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2020年07月24日10:10

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ウイルス7〜生命力と調和の精神の発揮を

 最終回。

●生命力と調和の精神の発揮を

 20世紀以降の世界では、新たな感染症が次々に現れ、世界的に流行して、多くの被害を出している。この原因として、先に人口爆発・グローバル化・森林伐採の影響を挙げた。今後も、世界の人口が増え、大都市が発達し、人やものの移動が加速し、また地球に残された森林の伐採が続けられるならば、新たな感染症が出現し、パンデミックが起こるだろう。とりわけ森林の伐採によって、野生動物等に寄生していた未知のウイルスが人間に感染することは避けがたい。野生の哺乳類には少なくとも32万種類の未知のウイルスが潜んでいると推定されている。そうしたウイルスが国境や人種、大陸や大洋を超えて世界的に広がる可能性は高い。コロナウイルスの新型が今後も出現することも想定される。
 武漢ウイルスの感染が拡大するなか、「これはウイルスとの戦いだ」「ウイルスとの戦争だ」という表現が多用されている。生死・興亡を賭けた取り組みである点では、その通りである。だが、ウイルスは、独自の意思を持って人類を攻撃しているのではない。自らが生存・繁殖するための活動をしているにすぎない。
 人類は、地球に発生以来、多くの細菌やウイルスに感染してきた。天然痘、はしか、マラリア、結核、腸チフス、ハンセン病、コレラ、ペスト等々。だが、人類はそれでも滅亡せず、逆に繁栄してきた。国連の将来人口予測(2013年)によると、世界人口は2050年に96億人を超える。人類のゲノム(全遺伝子情報)のなかには、ウイルスの遺伝子がかなりの割合で取り込まれている。ウイルスに由来し、人類の生存に必須の役割を果たしている遺伝子もある。その点を考えると、ウイルスは人間の外敵であるとともに、人間が生きる上で、うまく付き合っていかなければならないものでもある。敵視して殲滅しようとしても、殲滅することは出来ない。科学技術を用いて、ウイルスを力でねじ伏せようとするだけでは、問題は解決しない。自分の生命力を発揮し、健康の維持に努めながら、共存していくしかない。
 そのためには、まず自らに内在する生命力の偉大さに目覚め、生命力を十分発揮できるような生き方に努めることが必要である。医学のあり方も、この点に根本を置かねばならない。衛生技術やワクチン・薬剤・医療機械等は有用だが、あくまで生命力の働きを補助するものにすぎない。人々は、近代西洋医学の医療への過度な依存を脱し、健康を増進する生き方に転換しなければならない。当たり前のことだが、十分な睡眠、バランスの取れた栄養の摂取、適度な運動が求められる。また、ストレスの軽減や解消、化学物質による汚染の除去等も必要である。また、気力や意志も重要な役割をする。
 次にウイルスとの共存のためには、人と自然が調和し、また人と人が調和して生きると生き方が求められる。
 まず人と自然が調和して生きるという考え方が必要である。近代西洋文明では、自然を唯一神によって創造されたものとし、これを物質的・機械的なものととらえ、自然を支配するという思想が生まれた。だが、この思想は地球環境を破壊することになり、文明の土台を危うくしている。そして、自然の改造の一環としての森林の乱伐は野生動物に寄生するウイルスが人間に感染するという問題を生み出している。
 欧米人と異なり、日本人は、自然は自ずから生成するものであり、人間もその一部とみなしてきた。人間と自然を連続するものととらえ、自然との調和を図って生きるようとする思想である。もちろん水田を作るにしても、川の水を引くにしても、木材を利用するにしても、自然を変えることになる。だが、その際に、自然環境を出来るだけ壊さないように配慮し、様々な知恵を蓄積してきた。
 こうした日本的な考え方に立てば、ウイルスへの対応の仕方は、ウイルスを敵視し、これと戦うという姿勢ではなく、どうやってウイルスと共存するかという生き方を追求する姿勢が大切になる。
 また、人と自然の調和に加えて、人と人が調和して生きるという考え方が必要である。近代西洋文明は、自由の拡大と富の増大を追求しつつ、国家・民族・集団の対立・抗争を世界に広めた。近代西洋文明が支配的な現在の世界において、武漢ウイルスの感染拡大への各国の対応は、国家間の相互不信と分裂を加速し、経済の混乱や社会不安を招いた。また、パンデミックの中で、人間の心に根深く存在する利己主義が表面化した。だが、感染症の広がりによって、国家間・民族間・集団間の対立・抗争が激化して共倒れにならないように、人と人が調和して生きるという考え方が広まらなければならない。
 日本人は、人と自然が調和して生きるとともに、こうした人と人が調和して生きる生き方を大切してきた。それが日本精神となって表れている。日本人は自らの伝統的な精神を発揮して、人類とウイルスの共存に貢献したいものである。また、その貢献は、結果として日本人自身の生存と繁栄をもたらすことにもなる。自利的な行為と利他的な行為は相反するものではなく、自利的かつ利他的な行為が可能であり、それが共存共栄の道、大調和の道だからである。
 日本人が伝統的な精神を発揮して、人と人、人と自然が調和して生きる道をまず日本人自身が実践し、それを世界に広めていこうとする場合、人類の多くがその意義を理解し、自ら取り入れるかどうかという課題が生じる。
 私は、紙製の拙著『人類を導く日本精神〜新しい文明への飛躍』に次のように書いた。「人類は今日、かつてない危機に直面している。最大の危機は、核兵器による世界戦争であり、また地球環境の破壊である。われわれは、自滅したくなければ、自ら飛躍しなければならないという瀬戸際に立っている。世界平和の実現、及び文明と環境の調和のために、人類は精神的な進化に迫られている」と。こうした瀬戸際に立っている人類を新たな感染症が襲った。感染症による危機は、核兵器による世界戦争と地球環境の破壊に比べれば、これらほど決定的ではない。だが、この危機において求められているものが、人類の精神的な進化であることは、共通している。人類が精神的な進化の道を進むときにこそ、本稿に書いた生命力と調和の精神の発揮が大きな働きをすることになるだろう。この生存と飛躍のために必要な人類の精神的な進化については、紙製の拙著をご参照願いたい。(了)

************* 著書のご案内 ****************

 『人類を導く日本精神〜新しい文明への飛躍』(星雲社)
https://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/cc682724c63c58d608c99ea4ddca44e0
 『超宗教の時代の宗教概論』(星雲社)
https://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/d4dac1aadbac9b22a290a449a4adb3a1

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