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2020年07月30日09:30

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人種差別問題〜克服すべき米国、利用する中国1

●はじめに

 本年(令和2年、2020年)5月25日、米国ミネソタ州ミネアポリスで黒人男性ジョージ・フロイドが白人警官による暴行で死亡した。この事件以降、米国各地で人種差別に反対する抗議デモが起こり、拡大・激化し、欧州諸国や日本等にも広がっている。
 最も注目すべきことは、デモが過激化しつつ本年11月に行われる大統領選挙に影響を与える勢いとなっていることである。そこには、米国の混迷がよく現れているとともに、背後に人種差別問題を自国に有利に利用しようとする共産中国の策謀がある。
 私は、拙稿「人権――その起源と目標」「トッドの移民論と日本の移民問題」等で、人種差別や民族問題について書いてきた。これらの拙稿は、紙製の拙著『人類を導く日本精神〜新しい文明の飛躍』(星雲社)の付録CDにデータを収録している。本稿は、これらの拙稿に書いたことをもとに、米国の人種差別問題について、その構造、歴史、大統領選挙への影響、米中対立との関係について述べるものである。20回ほどの予定である。

●白人警官による黒人殺害事件

 本年5月25日、ミネアポリス白人警官黒人殺害事件において、黒人ジョージ・フロイドは、偽の20ドル札を使用した疑いで、白人警官デレク・ショーヴァンに取りさえられた。ショーヴァンはフロイドの首を膝で押さえつけて窒息死させた。フロイドには前科があった。覚せい剤所持で何度も逮捕されたり、女性を武装強盗した犯罪を起こしたこともあった。この点は、マスメディアが、ほとんど報道していない。
 白人警官が用いたのは、チョーク・ホールドという拘束技で、ショーヴァンそれを8分間以上続けた。フロイドは、この間、「息が出来ない」と言ったり、「死にそうだ」と語った。これだけ長時間、首を押さえつければ生命にかかわることは、警察官なら当然わかることである。ショーヴァンは、翌日解雇され、第2級殺人罪となる重過失致死罪で起訴された。現場にいた同僚3人も制止を怠ったとして後に解雇、起訴された。うち2人は殺人の幇助・教唆の罪で起訴された。1人は黒人、1人はラオス生まれのアジア系だった。残る1人は新人だったので、不起訴になった。
 米国では、白人による黒人への人種差別が今も根強い。白人の警官が黒人に過度の制裁を加えたり、安易に銃撃して死亡させることが多く、社会的な問題になっている。だが、事件が起こったミネアポリス市は、以前からそうした問題が多い場所ではなかった。ミネアポリス市は、市長が民主党で、13人の市会議員中12人が民主党、残り1人が緑の党だというから、民主党系のリベラルが市政を支配している。また、同市のあるミネソタ州は、州知事が民主党で、地域選出の連邦下院議員は、民主党最左派で女性イスラーム教徒のイルハン・オマールである。それゆえ、この地域はリベラル勢力が強く、米国の中では人種差別が比較的少ない地域と考えられる。そのような地域において、警察だけが黒人への人種差別意識で固まっているとは考えにくい。白人警官黒人殺害事件は、特定の警官が職務規範を大きく逸脱した事例と見るべきだろう。日本の警察官は職務に忠実であることで知られるが、多数の警官の中には犯罪を侵す者もいる。一人そういう者がいるからといって、皆がそうだと考えるのは誤りである。
 もう一つ考えるべきは、この事件は、世界コロナ危機で起こったことである。米国では、事件発生の時点で武漢ウイルスに10万人以上が感染し、2万人以上が死亡し、また経済活動の縮小したことで失業者が急増していた。武漢ウイルスよる死亡者の比率は、黒人が白人の2倍超となっていた。黒人の失業率は16%とこれも白人より2倍ほど高かった。白人警官による黒人殺害事件は、そうした社会状況で起こった。そのため、事件をきっかけにした人種差別への抗議運動は、コロナ危機での社会的不満の噴出と重なり合って、急激に拡大した。
 事件後、ドナルド・トランプ大統領は、5月27日フロイドの家族に弔意を示すツイートを投稿した。人種差別に反対する人々の怒りは収まらず、パンデミックによる社会不安や生活苦の訴え等が重なり、事件への抗議活動は5月27日から、全米に拡大した。28日には抗議デモの一部が暴徒化し、暴動が各地に広がり、店舗からの略奪、パトカーへの放火等が相次いだ。
 6月1日、ジョージ・フロイドの弟テレンス・フロイドは、 兄が死亡した場所を訪れ、「暴力的な方法ではなく平和的な解決をしよう」と訴えた。破壊行為を続ける人々に「あなたたちがやっていることは何にもならない。そんなことをしたって、兄は戻ってこない」と語り、政治参加で社会を変えることを呼びかけた。だが、一部では暴徒による破壊活動が続いている。
 抗議デモは中南米出身のヒスパニック(ラティーノ)ら低所得層にも広がっている。人種差別に経済格差がもたらした社会分断が重なって、収束が困難な事態となっている。
 人種差別は、当然許されない。米国やそのほかの国々で、人種差別反対の抗議活動が高まるのは、当然である。また、人種の違いを基礎とした経済格差は、是正されなくてはならない。だが、今回の抗議活動には、背後からそれを政治的な目的に利用しようとする勢力がある。社会の是正ではなく、秩序を撹乱し、体制を転覆させようとする動きである。一つは、中国共産党による工作である。もう一つは、黒人等の権利拡大運動と結びついた極左団体の活動である。それらにも目を向ける必要がある。

 次回に続く。

************* 著書のご案内 ****************

 『人類を導く日本精神〜新しい文明への飛躍』(星雲社)
https://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/cc682724c63c58d608c99ea4ddca44e0
 『超宗教の時代の宗教概論』(星雲社)
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