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2020年07月31日10:11

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仏教35〜唯識説の理論

●唯識説

◆仏教の認識論
 次に、空の思想と並び立つ唯識の理論に移る。唯識の理論に関して述べるには、まず仏教の認識論から書く必要がある。唯識論は、仏教の認識論の深化・発展だからである。
 仏教は解脱を目指す教えであり、業(行為)を生み出すのは無明であると説き、煩悩の消滅を目指す。それゆえ、その教えは、修行の実践のために心のあり方を分析する認識論が中心となっている。仏教の認識論は、六入、十二処、十二界を挙げる。
 六入とは、眼・耳・鼻・舌・身・意をいう。六根とも呼ぶ。これらのうち、5番目の身は触覚器官である。最初の五つは感覚器官であるのに対し、意は思考器官に当たる。
 六入に六境を加えて、十二処という。六境とは、色・声・香・味・触・法をいう。これらのうち、色は色彩と形状、触は熱さ寒さ等、法は考えられる事物に当たる。境とは、感覚と思考の対象と見ることができる。
 十二処に六識を加えて、十八界という。六識とは、眼識・耳識・鼻識・舌識・身識・意識をいう。これらは、感覚と思考の器官によって生じる内容と見ることができる。
 仏教では、六入、十二処、十二界という分析をもとに、認識は器官が対象をとらえる結果として、内容が生じると説く。この関係は、認識の器官、対象、内容という三つの要素で構成される。特徴的なのは、この構造において、認識の主体は問題にされないことである。認識の主体を立てると、何らかの形で自我や霊魂の存在を認めざるを得なくなる。これは、無我説と矛盾してしまう。そこで、認識の主体を立てることなく、認識の器官を所有し、認識の内容を統合するものを明らかにしなければならない。この課題のもとに、認識の主体を立てずに認識を論じるのが、大乗仏教の認識論である。そして、空の思想による無我説に基づいて認識の理論を展開したのが、唯識説である。

◆唯識説の理論
 西洋哲学では、万物の根本を精神的なものとし、物質的なものはその所産であるとする考え方を、唯心論(spiritualism)いう。この反対は、その逆を説く唯物論(materialism)である。(註1)
 近代西洋哲学の主客二項図式に則って言えば、唯心論には、神の心が世界を創造したとする客観的唯心論と、人間の心が世界を生み出しているとする主観的唯心論がある。便宜的にこの分類に従うならば、大乗仏教は、後者の主観的唯心論の一種である。この思想を体系的に説いたものが、唯識説である。
 唯識説は、純粋な精神作用に対象を含む一切のあり方を包括する理論である。この理論を展開した宗派を唯識派という。インド中北部で4世紀初めころ、マイトレーヤ(弥勒)が創始し、アサンガ(無著)、ヴァスバンドウ(世親)が大成した。
 ヴァスバンドウは、生年320年頃、没年400年頃と伝えられる。北インド生まれで、出家してはじめ説一切有部、次に経量部を学んで、『阿毘達磨倶舎論』を著わし、部派仏教の教義を集大成するとともに、大乗仏教を批判した。しかし、兄・アサンガに従って大乗仏教に転じ、アサンガが発展させた唯識説をさらに進めて、『唯識三十頌』『摂大乗論釈』等を著し、唯識説を完成させた。
 唯識派は、その理論がヨーガの実践に支えられるものであることから、瑜伽行唯識派ともいう。同派は中観派と並ぶインド大乗仏教の二大主流になった。また、チベット、シナ、日本等に広く伝わった。シナには玄奘が伝え、法相宗を開き、日本にも伝えられた。


(1) 唯心論の一種に、観念論(idealism)がある。観念論は、西洋文明に特有のイデアを原理とする思想である。イデア論、イデア主義ともいう。ギリシャのプラトンに発し、アリストテレスが体系化し、それを摂取したヨーロッパで、キリスト教の理論に応用され、スコラ神学、バークリー、カント、ヘーゲル等が展開した。インド文明の唯心論は、イデアの概念がなく、イデア論的唯心論とは異なる非イデア論的唯心論である。

 次回に続く。

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