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2020年11月18日10:17

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米大統領選挙・続8〜バイデンが大統領なら政策はどうなるか(その3)

 バイデン政権が実現した場合、米国の外交はどうなるか。有識者の発言の続き。

<外交政策全般(中国除く)>

◆キヤノングローバル戦略研究所研修主幹の宮家邦彦氏(東洋経済オンライン令和2年11月10日)
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/25125

――バイデン政権になったとき、外交政策で変わらない部分と変わる部分とは何ですか。
 「まず変わらない点については、戦略的な優先順位だろう。アメリカにとって最大の懸念は中国だ。次がロシア、その次がイラン。北朝鮮はトップ3には入ってこない。今回の大統領選でもまったく北朝鮮については触れられなかった。イッシューではないということだ。アメリカ国民は北朝鮮のことをよく知らない。
 ただし変わるのはアプローチの仕方やスタイル、レトリックなどだ。中国に対してトランプ氏は明らかにけんかを売っていた。その挑発に中国は乗った部分と乗らない部分があった。バイデン氏がトランプ氏と同じようにするとは思わない。
 もちろん、オバマ政権1期目のように、中国に対して希望を持って働きかけるやり方は失敗が明らかとなり、オバマ政権の2期目から対中政策は徐々に変化し始めた。その方向は基本的には変わらないが、ニュアンスやレトリックは変わるかもしれない」

――対ロシア政策はどうですか。
 「非常に重要だが、トランプ氏のようにロシアに対して奥歯にものがはさまったようなアプローチはしないのではないか。トランプ氏は選挙に介入されようが何も言わなかった。
 これも国務長官が誰かにもよるが、バイデン政権になれば、トランプ政権よりもロシアに対して厳しくなるのではないか。NATO、同盟国と協議しながらオーソドックスな形でロシアに対峙していくと思う」

――対イランについては核合意への復帰が焦点とされます。
 「復帰するにしてもこれも条件つきとなる。イラン側も相当、合意を踏み外しているため、それをやめさせるだけでなく、より厳しい条件をつけてイランの出方を見ながらやるのではないか」

――トランプ氏は立て続けにイスラエルとアラブ首長国連邦、バーレーンとの国交正常化で仲介役を果たしましたが、今後はどうなるでしょうか。
 「あれは現状追認であって、中東和平の解決にはまったく資するものではない。お金の面ではいいかもしれないが、パレスチナ問題を棚上げにしてイスラエルとアラブとの関係がよくなるわけがない。今の関係を壊すということではないが、バイデン氏はトランプ氏とは同じアプローチはとらず、もっと慎重に対応していくことになるだろう」

――アメリカの外交政策上、北朝鮮問題の優先順位は低いということですが、バイデン氏はどういう対応をするでしょうか。
 「これは人権問題なので当然やってもらわなければならないが、あれだけ米朝で首脳会談をやっても結局、北朝鮮は核兵器を放棄する意思がないことがわかった。バイデン氏は拉致問題に対する理解はあると思うが、具体的にどこまで進展するかはわからない。
北朝鮮というのは、アメリカとの関係が悪くなればなるほど日本に対して関心を向ける。いずれ日本が動くチャンスが生まれるだろう」

――TPPを含め、バイデン政権での日米関係についてはどう見ていますか。
 「TPPには戻るだろうが、アメリカ国内の事情を考えた場合には、これもやはり条件をつけるだろう。日本としては追加の条件をつけられたら困るので、そこはせめぎ合いになる。
 バイデン氏は、まずはアメリカの経済を立て直さなくてはならないと考えている。自分たちだけではできないから、同盟国にもアメリカへ投資せよなどと要求してくるだろう。彼らが国内経済を立て直そうとすればするほど、日米間の貿易、投資、市場開放といった、昔やったような問題が再び頭をもたげてくる可能性は考えておかなくてはならない。
バイデン氏としては、次の選挙を考えたときには、(激戦州にまたがる)五大湖周辺のラストベルト(さびた工業地帯)に対して常に配慮しなくてはならない。トランプ氏とレトリックは変わるかもしれないが、『内向きのアメリカ』は変わらず、望んでいることは(トランプ氏と)基本的に同じだろう。そういう意味で日米関係が急によくなるとは思わない」

――菅政権としてはどういう姿勢で日米関係に臨むべきでしょうか。
 「粛々とやればいい。バイデン氏もオバマ政権の副大統領時代に日本と付き合いがあり、別にサプライズがあるわけではない。トランプ氏と違うアプローチをするだろうから、日本もそれに合わせてよりよい成果が出るようにすればいい。日米双方ともオーソドックスで現実的なアプローチになるので予期はしやすいし、不確実性は下がる。ただ手強さは変わらないということだ」

<対中政策>

◆キヤノングローバル戦略研究所研修主幹の宮家邦彦氏(東洋経済オンライン令和2年11月10日)
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/25125

――対中国では具体的にどのようにアプローチするのでしょうか。
 「まずは対話をしようとするだろう。初めからけんかを売っても仕方がない。ただそれで戦略的な問題で妥協をするようなことはできない。
 外交・防衛の閣僚・次長レベルの陣容がわからないうちに具体的なアプローチの仕方について語るのは早いが、バイデン氏はおそらく、トランプ氏が中国に対して行った制裁を何の条件もつけずに一方的に解除することはしないだろう。一度やったものはタダでは戻さないのではないか。成功するかは不明だが、条件をつけて中国に自主的な譲歩をさせる努力をすることになろう」

◆東京財団政策研究所主席研究員の柯隆氏(東洋経済オンライン 令和2年11月10日)
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/25126

――中国側は今回のアメリカ大統領選をどのように注目していましたか。
 「アメリカ以外の国で選挙を最も注視していたのは北京(中国)だと思う。大統領選の結果次第で、中国にとって経済と政治の面で死活問題になるからだ。
 まず政治の面から言うと、トランプ氏とバイデン氏のどちらが当選するかで影響はまったく違ってくる。バイデン氏はイデオロギーにこだわり、トランプ政権と(対中強硬姿勢は)そう変わらないという見方もあるが、それは半分正しく、半分は間違っている。
 半分正しいというのは、中国に対してトランプ氏が実行した政策は撤回されることはないということだ。人権や民主主義、ウイグルやチベット、香港などに関する政策はこのまま継続される可能性が高い。
 一方、間違っているというのは、バイデン政権になれば交渉のやり方が変わる可能性が高いことだ。
 トランプ氏は非常に気まぐれな大統領で、次の一手がまったく読めず、その点は中国の政治指導者もたいへん困っていた。習近平国家主席とトランプ大統領はこの1年ぐらい会談していないが、トランプ氏は非公表の約束を無視して会談の内容を勝手に公表するため、中国は苦しい立場に追い込まれた。中国共産党の独裁政治がいちばん苦手なのが「透明性」だ。
 これに対してバイデン氏はルールに則って紳士的にゲームをすると考えられる。多少の裏やスキャンダルはあるにせよ、性格的には決してきまぐれではないと思う。その点は中国にとって安心できる最大の材料といえる。彼と会話して1つずつ約束をしていって、徐々に(米中対立を)ソフトランディングに持っていこうというのが今、北京が考えていることだ」

――経済面ではどうですか。
 「米中はいま、ハイテク技術をめぐる覇権争いを行っているが、トランプ氏が署名した対中制裁関税やファーウェイなど中国ハイテク企業への輸出制限といった大統領令を、バイデン氏が勝ったからといってすぐに解除することはありえない。中国もそれは期待していない。
 制裁に触れないように抜け道を使ってアメリカに輸出するなど、中国は変化球を駆使して対応するだろう。そうしてアメリカの消費者に中国製品のメリットがわかるようにすれば、アメリカの中国に対する風当たりの方向性が変わり、対中政策が柔軟になるとの読みだ。これは以前からアメリカと付き合ううえでの中国のサクセスストーリーだった。トランプ氏以外の歴代大統領は就任直後は厳しい態度をとるが、遅くとも3年目には中国に対して柔軟な姿勢に変わる。
 トランプ氏は非常に毒のある人物だ。中国がいちばん苦手なのは、そうした人の話を聞かない毒の強い人物。日本でいうなら小泉純一郎さん(元首相)のような人だ。一方、バイデン氏は性格的にそうではなく、中国にとっては比較的くみしやすい相手といえるだろう」

――バイデン政権下では米中対立は緩和方向に進みそうですね。
 「トランプ氏再選なら新型コロナウイルス拡大の責任追及を含め、米中対立がさらに悪化する可能性が高かったが、バイデン政権になれば、これまで以上に問題が大きくなる可能性は低い。
 ただし、トランプ政権の後半2年間で貿易戦争が激化し、アメリカの対中感情は大きく悪化している。ピュー・リサーチセンターの調査では、アメリカ国民の73%が中国のことを好意的に思っていない。バイデン氏がいくら柔らかい姿勢で中国と付き合おうとしても、民主主義の国なので、2年後の中間選挙を考えた場合、中国に露骨に妥協すると民主党に有利に働かない。
 そのため、最初の2年間は中国と注意深く付き合わざるをえないだろう。バイデン氏の家族(次男)が中国に弱みを握られている可能性もあり、必要以上に中国を刺激せず、選挙民の批判を受けないよう慎重に対中政策を進める必要がある。

――バイデン氏は中国の人権問題に厳しい姿勢を示しています。
 「中国はそうした批判には『免疫』ができている。この何十年間、ずっと言われ続けているので、黙って聞く場面と内政干渉だとして受け入れない場面をバランスよく使い分けしながら、相手の怒りが収まるのを待つスタンスだ。同時にロビー活動を進め、ワシントンの議員を囲い込む戦略を理論的にも実践的にも身に付けている」

――台湾海峡や南シナ海での軍事的緊張感も高まっています。
 「台湾の住民へのアンケート調査では、トランプ再選なら台湾にとって有利との見方が多い。それは中国に厳しい態度を取ることで、台湾の強い後ろ盾になるとの感情がある。だが、トランプ再選なら台湾と北京の対立がエスカレートする可能性が高い。台湾への武器輸出や閣僚の派遣など北京を刺激するやり方だからだ。元々ビジネスマンのトランプ氏は相手が嫌がる弱点を突くことに関しては天才といえる。
 これに対してバイデン政権になると、台湾と北京の対立が徐々にトーンダウンしていく可能性が高い。民主党政権下でも台湾との対話や台湾海峡での安全保障政策が大きく変わることはないが、センシティブな刺激を与えることは減り、北京はホッと一息つくことになるだろう。台湾海峡での偶発的なホットウォー(武力による戦争)のリスクも減退すると見られる。
 南シナ海については、中国による既成事実化はもう残念ながら止められないと思う。経済大国化した中国自身に止めるメカニズムはないし、国際社会にもそうした力はない。何より当事者のフィリピンでさえ本気ではない。ベトナムやASEANにも力がない。人工島の増設はもう止められないだろう。
 一方で日本を含むタンカーなどの船舶が自由に南シナ海を航行できるようにしなければならず、中国と対話する必要がある。この宿題はずっと残る」

――中国の経済発展を支援しながら中国の民主化を促す関与(エンゲージメント)政策は破綻したと言われます。
 「関与政策が成り立つ方法はあるが、問題は国民感情だ。かつてアメリカ人にとって中国は脅威にはなりえない存在だった。中国への悪感情も少なかった。天安門事件やチベット問題などで一時的に感情が悪化することもあったが、基本的には対岸の火事を見るような気分で批判していた。
 ところが、トランプ政権の後半2年間でアメリカ人は、中国を完全な脅威だと考えるようになった。中国のファーウェイがインターネットを使ってアメリカの個人情報を集めているとか、テレビで報道される中国のニュースもネガティブなものばかりになった。こうした中でアメリカの対中関与政策を支える土壌が完全に流されてしまった。
 もう関与政策は復活できないだろう。アメリカの新政権は今後、中国に対して是々非々で対応していくことになる。必要なものは中国から買うし、食料などを中国に輸出する。その一方、宇宙技術や5G、ビッグデータ、AIのようなハイテク技術については管理や規制を強化していくだろう。

――バイデン政権下の米中関係は日本にどのような影響を与えますか。
 「日本政府が心配しているのは、中国に対して厳しいアメリカが日本に対して防衛予算の増額を求めるのではないかということだ。アメリカのポンペオ国務長官も10月の来日時にそれを示唆していた。その点、バイデン政権になれば予算増額の要求圧力が弱まるとみて政府与党はホッとしているのではないか。
 また、国家安全保障をアメリカに、経済を中国に依存している日本は、米中対立の板挟みに苦しんできた。台湾有事の場合、日本がアメリカ軍の後方支援をするのかどうか。中国は日本に支援しないよう非公式に要求してきたが、日本は明確な答えを出せない状況にある。
 バイデン政権なら台湾有事の可能性は下がる。危機が根本的に解決されるわけではなく、日本が根本的な戦略を持っているわけでもないが、危機が先送りできればいいというのが日本の歴代政権の考え方だ。
 経済界が心配してきたのは、トランプ政権が中国への制裁をエスカレートする可能性だった。中国に進出した日本企業の多くが対米輸出製品を生産しており、制裁が強化された場合、ベトナムなどへの工場移転を迫られ、コストが膨らむことを懸念している。その点、バイデン政権になれば、制裁強化の可能性は低くなる。
 日本国内でも半導体や電子部品の対中輸出が難しくなっている。輸出すれば制裁を受け、アメリカへの輸出もできなくなるからだ。ファーウェイなどは日本の大手企業から部品を調達できず、大田区の中小企業に買い付けに行っている。こうした悩みがバイデン政権では後退するのではないか。つまり、ビジネスの秩序が元に戻る可能性が高い。
 ただし、トランプ政権の功績の1つは中国による知的財産権の侵害に対する罰則強化だった。これまで日本企業も政府もずっと泣き寝入りしてきたが、トランプ氏が圧力を強め、中国も態度を変えてきた。日本企業が対中知的財産権侵害訴訟で勝つというかつてなかった事例も出てきた。
 バイデン氏はトランプ氏ほど知的財産権に対して中国に強硬な姿勢はとらないだろう。知的財産権はモノづくりの国である日本企業の生命線であり、それが侵害されていかないかは楽観視できない」

◆国際関係アナリストの北野幸拍氏(ダイヤモンド・オンライン)

 「問題は、親中派のバイデンは『米中覇権戦争を続けるのか?』ということだ」「筆者はズバリ、『続ける派』だ。つまり、過去にバイデンの二男は中国から大金をもらっていたが、これからは、中国と戦うということだ。なぜか?その答えは明白だ。『中国共産党打倒』は、もはや米国の『国論』になっているからだ」「バイデンがどんなに『親中』でも、『反中国共産党という国論』を覆すことはできないだろう。彼は、いやいや中国と戦うか、熱心に中国と戦うか、いずれにしても中国と戦わざるを得なくなる。筆者はむしろ、バイデンが同盟関係を再構築し、中国を追い詰めていくように感じる」
 「彼は、親中であるだけでなく、『反日』としても知られている。バイデンは2013年12月、安倍前首相に『靖国参拝をやめるよう』要求していた。安倍前首相が、これを無視して参拝を強行したので、激怒したと伝えられている。また彼は、2016年8月15日、『日本国憲法を私たちが書いた』と発言している」「米国が、事実上「日本国憲法を書いた」のは真実だが、そのことを公言する米国の政治家はあまりいない。だが、バイデンは超ベテラン政治家なので、必要ならば『日本と友好的な関係』を築くことができるだろう」
 「米中覇権戦争の勝敗は、他の大国の動きで決まる。他の大国とは、GDP世界3位の日本、近未来の超大国インド、米国に次ぐ経済規模のEU、ロシアだ。この中で、ロシアは現在、はっきりと中国側についている。欧州の首脳は概してトランプ嫌いで、米中の間をフラフラしているのが実情だ。しかし、欧州は、(略)中国への反発を急速に強めている。今後は『反中』になっていくだろう」「インドは現在、急速に反中化し、中国製アプリの禁止、中国製品の不買運動が盛んだ。中国の『愚かな行動』(註 現在の国境紛争)で、インドは米国の方に向かっている」
 「菅首相は、安倍前首相の『自由で開かれたインド太平洋戦略』を継承し、積極的に推進していく姿勢を示している。このまま進めば、日本は、米国、インド、オーストラリアなどとともに、『戦勝国』の仲間入りを果たすことができるだろう。だが、習近平の国賓訪日などを実現させると、米国からは『裏切り行為』とみなされる恐れがある。こうした行為は今後、絶対にやめる必要がある。日本の大問題は、バイデン新大統領ではなく、『国内の親中派』だ」

◆産経新聞の黒瀬悦成ワシントン支局長(産経新聞 令和2年11月10日付)

 「トランプ大統領は、1979年の米中国交正常化以降に歴代米政権がとってきた『対中関与路線』との完全決別を宣言した。習近平国家主席率いる中国共産党体制に対しては制裁関税などを通じて強力な圧力をかけ、中国を米国および世界のサプライチェーン(供給網)から切り離す『デカップリング』を進めてきた。これに対しバイデン氏は中国にとり『御しやすい相手』に映っているようだ。大統領選前の8月、米情報機関を統括する国家情報長官室(ODNI)が『中国がトランプ氏の再選阻止に向けた工作を展開している』と指摘したのも、こうした見方を裏付ける」
 「バイデン氏は、中国が米国主導の世界秩序を破壊することを食い止めたいという立場ではトランプ氏と一定程度は共通している。また、『民主党政権は中国に融和的だ』との批判を封じるためにも、当面は現政権の対中強硬政策を大枠で継続する立場を打ち出すとみられる。(略)ただ、バイデン氏は就任当初、新型コロナウイルス危機で甚大な打撃を受けた経済の再建を優先させる考えから、中国との貿易戦争については、制裁関税の部分緩和などで『一時休戦』とし、中国に譲歩する可能性も指摘されている。
 バイデン氏は『多国間主義』を重視する立場から、新型コロナ対策や気候変動問題など地球規模で対処すべき分野で中国と協調する立場を打ち出している。気候変動を政権の最重要政策に据えることが確実視されるバイデン氏が、中国からこの問題での協力と引き換えに制裁関税の緩和を求められた場合、なし崩し的に対中融和路線に引き込まれる可能性がある。
 しかも、次期政権で急進左派が主導する形で気候変動対策や雇用政策に予算が重点的に投入された場合、そのしわ寄せで国防予算が抑制され、中国をにらむ米軍の作戦行動や即応能力に支障をきたす恐れは強い。尖閣諸島(沖縄県石垣市)を含む東シナ海や南シナ海で中国が軍事的覇権をうかがう中、民主党の政策綱領は『中国問題での最重要課題は安全保障ではない』とした。その現状認識には不安が付きまとう。
 バイデン氏は昨年5月、中国を『競争相手ではない』と述べ、大統領選では中国を『敵性国』と呼ぶことを避けた。こうした認識の甘さが中国に付け入られる恐れは排除できない」

◆ほそかわの私見

 仮にバイデンが新大統領になれば、中国に対する外交は変化し、オバマ政権がそうだったように、まず地球環境や人権問題に重点をおく政策に転換するでしょう。しかし、専門家の多くは、トランプ政権の基本的な対中姿勢は、バイデン政権でも当面、維持されると見ています。なぜかというと、今や米国では、国民の70%以上が中国に厳しく対処すべきだという意見になっているからです。それを無視した政策は出来ないというわけです。そこが、オバマ政権の時との状況の違いです。
 また、ここ数年の間に、民主党と共和党が一致して、中国に対して厳しい政策を行なうための法律を作ってきました。その法律の中に、輸出管理改革法(ECRA)、国防権限法(NDAA)があり、先端技術や軍事技術を中国に盗まれないようにする方針を定めています。トランプは、中国による5G移動通信システム構築の中心となっているファーウェイへの規制・排除を行ないましたが、これは議会が作った法律に基づいて進めたものです。また、連邦議会は香港自治法、ウイグル人権法を作って、中国共産党による香港での弾圧やウイグルでの迫害を牽制する方針も定めています。
 仮に大統領がバイデンに替わっても、大統領はこうした法律に基づく外交政策を行なわねばならなりません。それゆえ、基本的な対中姿勢は維持されるという見方が多いのです。
 バイデンの外交の手法は、トランプのように力を前面に出す仕方でなく、話し合いを主としたものになるでしょう。ここで問題は、バイデンは親中派であり、息子の事業を通じて、中国からカネをもらっていたという疑惑があることです。現在、FBIが捜査しています。バイデンは中国と裏ではつながっていると見られるのです。オバマ政権もそうでした。そこに中国が付き入る隙ができる恐れがあります。バイデンは、菅首相に尖閣諸島は日米安保第5条の対象であり、米軍には防衛の義務があることを確言したと伝えられます。だが、バイデンは軍事力の行使に非常に消極的な政治家ゆえ、中国が尖閣諸島の略取を仕掛けてきた時に、実際に米軍が防衛に協力してくれるかどうかは、疑われます。
 米中和解以降のアメリカの対中政策は失敗でした。アメリカは、中国が経済的に豊かになれば民主化するだろうと期待しました。だが、中国は経済発展すると軍拡を進め、覇権の拡大を行なうようになりました。もはや米国は一国だけで中国に立ち向かうことはできなくなっています。
 トランプ政権のポンペオ国務長官は、中国の脅威の対処という課題には、「自由世界が中国を変えなければ、共産中国が私たちを変えてしまう」と強調しましたが、今や世界はそういう危機にあります。米国の政権が民主党に替わっても、このことを理解して対中政策を行わないと大きな失敗をするでしょう。
 仮にバイデン政権が誕生し、コロナ禍で甚大な打撃を受けた経済の再建を優先させるため、中国との貿易戦争を制裁関税の部分緩和などで「一時休戦」として中国に譲歩するとします。その場合、そのまま休戦状態を継続して、現状維持政策に移行する可能性が高いと私は思います。バイデンは、上院議員時代、副大統領時代を通じて、常に消極的・融和的な現状維持政策を取ってきました。発する言葉は勇ましいが、リスクを取って実行する意志がない政治家です。
 いまや認知症の進行するこの高齢者が4年間、米国のトップである間に、共産中国は台湾、南シナ海、東シナ海、インド洋、中東、アフリカ大陸で覇権主義的な行動を進め、またトランプに抑え込まれた5Gの情報通信分野では巻き返しを図るだろうと懸念します。
トランプ以前、オバマ政権で、米国は共産中国の世界戦略に押され続けました。トランプは敢然と反攻に出て、米中対決で米国の優勢を確保しました。しかし、トランプ政権が退場し、バイデンが政権を率いるようになれば、米国は優勢を失い、共産中国による世界支配が進行する恐れが強いと思います。

 次回に続く。

************* 著書のご案内 ****************

 『人類を導く日本精神〜新しい文明への飛躍』(星雲社)
https://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/cc682724c63c58d608c99ea4ddca44e0
 『超宗教の時代の宗教概論』(星雲社)
https://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/d4dac1aadbac9b22a290a449a4adb3a1

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