである。まさに中国やかつてのソ連などの権威主義国家を思い起こさせる情報統制である。
 規制をかけるIT企業やそれを許容する大手マスコミは、トランプ陣営や支持者の情報発信は治安を脅かす恐れがあると言う。だが中国など権威主義国家が言論統制を行う際の理由付けも大半の場合、治安の維持であることを忘れてはならない。

≪分断の主因はグローバル化≫
 そもそも米国民の分断が生じたのはトランプ氏のせいではない。1990年代後半ごろから米国では「エリート層対庶民層」の分断が社会問題化していた。庶民層からの後押しで2016年の選挙で当選したのがトランプ氏である。
 分断を生んだ原因はグローバル化の進展である。グローバル化が進めば、グローバルな企業や投資家と、一般国民との間の利害は大きく乖離(かいり)する。グローバルな企業や投資家は政策形成に大きな影響を及ぼすがゆえに、各国の政治は各々(おのおの)の国民を第一とするものではなくなった。
 例えば、日本の高度経済成長を支えた元大蔵官僚でエコノミストの下村治氏は1980年代後半の時点ですでにこれを予想していた。「多国籍企業というのは国民経済の利点についてはまったく考えない。ところがアメリカの経済思想には多国籍企業の思想が強く反映しているため、どうしても国民経済を無視しがちになってしまう」(『日本は悪くない 悪いのはアメリカだ』1987年)。
 トランプ氏の「米国第一」というスローガンはグローバル・エリートの手から庶民に政治の主導権を取り戻すという意味合いが強い。こうした背景を顧みずトランプ陣営や支持者の声を抑圧しても米国民の分断は解消されない。
 庶民の声に真摯(しんし)に耳を傾けると同時に、グローバル化の歪(ゆが)みの是正を他国との連携の下、真剣に模索すべきだ。そうしなければ大手マスコミやIT企業、政府諸機関に対する庶民層の不信は増し、民主国家・米国の土台は揺らぐばかりだ。(せ てるひさ)
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